2  0  1  4  年     2  月  

《 1日 》    雁坂嶺

    川又 〜 突出峠 〜 地蔵岩 〜 雁坂嶺山頂直下  (往復)

   4年前に雁坂峠から川又へ至る秩父往還(昔の峠道)を初めて通った時に、雁坂峠から雁坂嶺の山腹を延々とトラバースする道がとても長く感じられ、奥秩父の主脈の山々にアプローチする登山道としては利用価値がないと思った。 あらためて地形図を見ると、雁坂嶺の山頂から北東方向に緩やかな尾根がこの峠道に向かって伸びていることが分かり、藪の埋まる積雪期であればこの尾根(“ダイレクト尾根”と命名)を辿って雁坂峠を経ずに直接雁坂嶺に登れるのではないかと思った。 

   道の駅『大滝温泉』に前泊し、翌朝川又の登山口付近の駐車スペースに車を停めて5時に出発。 雁坂嶺へは国道を2キロほど先に進んだ黒文字橋の登山口から登った方が近いが、暗い時間帯ではそのルートは分かりにくいため、川又からのクラシックルートを登ることにした。 登山口で高度計の標高を750mにセットして植林の急坂を登る。 いつの間にか川又の集落からの道(廃道となっているかもしれない)と合流し、登り一辺倒でぐんぐん高度を稼いでいく。 1200m付近から氷化した雪が登山道を覆うようになり、6本爪のアイゼンを着ける。 古いトレースの跡があった。 予報どおり風は無く気温も高い。 峠道らしい緩やかな勾配となり、黒文字橋の登山口からのルートと合流する雁道場(1298m)に7時前に着く。 

   雁道場からは木々の間も少し広くなり、左手には和名倉山が、右手には白泰山が見えるようになった。 積雪は徐々に増したが、古いトレースのお蔭でコースタイムどおり歩ける。 間もなく和名倉山の山頂からのご来光となり、周囲の木々が淡く染まり始める。 川又と雁坂小屋の中間点となる突出峠(1489m)への登りではやや勾配が増したが、それでも急坂というほどではない。 道標が無ければ通り過ぎてしまうような何の特徴もない突出峠には8時前に着いた。 突出峠を過ぎると再び勾配が緩んできたが、古いトレースが新雪で埋まるようになってきたので、樺避難小屋の手前からスノーシューを履く。

   樺避難小屋から先ではトレースが無くなったが、新雪で消えてしまったのか、元々無かったのかは分からない。 峠道の道型は明瞭なので、ルーファンの必要は殆どないが、気温が高いことが災いして雪が重い。 スノーシューが下駄を履いたり、所々で膝下のラッセルとなることもあった。 『だるま坂』と名付けられた急坂を登ると間もなく、今日最初の目標とした地蔵岩(2020m)との分岐に着いた。 長い峠道で唯一展望に恵まれる地蔵岩へは分岐から5分ほどで登れるが、今日はラッセルが大変で往復30分も掛かってしまった。 雪に覆われた地蔵岩からは甲武信岳などの山々が一望出来たが、今日の目的は雁坂嶺の“ダイレクト尾根”の観察だ。 ダイレクト尾根は地形図どおり緩やかだったが、尾根の末端の小ピークを越えるのは無理そうだった。 

   登山道との分岐に戻り、小ピークを右から巻いて尾根に取り付ける地点を観察しながら進むが、斜面の勾配が急な所ばかりでなかなか取り付くことが出来ない。 最短距離で小ピークを巻いて登ってみたものの、木々が密集しているのみならず倒木が多くてお手上げだった。 仕方なく登山道に戻って先に進んだが、登山道は小ピークを左から大きく巻いてしまい、ダイレクト尾根からはどんどん離れてしまった。 その先は小さなアップダウンが連続する退屈な巻道になってしまい、間もなく樹間から雁坂小屋が見えるようになった。 

   すでに正午を過ぎ、この先で取り付きを探し当てても山頂へは時間切れで登れないことが予見されたが、退屈な巻道を延々と雁坂小屋に向かうのも嫌になる。 目標を失いつつトラバースを続けていくと、峠道が大きく屈曲する豆焼沢の手前で木々の間が少し広くなったため、ラストチャンスで取り付いてみることにした。 積雪の少なそうな所を選びながら、緩やかにジグザグを切りながら登っていくと左手に凹んだ無木立の細い涸れ沢が見えてきた。 涸れ沢に降りてみると、意外にも雪は締まっていて登り易く、雪崩の心配も皆無だったので、直登気味に登ってみることにした。 登山道から離れて100mほど登ると沢の源頭となり、その先は再び樹林帯となっていたが、頭上の木々の先からは希望の光が漏れていた。 あと50mほど登ればダイレクト尾根に乗れる可能性が出てきたので、渾身の力を振り絞ってラッセルを続ける。 傾斜が無くなり広く平らな尾根に出た。 高度計の数字から、そこがダイレクト尾根の中間点の2113m地点だと確信した。 山頂方面には幅の広い緩やかな尾根が続いており、このまま上を目指して登っていけば、ルーファンしなくても雁坂嶺の山頂に辿り着けそうな感じがした。 山頂までの標高差は150mほどなので、あと1時間半もあれば山頂に届くだろうが、すでに1時半になっていたので深追いはしないことにした。 山頂に辿り着けなかった悔しさよりも、ダイレクト尾根に乗れた嬉しさの方が勝っていた。 

   日溜りとなっていた尾根で疲れた足を休め、足取りも軽く往路を戻る。 途中の雁道場で4時半を過ぎてしまったので、分岐から黒文字橋の登山口に下り、車道を20分ほど歩いて日没と同時の5時半過ぎに車に戻った。


雁坂嶺付近の地形図(青い点が地蔵岩・赤い点が尾根の末端の小ピーク・緑の線が辿った沢ルート)


川又の登山口


登山口に設置されていた秩父往還の歴史を記した看板


植林の急坂を登る


ポイント毎にある看板は全て新しく書き換えられていた


1200m付近から雪が登山道を覆うようになった


『雁道場』の由来を記した看板


雁道場からは積雪は徐々に増したが、古いトレースのお蔭でコースタイムどおり歩けた


雁道場から突出峠へ


川又と雁坂小屋の中間点となる突出峠


樺避難小屋の手前からスノーシューを履く


ログハウス調の樺避難小屋


樺避難小屋の内部


樺避難小屋から先にはトレースが無かった


所々で膝下のラッセルとなる


『だるま坂』の看板


地蔵岩から見た破風山(左)・木賊山(中央)甲武信岳(中央右奥)


地蔵岩から見た雁坂嶺とダイレクト尾根(左)


地蔵岩から登山道との分岐に戻る


小ピークを右から巻いて尾根に取り付く


登山道から見た和名倉山


小さなアップダウンが連続する退屈な巻道


涸れ沢を直登気味に登る


涸れ沢の源頭


ダイレクト尾根の中間点の2113m地点


山頂の方向には幅の広い緩やかな尾根が続いていた


涸れ沢を下る


登山道に下り往路を戻る


2 0 1 4 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P