2  0  1  3  年     8  月  

《 3日 〜 4日 》    北ノ俣岳 ・ 黒部五郎岳

飛越トンネル 〜 北ノ俣避難小屋 〜 北ノ俣岳(テント泊) 〜 黒部五郎岳   (往復)

   夏山シーズンの最盛期となる8月の最初の週末は、高い山はどこでも混雑するのは必至だ。 登山口や幕場での混雑を避けるため、首都圏からのアプローチが悪い岐阜県と富山県の県境の飛越トンネルから飛越新道を辿って黒部五郎岳に登ることに迷いはなかった。 7年前の残雪期に同じルートを辿った時は、山スキーの1パーティーだけしか出会わなかったが、果たして夏山シーズンはどうだろうか。 安房トンネル出口の駐車場で前泊し、翌朝登山口の飛越トンネル(1450m)に向かう。 松本ICから飛越トンネルまでの距離は100キロほどだった。 飛越トンネル手前の広い駐車場には車が10台ほど停まっていたが、夏山シーズンなのでいつ入山したのかは分からない。 天気予報には無かった小雨が降り止まず、30分ほど待って雨が止んだ8時過ぎに出発した。 その間に車が来ることもなく、夏山シーズンの混雑とは無縁に北ノ俣岳への登山道(飛越新道)を登り始める。 しばらくは陽が射さず涼しくて快適だったが、粘土質でぬかるみが多い登山道は、雨でさらに状態が悪くなり、殆どの区間でまともに歩くことが出来ずに閉口する。 夏山シーズンにこのルートが静かな理由は登山口へのアプローチの悪さだけではないような気がした。 花期の終わった水芭蕉と、それとは対照的に今が盛りのニッコウキスゲの群落が登山道のいたる所に見られた。 コースタイムを少しオーバーし、登山口から4時間少々でこぢんまりとした北ノ俣避難小屋(2060m)に着く。 避難小屋の内部は8畳ほどの広さしかないが、軒下には3畳ほどの隠れたスペースもあり、10人ほどは泊れそうだった。 黒部五郎へのアタックベースとしては少し位置が悪く、展望も無いので、前回もここには泊まらなかったが、小屋の前にはホースで引水された冷たい清水が流れ、盛夏にはまるでオアシスのようにありがたい存在だ。 小屋で休まれていた地元の若い方と雑談を交わしながら40分ほどゆっくり休む。 幕場とする稜線には水場が無いので、6リッターほどの水を汲んでいく。 ワタスゲが揺れる池塘が点在する小さな湿原を階段状の木道でしばらく登ると、再び登山道はぬかるみの多い道となった。 天気はようやく回復し、青空と稜線が見えるようになった。 水のボッカで急に重くなったザックに喘ぎながら2時半前に北ノ俣岳直下の稜線との分岐に着く。 展望が一気に開け、雲に覆われた薬師・赤牛・水晶・鷲羽などの山々が一望された。 登山口からここまで出会った登山者は10名程度だったが、稜線には団体のパーティーの姿も見られた。 良く見ると歩いている人の多くがヘルメットを携行しており、それを見て赤木沢の存在にようやく気が付いた。 黒部五郎と薬師の間を歩く人はそれほど多くないと思っていたが、赤木沢のことは全く頭に入ってなかった。 稜線との分岐から黒部五郎方面へ僅かに登り、3時前に北ノ俣岳(2661m)の山頂に着く。 雲の間から黒部五郎もようやくその姿を現した。 山頂直下のお花畑にはチングルマとハクサンイチゲが足の踏み場もないほど咲いていた。 刻々と変化する雲の流れと山々の展望に一喜一憂しながら、5時半過ぎに最後の登山者を見送り、山頂直下の平らで整地された場所に幕を張る。 もちろん私達以外は誰もいない。 夕食の準備をしていると、ようやく槍が雲海からその矛先を覗かせた。 夕食後には静かな北ノ俣岳の山頂で夕焼けショーを楽しみ、心地良いそよ風の吹く静かな山頂で一夜を過ごした。


登山口の飛越トンネル


粘土質でぬかるみが多い登山道は、殆どの区間でまともに歩くことが出来なかった


今が盛りのニッコウキスゲの群落が登山道のいたる所に見られた


こぢんまりとした北ノ俣避難小屋


避難小屋の内部


避難小屋の軒下にある3畳ほどの隠れたスペース


ワタスゲが揺れる池塘が点在する小さな湿原を階段状の木道でしばらく登る


天気はようやく回復し、青空と稜線が見えるようになった


北ノ俣岳の山頂


山頂直下から見た水晶岳


山頂直下から見た薬師岳


山頂直下から見た黒部五郎岳


山頂直下から見た槍ケ岳


山頂直下の平らで整地された場所に幕を張る


山頂から見た夕焼け


夕焼けの山頂から見た黒部五郎岳


   真夜中は満天の星空で、麓の町の夜景も綺麗だったので素晴らしい朝焼けとご来光を期待していたが、意外にも3時前から小雨がパラつき始めた。 雨はすぐに止んだのでテントを撤収し、予定どおり4時に黒部五郎に向けて出発する。 あいにくの深い霧で期待していた稜線からの朝焼けは全く見られなかったので、気持ちを切り替え今度は雲海とご来光を期待して先に進む。 薬師と黒部五郎の中間点の稜線には予想どおり人影は全く見られない。 赤木岳(2622m)を過ぎ、最低鞍部の中俣乗越で朝食を食べる。 黒部五郎への登りに入ると、ご来光どころかこともあろうに雨が降り始めた。 あらためて今日の天気予報を確認すると、午後からの降水確率は昨日よりも高くなっていたが、午前中は晴れマークが出ていた。 天気の回復を祈りながら傘をさして登り続ける。 黒部五郎からの縦走者とすれ違うようになると雨は止んだが、逆に霧はますます深くなっていった。 北ノ俣岳からコースタイムどおり3時間弱を要し、7時前に4度目となる黒部五郎岳(2839m)の山頂に着いた。 残念ながら天気は全く回復する気配もなく一寸先も見えない。 過去3回は全て良い天気に恵まれたのでそれほど悔しさはないが、この悪天を予測出来ない天気予報の精度の悪さに腹が立つ。 15分ほど山頂で粘ってみたものの、状況は全く変わらないので諦めて往路を戻る。 30分ほど歩くと再び小雨が降り始め、中俣乗越の手前辺りからは本降りとなった。 それでも夏山シーズンの最盛期なので薬師から黒部五郎に向かう多くの縦走者とすれ違う。 結局周囲の山々の景色は一切見えぬまま、テントなどの荷物をデポした北ノ俣岳に10時に着いた。 雨はやみ、ようやく陽射しを感じるようになったが、最後まで稜線の霧が晴れることはなかった。 荷物をパッキングし10時半に下山を開始する。 その間にも薬師方面への縦走者が何人も通り過ぎていったが、縦走路から飛越新道に入ったとたん登山者の姿はなくなり、水の補給のため立ち寄った北ノ俣避難小屋にも今日は誰もいなかった。 先ほどの雨のため避難小屋から下の登山道のぬかるみは昨日以上に酷くなり、何度もぬかるみに足を取られる。 寺地山付近と登山口の近くでは小さな登り返しが多く、コースタイムを少しオーバーし、登山口の飛越トンネルに着いたのは4時だった。 稜線からは2パーティーとしか出会わず、GWは山スキーで賑わう飛越新道も夏山シーズンは静かなことが分かった。 平湯温泉の『奥飛騨ガーデンホテル焼岳』で汗を流して帰途についたが、時間が遅くなったので帰りの高速道路では渋滞がなかった。


赤木岳の山頂直下


北ノ俣岳と黒部五郎の間の最低鞍部となる中俣乗越


コバイケイソウの群落


黒部五郎への登りでは雨が降り始めた


濃霧で一寸先も見えない黒部五郎の山頂


黒部五郎岳の山頂(2006年6月4日)


黒部五郎からの下りで再び小雨が降り始め、中俣乗越の手前辺りからは本降りとなった


北ノ俣岳に戻ったが最後まで稜線の霧が晴れることはなかった


北ノ俣岳から見た黒部五郎岳(2006年6月4日)


飛越新道に入ると登山者の姿はなくなった


避難小屋から下の登山道のぬかるみは昨日以上に酷くなった


飛越新道の登山口


2 0 1 3 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P