《 21日 〜 23日 》 畚山 ・ 嶮岨森 ・ 大深岳 ・ 曲崎山 ・ 大白森 ・ 乳頭山 ・ 三ツ石山
八幡平 〜 諸桧岳 〜 嶮岨森 〜 大深岳 〜 八瀬森山荘(泊) 〜 曲崎山 〜 大白森 〜 乳頭山 〜 滝ノ上園地休憩舎(泊) 〜 三ツ石山 〜 大深岳 〜 畚山 〜 八幡平 (周回/往復)
先週の3連休は台風の影響で天気が悪く、直後の3連休は甲信越の山はどこへ行っても混雑することが必至だったので、紅葉狩りには少し早いが東北方面の山に行くことにした。 前日までの天気予報も東北方面が一番良かったが、結果的には天気予報は大きく変わり、初日が曇りから雨、2日目と3日目は晴れて、初日の天気が一番良かった甲信越とは逆の天気となった。 三連休の喧噪を避けるため、3年前の10月に雫石町の滝ノ上温泉を起点に、三ツ石山〜八瀬森山荘(泊)〜曲崎山〜大白森〜乳頭山〜滝ノ上温泉と1泊で周回したルートを2泊で行くようアレンジした結果、八幡平を起点にして大深岳まで裏岩手の縦走路を往復するルートをこれに加えることにした。
東北道の北上金ケ崎PAに前泊し、翌朝松尾八幡平ICから登山口の八幡平に向かう。 朝の天気予報は昨夜の予報とは大きく変わり、曇りで降水確率が30%と告げていた。 青森では午前中雨の所もあるという。 高速道路からは岩手山が大きく望まれたが、八幡平アスピーテラインを登っていくうちに霧はどんどん濃くなり、風も強まってきた。 見返峠下の駐車スペースで30分ほど天気の様子を窺い、予定どおりのルートで行くか否かの判断を迫られたが、昼過ぎには天気が回復するという予報を信じて、8時半に裏岩手連峰登山口を出発する。 付近の駐車場には地元ナンバーの車が数台停まっていたが、天気が悪いせいか人影はない。 13年ぶりに歩く八幡平からの縦走路の記憶は薄い。 幸い霧は体を濡らすようなことはなく、背の高い笹や這い松が強い風を遮ってくれたので助かった。 縦走路から少し外れた最初のピークの畚山(1578m)は天気が悪いので帰路に登ることにして先に進む。 登山口からしばらく緩やかな登り下りが続く。 南に向かうほど霧が薄くなってきたので安堵する。 登山口からちょうど1時間で諸桧岳(1516m)の山頂に着いたが、あいにくの天気で展望は全く得られない。 諸桧岳を過ぎると所々に小さな池や湿原が見られた。 次のピークの前諸桧(1481m)からは縦走路の起伏にもメリハリが出てきた。 縦走路から尖った嶮岨森(1448m)のピークが見え、天気の回復に期待が持てた。 11時に展望の良い嶮岨森の山頂に着く。 あいにくの曇天で周囲の山々はすっきり望めないが、山頂付近には僅かばかりの紅葉が見られた。 嶮岨森からは縦走路に紅葉する木々が増えてきた。 予定よりも少し早く、登山口から3時間ほどで中間点の大深山荘に着く。 大深山荘は以前泊まった小さな小屋を改築し、中にトイレが二つもある立派な小屋になっていた。 室内はすでに松川温泉から登ってきた地元の団体パーティーで賑わっていた。 小屋の前のベンチで昼食を食べ、小屋から往復5分ほどの湿原の入口にある水場で給水する。 正午に大深山荘を発ち、30分ほど縦走路を登って大深岳に着く。 予報に反して再び霧が濃くなり、周囲の展望は得られなかった。 大深岳を越えて裏岩手の縦走路から八瀬森方面へのルートに入ると、震災の影響によるものかどうかは定かでないが、背丈ほどの深い笹薮は全く刈り払いがされていなかった。 3年前は防火帯のように笹が綺麗に刈り払われていたので全く問題なかったが、想定外の笹藪漕ぎが延々と続き、まるで廃道になってしまったかのようだった。 時折湿原や灌木帯になると、藪漕ぎから解放されてほっとする。 こんなところで雨に降られたら嫌だなと妻と話をしていると、予報に反して小雨が降り始めた。 雨足は次第に強くなり、こともあろうに本降りとなった。 運良く笹薮から樹林帯に入ったので、木の下で傘をさして30分ほど雨宿りをする。 雨が上がるのを待って鬱蒼とした樹林帯を進む。 結局太陽を一度も見ることなく、全身ずぶ濡れで4時過ぎに八瀬森山荘に着いた。 八瀬森分岐から八瀬森山荘までの間は誰とも出会わず、山荘にはここに泊まることが目的という方が3人いただけで、3年前に比べて宿泊者も少なかった。 山荘は30人ほど泊まれる広さがあり、珍しくトイレが二階にある。 古い布団や毛布が沢山あり、山荘直下の水場も涸れることはない。 一休みする間もなく濡れた衣類を干して乾かす。 先客の3人は6時には寝てしまった。 予想どおり山荘にはネズミがいるようで、夜中にカサカサと足音がしていた。
夜中に再び激しい雨が降り、明日の天気が心配だったが、未明には月が見えたので予定どおり滝ノ上温泉を目指して4時半前に出発する。 所々で背丈ほどの深い笹薮となり、昨夜せっかく乾かした衣類はまたすぐにびっしょり濡れてしまった。 今日の最初のピークとなる曲崎山(1333m)付近で朝焼けやご来光を拝む予定だったが、山頂付近は深い霧に包まれ、昨日からの悪天候をまだ引きずっているような感じだった。 八瀬森山荘から曲崎山へはコースタイムを大幅にオーバーし、2時間以上掛かってしまった。 曲崎山から大沢森(1178m)へは下り基調となったが、笹薮の密集度が高いばかりか足元が滑り易く難儀する。 大沢森に着くとようやく天気が回復し、頭上には青空が見えるようになった。 大沢森からしばらくはまだ深い笹薮が続いたが、所々で気持ちの良いブナ林となり一息つく。 大沢森と大白森の鞍部にある玉川ダム方面との分岐では標高が1000mを切った。 分岐から先でようやく笹薮がなくなり、8時半に水場のある大白森避難小屋に着いた。 二階建てのこぢんまりした小屋は、一階部分がストーブのある休憩所となっているため、5人ほどしか泊まれない小さな小屋だ。 誰もいない小屋の二階に上がり、濡れた衣類を乾かしながら1時間近く休憩する。 避難小屋から粘土質の滑り易い急坂を30分ほど登ると、不意に目の前が明るく開け、大白森(1215m)の広い頂上湿原の一角に飛び出した。 今朝までの悪天候が嘘のように爽やかな空気に包まれた広い湿原は、開放感も手伝ってとても気持ちが良い。 まだ山々には雲が残っているものの360度の大展望で、岩手山・秋田駒・乳頭山・大深岳・三ツ石山・曲崎山・畚山、そして意外と近くに森吉山も望まれた。 先ほど避難小屋で大休止したばかりだが、久々の強い陽射しが嬉しく、木道上で靴を脱いで30分ほど乾かす。 いつまでも佇んでいたい気持ちの良い湿原だが、まだ先が長いので重い腰を上げて10時半に山頂を発つ。 八瀬森から大白森までは誰とも出会うことはなかったが、大白森を過ぎると鶴の湯温泉からの日帰りの登山者と度々すれ違うようになった。 小さな湿原があるだけの小白森山(1144m)は写真を撮っただけで通過する。 足元には再びリンドウが多く見られるようになった。 小白森を下り、鶴の湯温泉への分岐を過ぎると、再び縦走路から人影がなくなった。 田代平までは小さなアップダウンの繰り返しで意外と骨が折れる。 標高が再び1000m以下になることもあった。 まだ紅葉していないブナ林の樹間から時折辿ってきた曲崎山や大白森が見えた。 乳頭温泉への分岐を過ぎると間もなく急登の木の階段が続くようになり、傾斜が緩んだ所が田代平の湿原の入口となる。 午後に入っても青空は続き、田代平の湿原からは乳頭山や大白森が良く見えた。 湿原に建つ田代平山荘にはまだ誰もいなかった。 田代平山荘から紅葉に染まり始めた乳頭山へは30分ほどの気持ちの良い登りだ。 秋田駒の麓には田沢湖の湖面が光っている。 2時半に三度目の乳頭山(1478m)の山頂に立つ。 人気のある乳頭山だが、到着した時間が遅かったので山頂は静かだった。 図らずも今まで訪れた中で一番良い天気に恵まれ、360度の大展望を楽しむことが出来た。 岩手山にだけ雲が付いているのが玉にキズだ。 たまたま山頂に居合わせた地元のパーティーから、滝ノ上温泉への道路が二週間ほど前の大雨による土砂崩れで通行止めになっていることを教えられて驚いた。 当初の計画では乳頭山から笊森山と千沼ケ原を通って滝ノ上温泉へ下ることになっていたが、藪漕ぎと濡れた衣類を乾かすのに時間が掛かってしまったので、前回と同じ白沼を通るルートで滝ノ上温泉へ下ることにした。 紅葉が始まっている小乳頭を過ぎると、滝ノ上温泉までは急坂の下りとなる。 途中唯一のアクセントとなる白沼は今日も静寂な雰囲気を醸し出していた。 滝ノ上温泉では『滝峡荘』という素泊まりの温泉小屋に泊まることを目論んでいたが、道路の通行止めにより付近の温泉宿も全て営業していなかったので、観光用の駐車場のトイレの脇にテントを設営しようと思ったところ、トイレに併設された休憩所の中に単独の若い女性がいたので驚いた。 不思議に思って話を伺うと、私達と同様に道路が通行止めになっていることを知らずに反対方面の三ツ石山から下ってきた温泉好きの方だった。 昨日は岩手山9合目の避難小屋に泊まり、明日は秋田駒へ行かれるとのことだった。 このトイレのある建物は入口に『滝ノ上園地休憩舎』と記されていたので、中で泊ることは一般的ではないが、外部から遮断されているためここを利用する人はいないので、その方と一緒に施設内に泊まることにした。
3日目の最終日は5時に滝ノ上園地休憩舎を出発し、裏岩手縦走路の三ツ石山(1466m)へ登る。 ようやく早朝から良い天気になり、空気もひんやりとして秋の空気に入れ替わっていた。 滝ノ上温泉から登る人はもちろんいない。 ブナの林の樹間から時折乳頭山が見えるが、あいにく秋田駒の山頂は雲の中だ。 登山口から2時間半で三ツ石山荘に着く。 3年前は涸れていた山荘手前の水場は、パイプから勢い良く清水が出ていた。 山荘ではトイレに寄っただけで指呼の間の三ツ石山へ向かう。 登るにつれて逆光だが岩手山の眺めが良くなる。 今回の山行中一番の人出が予想された三ツ石山は、到着時間が早かったため、山頂は珍しく貸し切りだった。 風が強まり、岩手山方面から次々と雲が流れてくる。 360度の展望が叶う三ツ石山の山頂は今回で4度目だ。 紅葉の盛りには一週間ほど早いが、それでも山頂直下とこれから向かう小畚山方面への縦走路はそれなりに綺麗に色づいていた。 いつまでも佇んでいたい頂だが、今日は明るいうちに下山しなければならないので、再訪を誓って山頂を後にする。 三ツ石山から小畚山までの間は起伏の緩やかな稜線漫歩だ。 小さな三ツ沼を過ぎると1448m峰への登りとなる。 山頂からの展望は良いが、なぜか山名が付けられていない。 1448m峰を越え、小畚山へ紅葉に彩られた縦走路を緩やかに登る。 三ツ石山と同様に好展望に恵まれた小畚山(1467m)の山頂には松川温泉からの日帰りの登山者が散見された。 小畚山から次のピークの大深山までは、縦走路中一番の大ギャップで、鞍部からは稲妻形に切られた急坂を登る。 傾斜が緩んだ所が八瀬森方面との分岐だ。 笹が登山道を塞いでいるので、標識が無ければ気が付かずに通過してしまうだろう。 縦走路を振り返ると、三ツ石山方面には少し雲が取り付き始めていた。 平らな大深岳の山頂は晴れていても背丈ほどの笹と這い松で展望がなかったが、その先の縦走路からはたおやかな八幡平と畚山の尖ったピークが見えた。 大深山荘は今日も登山者で賑わっていたが、山荘を過ぎると縦走路は再び静かになった。 往路とは逆に北の八幡平に向かうほど天気は良くなり、初日は満足な展望が得られなかった大深岳から八幡平の間は快晴の天気に恵まれ、図らずもこの区間を往復としたことが正解となった。 嶮岨森、前諸桧、諸桧岳を経て、往路では登らなかった縦走路から少し外れた畚山(1578m)へ向かう。 急坂を10分ほど登った山頂からは、高度感のある360度の大展望が広がり、今回辿ったルートや山々が遠望されたが、八幡平の車道を走る車が見えて興醒めだった。 畚山から裏岩手連峰登山口に下り、八幡平への車道を登り返して駐車場には予定どおり3時半に着いた。 いつも利用する松川温泉に行く予定だったが、登山口の近くの藤七温泉で汗を流して長い帰途に着いた。