《 29日 〜 30日 》 八紘嶺 ・ 大谷嶺 ・ 山伏
梅ケ島温泉 〜 八紘嶺 〜 大谷嶺 〜 山伏手前(テント泊) 〜 山伏 〜 猪ノ段 〜 山伏 〜 西日影沢登山口 〜 黄金の湯 (縦走)
今年最後の山行は、ここ数年足繁く訪れている安倍奥の山となった。 最初の計画の段階では白峰南嶺の最南端の山伏(2014m)から小河内山(2076m)へ登ることを考えていたが、3連休前後に降った降雪量の多さを考えて、今回はまだ未踏破の八紘嶺(1918m)から大谷嶺(2000m)への縦走を柱にすることにした。 日帰りか泊りかで悩んだ結果、梅ケ島温泉を起点に八紘嶺・大谷嶺・山伏を経て山伏小屋に泊まり、翌日は猪ノ段・笹山を経て井川峠まで縦走し、孫佐島に下山することにした。
梅ケ島街道の途中の『真富士の里』の駐車場に前泊し、翌朝下山口の孫佐島のバス停裏に自転車をデポして登山口の梅ケ島温泉に向かう。 周囲が明るくなった6時半過ぎに梅ケ島温泉を出発。 気温はマイナス7度だったが、意外にも登山口には雪は全く無かった。 ここ数年続けて歩いている八紘嶺への登山道を登る。 間もなく登山道に雪が現れたが、3連休前のものではなく、数日前に降った新雪だった。 八紘嶺までだろうか、単独者が往復した新しいトレースがあった。 車道と交差する無雪期の八紘嶺登山口を過ぎると、ようやく暖かな陽射しに恵まれるようになり、富士山や安倍奥の山々が見え始めた。 今日までは強い冬型の気圧配置という予報だが、今のところ快晴無風の天気でありがたい。 安倍峠からの登山道と合わさる富士見台を過ぎると積雪は次第に増し、3連休前の残雪と数日前に降った新雪のミックスとなった。 七面山や毛無山が見える展望岩のところで単独者のトレースは終わっていた。 展望岩からは積雪がさらに増し、新雪の下に3連休のトレースの名残が見られるようになった。 相変らず風もなく絶好の登山日和で気持ち良い。 樹間からこれから辿る大谷嶺や山伏が見えた。 八紘嶺の山頂手前のニセピーク(八紘嶺の頭)を過ぎると積雪はさらに増し、コースタイムどおりに登れなくなってきた。 山頂直下には南側の展望が利く場所があり、これから辿る稜線や安倍奥の山々が一望出来た。
10時半過ぎに八紘嶺(1918m)の山頂に着く。 3連休前の降雪が多かったため、予想どおり稜線にもトレースは無かった。 雑木の樹間から笊ケ岳や南アルプスの銀嶺が望まれるが、この山からの展望は残念ながらあまり良くない。 気温はさすがに低いが、運が良いことに稜線上も無風だった。 稜線の積雪は多いが、次の五色の頭(1859m)とのコルまでは尾根が痩せ、岩場などもあるようなので、スノーシューは履かず進む。 稜線上の登山道の道型は明瞭で迷うような所は無いが、膝下のラッセルで後続の妻のペースが予想以上に捗らなくなってしまい、5分も歩くと姿が見えなくなってしまう。 これは誤算というよりも、妻のラッセル能力を把握してなかった私の計画ミスだ。 尾根の幅が広くなってきた五色の頭の手前から私のみスノーシューを履いて登る。 八紘嶺の山頂からコースタイムの5割増しくらいの時間を要して五色の頭に着くと、意外にも反対側から3連休のトレースの名残が見られた。 大谷嶺方面から縦走してきたパーティーがここで引き返したことが分かったが、翌日自分達も同じような憂き目に遭うとは知る由も無かった。 トレースの名残は所々で消えるものの、ルーファンも含めて大谷嶺までの縦走はそれまでよりもだいぶ楽になった。 それでも妻のペースは上がることはなく、予定よりも少し遅い1時過ぎに大谷嶺(2000m)の山頂に着いた。
10数年ぶりに訪れた大谷嶺の広い山頂は展望が利くが、あいにく午後の南アルプスの銀嶺には雲が取り付いていた。 山頂には足下の登山口の扇の要方面からの日帰りの登山者が二人いた(この日の大谷嶺の登山者もこの二人のみ)。 扇の要から稜線に上がったコル(新窪乗越)から山伏方面へはトレースが無かったという情報を得た。 この時点で山伏小屋へ明るいうちに到着するのは難しいように思えた。 下山する二人に続いて2時前に山頂を後にする。 山頂から新窪乗越へもアップダウンがあったが、新しいトレースに助けられ、ほぼコースタイムどおりに新窪乗越に着いた。 新窪乗越は平らで絶好の幕場となっていたが、まだ時間も早く、もしかしたら明るいうちに山伏小屋まで着けるかもしれないという淡い期待があったので、休まずに先に進むことにした。 乗越から先には情報どおりトレースは無かったが、急斜面をひと登りすると、先ほどと同じような3連休のトレースの名残が出てきた。 大平沢の頭を過ぎると間もなく、登山道脇の窪地にテントを設営している単独者と出会った。 西日影沢の登山口から山伏を経てきたが、山伏の山頂からここまでラッセルが大変だったとのことだった。 単独者の新しいトレースのおかげでルーファンは不要になったが、相変わらず妻のペースがあがらず、疲れもみえてきたので、幕場に相応しい場所を探し当てながら進む。 運良く標高1900mほどの疎林の中に平らな笹原があり、ここを幕場とすることにした。
計画ミスで目的地の山伏小屋まで辿り着けなかったが、ここはテントを張るには誠に都合が良く、行動中とは逆に新雪の恩恵を受けることになった。 スノーシューで僅か数分雪面を圧雪するだけで綺麗に整地ができ、スコップの出番もなかった。 水作りも新雪のお蔭でゴミの無い良い水が作れた。
図らずも幕場は地形的に風の通り道から外れていたので、朝まで全くの無風だった。 夜中の外気温は二桁のマイナスだろうが、テント内は水も凍らなかった。 逆にこれが災いして熟睡してしまい、5時半過ぎに目が覚めたので、出発は7時前になってしまった。 すぐに樹間からのご来光となり、寒さはあまり感じられなかった。 幕場から1時間ほど緩やかに登り下りし、8時ちょうどに誰もいない山伏の山頂に着いた。 あいにく富士山は逆光だが、南アルプス南部の山々が前山越しに白い顔を揃えていた。 時間に余裕はないが、展望の良い山頂に釘付けになってしまう。
西日影沢登山口からの踏み固められたトレースを5分ほど下り、山伏小屋への分岐から笹山方面への縦走を続ける。 山伏小屋までは3連休のトレースの名残があったが、予想どおり小屋から先にはトレースがなかった。 山伏小屋への分岐から百畳平へ下ると立派な道標があったが、登山地図では実線となっている笹山方面への登山道は閉鎖しているようだった。 展望の良い百畳平付近からは今回行かなかった小河内山が良く見えた。 雪原となっている百畳平では、笹山方面への縦走路を見つけるのに時間がかかってしまったので、縦走するのを諦めて次回の下見を兼ねて途中の猪の段付近まで往復することにした。
百畳平から数少ないテープ類を探し当てながら1時間ほど広い尾根をラッセルし、笹山方面からのリベンジを誓って猪の段付近にあった三角点の標識を最終到達点とした。 スノーシューを妻に譲り、往路を山伏へと引き返す。 1時前に二度目の山伏の山頂に着く。 山頂付近には西日影沢登山口からの日帰りの登山者が思い思いに寛いでいた。 西日影沢登山口から1時間ほど車道を歩いた新田のバス停から梅ケ島温泉へのバスの発車が5時前なので、これに合わせたペースで下る。 西日影沢登山口への下りは、雪も少なくコースタイムどおりに下れた。 新田のバス停には4時半に着いたため、一つ先の黄金の湯のバス停までさらに歩いた。 少し遅れてきた最終バスに乗り、5時半前に梅ケ島温泉に着いた。