《 13日 》 黒金山
乾徳山登山口 〜 大ダオ 〜 黒金山 〜 笠森山 〜 水ノタル 〜 国師ケ原 〜 乾徳山登山口 (周回)
徳和の集落から乾徳山を経て黒金山に登ることを昨年の2月の3連休に計画したが、天気が悪くて乾徳山を登るだけに留まった。 今回はそのリベンジとして、大ダオを経て黒金山に登り、乾徳山方面に周回することにした。 但し、数日前に降雪があり、このルートではトレースは期待出来ないので、正午までに黒金山に着かなければ、潔く周回は諦め往路を戻ることにした。
登山口付近の道の駅『花かげの郷まきおか』に前泊し、登山口の徳和(乾徳山登山口)の駐車場を4時半過ぎに出発。 駐車場には車が2台停まっていた。 所々に雪が薄らと残る大ダオ方面への林道を進むと、15分ほどで乾徳山への取り付きに着く。 やや勾配のある林道をさらに20分ほど進むと、通行止めのゲートがあった。 ゲートから先の林道の雪の上に、昨日か一昨日の新しい単独者の靴跡が見られたが、この靴跡が今日の行程を左右することになるとは知る由もなかった。 予定よりも少し早く、6時半前に堰堤が連続する林道の終点に着いた。 徳和(乾徳山登山口)の駐車場からの標高差は450mほどだった。 右から最後の堰堤を高巻きし、沢床に下り立つ。 ここで朝食を食べ、周囲が明るくなるのを待つ。 沢の中は冷気が溜まっていて寒い。
林道の途中まであった大ダオ方面への道標は無くなり、木々に付けられた古いテープに替わる(最後まで新しいテープは無かった)。 水量の少ない沢を何度も左右に渡り返しながら遡っていくが、河原の岩を埋めるほど積雪は多くないので時間が掛かる。 ありがたいことに単独者のトレースは続いていたので、ルーファンは殆どせずに済んだ。 1時間半ほどでようやく沢から離れ、樹林帯の登りとなる。 積雪は次第に増し、30センチほどになったので、スノーシューを履く。 トレースの主はツボ足のまま(最後までツボ足)だったので、この山域を良く知った地元の方か、若くて馬力のある方だと思えた。 8時半前に薄暗い樹林帯にもようやく陽が当たり始め、乾徳山が樹間から見えるようになった。 クラシックルートらしく登山道の勾配は緩やかで、所々に往時を偲ばせる古い案内板が見られた。 トレースのおかげで予定よりも早く明るく開けた大ダオの直下に着いた。 たおやかな笹原の峠は地形上風の通り道になっているようで雪煙が舞っていた。 風の強い稜線上では休めないので、ここで一息入れる。 ダウンジャケットを着込み、峠の道標に向かって無木立の雪面を直登気味に進む。 風により単独者のトレースは消えていた。 今回の最終目標は黒金山だが、この大ダオの優美な景観はそれを抜きに語れない。
10時前に待望の大ダオ(1970m)に着いた。 峠の向こう側には国師ケ岳が大きく望まれた。 もちろん、南側には逆光ながら富士山の眺めが良い。 目指す黒金山も指呼の間に見えるが、風が強いので写真だけ撮って早々にシュカブラの発達した峠を後にする。 稜線の樹林帯に入ってから間もなく再び先ほどのトレースが現れ、トレースの主が黒金山方面に向かったことが分かった。 奥秩父の山らしく樹間は狭いが、風の強い今日は助かる。 道標も所々で見られるようになり、トレースもあるので、制限時間とした正午までに黒金山に着くことを確信したが、気温と体感気温は共に低くて寒い。 一度脱いだダウンジャケットを再び着込んだ。 途中一か所だけ南面の木々が無い日溜りのような場所があったが、それ以外は鬱蒼とした寒々しい樹林帯の中を進む。 稜線は終始緩やかな登り基調で苦も無く登れるのがありがたい。 木々の間隔が少し広くなり、大ダオから1時間少々で黒金山直下の乾徳山との分岐に着いた。 乾徳山方面を偵察し、同じトレースがあることを確認してから黒金山の山頂に向かう。 トレースに従って急斜面を強引に直登し、11時半に黒金山(2231m)の山頂に着いた。 10年前の秋に西沢渓谷から登って以来の山頂の記憶は不思議と全く無かった。 北側の斜面には山火事の跡のように木々がなく、南アルプスの銀嶺と雁坂嶺から破風、甲武信、国師に至る奥秩父の主脈の山々が一望出来た。 展望の良い山頂の北側は爆風が吹いていたので、山頂手前の日溜りで疲れた足を労わりながらゆっくりと寛ぐ。
当初の予定どおり正午ちょうどに山頂を発ち、乾徳山方面に向かう。 トレースはやや明瞭になり、単独者の前にも古いトレースがあったように思えた。 展望の無い地味な笠盛山(2072m)を経て乾徳山の山頂直下の水ノタルまでは、ほぼコースタイムどおりの1時間半で歩けた。 強い風が相変わらず収まらないので、乾徳山の山頂には登らず国師ケ原方面への巻き道を下る。 3連休の踏み固められたトレースは辿らず、無垢の深雪の急斜面をスノーシューで切り崩しながらぐんぐん下る。 雪が少なくなった所でスノーシューを外し、6本爪のアイゼンを着ける。 ようやく風が当たらなくなった。 3時ちょうどに乾徳山を仰ぎ見る国師ケ原に着く。 3連休の午後なので、人気の乾徳山もすでに誰もいない。 来週の山の計画を思い巡らせながら登山口への林道に下り、まだ明るい4時半前に駐車場に戻った。