《 20日 〜 21日 》 霞沢岳
島々 〜 二俣 〜 徳本峠(テント泊) 〜 霞沢岳 〜 徳本峠 〜 二俣 〜 島々 (往復)
梅雨が明けて本格的な夏山シーズンに入ったので、人気のある山やルートの週末の喧噪を避けるため、避暑も兼ねて島々谷から徳本峠を経て霞沢岳(2645m)に行った。 長野道の筑北PAに前泊し、山仲間の西さん&セッちゃんと松本IC付近のコンビニで待ち合わせ、登山口の島々に向かう。 国道から『徳本峠入口』の標識に従って舗装された小道を入ると鹿除けのゲートがあり、その先に広い駐車場があった。 駐車場には既に10台ほどの車が停まっていたが、意外にも釣人の方が多い感じだった。 駐車場を6時過ぎに出発。 駐車場の先には手で開けられる簡易なゲートがあり、その先に続く未舗装の林道も車で行けそうだった。 案の定、林道には凸凹や起伏が殆どなく、車の通行は全く問題なかった。 島々谷川に沿って小1時間ほど林道を歩いて行くと、登山地図に記された通行止めのゲートがあり、車が1台停まっていた。 恐らく徳本峠への登山者の多くが上高地に下山するため、このゲートまで車で来ることがないのだろう。 ゲートから先も道自体は全く変わらず、その先にある実質的な登山口の二俣まで歩き易い道が続いた。 谷間の林道は陽も届かず涼しくて快適だ。 駐車場から途中1回の休憩を挟んで1時間半ほどで取水施設のある登山口の二俣に着いた。 二俣は島々谷北沢と南沢とが合わさる所で、徳本峠へは南沢に沿ってここから9.7キロと道標に記されていた。 二俣からは渓谷沿いの登山道となったが、谷はさらに深くなって思惑どおり陽が届かずに涼しい。 W.ウェストンが11回も越えたという徳本峠への道は、中間点の岩魚留小屋までは所々で橋を渡って南沢の右岸と左岸を交互に遡り、時々高巻きはするものの起伏の少ない正に“癒し系”の道だった。 二俣から岩魚留小屋の間は5.2キロで、その中間点には一休みするにはちょうど良いベンチがあった。 二俣からはずっと日陰の道を歩き、2時間ほどで岩魚留小屋に着いた。 小屋は休業中のようだったが、老朽化が進んで廃屋のようになっていた。 岩魚留小屋から先では沢が細くなり少し登山道らしくなったが、1時間ほどはまだ勾配の緩やかな道が続いた。 途中天然のワサビが多く見られるようになり、夕食用のつまみに少し摘んでいく。 南沢の本流から別れて徳本峠への枝沢に沿って登るようになると、登山道にようやく勾配が感じられるようになり、間もなく『ちから水』の標識のある水場に着いた。 徳本峠の小屋でも水は買えるが、5リッターほどの水を汲んでいく。 水場から徳本峠まではそれまでとは一変して九十九折れの坂道となり、ぐんぐん標高を稼ぐ。 水場から徳本峠までは標高差が300m以上あったが、1時間ほどで待望の徳本峠に着いた。 島々からずっと展望のない地味な道を辿ってきたので、峠からの穂高連峰の眺めは見慣れた景色とは言えドラマチックだ。 明神から峠へ登ったらこの感動は味わえないだろう。 私達は上高地から明神経由で13年ぶり、西さん&セッちゃんは今回と同じ島々からのルートで5年ぶりの徳本峠だ。 峠までは数パーティーとしか出会わなかったが、徳本峠小屋の前の幕場には上高地から入った人のテントが数張り見られ、山小屋に泊まる人の姿も散見された。 山小屋は昔の小さな小屋を残したまま、その裏に新しい小屋を建て増しする形で大きくなっていた。 明日の天気予報はあまり良くないので、テントを設営してから霞沢岳方面へ30分ほど登った『パノラマピーク』と呼ばれる所まで行ってみる。 パノラマピークの木々の切り裂きからは、蝶から常念を経て大天井までの稜線が見えた。 幕場に戻り、山小屋の脇に設営された大きなテントの下で夕食の準備を始める。 初めて食べた天然のワサビはマイルドな辛みでとても美味しかった。 幕場には20張りほどのテントスペースがあったが、今日は13張りでそれほど混雑しているという感じはなかった。
翌朝はまだ暗い3時半に幕場を出発。 午後からは天気が不安定になるという予報に合わせて、霞沢岳の手前のK1ピーク(2590m)までとするつもりだったが、西さん&セッちゃんの希望で霞沢岳まで行くことになった。 昨日行ったパノラマピークを過ぎると、登山道は九十九折れの急登となり、幕場から1時間ほどで南の方向に展望が開けたジャンクションピーク(2428m)に着いた。 ジャンクションピークでの朝焼けを期待していたが、あいにくの曇天でそれは叶わず、一息入れてから緩やかに2261mの鞍部へ下る。 稜線は樹林に囲まれ展望は無いが、途中に何か所か御嶽と乗鞍が見えるポイントがあった。 鞍部には雪解け水で出来た小さな池があった。 鞍部からはそれまでの単調な道とは違い、小さなピークを登り下りしながら進む。 展望の無い地味なピークにはP2・P3・P4と木々に赤ペンキで記してあった。 樹林帯の中を延々と歩くためか、13年前の記憶は全く残っていない。 P2を過ぎるとようやく樹間から霞沢岳とK1ピーク・K2ピークが見えた。 尖ったK1ピーク直下からは急登が続くようになり、6時半前に待望のK1ピークに着いた。 昨夜の天気予報は曇りだったが、天気は予報よりも良くなり、六百山越しに穂高連峰が大きく望まれ、笠ケ岳や焼岳の山頂も見えた。 眼前には緑濃いK2ピークとその左奥に霞沢岳が並んでいる。 360度の展望を誇るK1ピークで一息入れ、K2ピークを経て霞沢岳に向かう。 K1ピークからの展望が一番良いと記憶していたが、K2ピークも同じように展望が良かった。 霞沢岳直下には僅かだが残雪が見られ、シナノキンバイが群生していた。 7時前にまだ誰もいない静かな霞沢岳の山頂に着いた。 這い松に囲まれた猫の額ほどの狭い山頂からは乗鞍が近く、中ア、南ア、八ケ岳、そして白山や富士山も遠望された。 西穂への稜線の向こうに双六や三俣蓮華、黒部五郎などが見えたことが意外だった。 30分近く山頂で寛ろぎ、重い腰を上げて山頂を辞する。 往路では当然のことながら徳本峠の幕場や小屋に泊まっていた人達の殆どとすれ違った。 10時半前に静かな徳本峠に着き、テントを撤収して11時に峠を出発する。 帰路も上高地の喧噪を避けて島々へ下る。 昨夜食べた天然のワサビが美味しかったので、お土産用にまた少し摘んでいく。 午後に入っても陽が届かない渓谷沿いの登山道は夏の暑い時期でも快適だったが、今日も数パーティーとしか出会わなかった。 4時過ぎに島々の駐車場に着き、国道を松本方面に少し行った先にある竜島温泉の日帰り湯に立ち寄り、松本のレストラン『十字路』で夕食を食べて帰途についた。