2  0  1  3  年     6  月  

《 30日 》    浅草岳 ・ 鬼ケ面山

田子倉 〜 浅草岳 〜 鬼ケ面山 〜 六十里越  (縦走)

   梅雨前線と寒気の影響で、週末は東北も甲信越も日曜日の午前中だけ晴れるという不安定な予報だったので、泊りの山行はやめて日帰りで日照時間予報の一番長い新潟・福島県境の浅草岳に行くことにした。 目的はもちろんこの時期に見頃を迎えるヒメサユリだ。 浅草岳への登山道は沢山あるが、ヒメサユリが最も多いという鬼ケ面山周辺と山の展望を考えて、福島県側の田子倉から浅草岳へ登り、鬼ケ面山方面へ縦走して県境の六十里越の峠に下山するというルートとした。 下山口の六十里越の峠と登山口の田子倉の間は7.3キロ(実走)の舗装された車道(国道252号)なので、1時間半ほどで歩けるが、六十里越から田子倉へは専ら下り坂(標高差230m/実測)なので、前週と同じようにこの区間で自転車を使うことにした。 道の駅『いりひろせ』に前泊し、未明に下山口の六十里越の駐車場に自転車を1台デポし、登山口の田子倉へ向かう。 ヒメサユリが見頃の時期なので、予想どおり田子倉の広い駐車場にはすでに10台以上の車があり、無料休憩所の中には大勢の登山者が泊まっていた。 只見線の線路を越え、周囲が充分明るくなった4時半に登山口を出発する。 登山口の標高は520mだが植林はなく、ブナの木々が点在する雰囲気の良い登山道だ。 30分ほど緩やかに登り、山梨から来たという10名ほどの団体に道を譲られると、その先は山頂まで単独の男性としか出会わなかった。 気温は高くないが、沢状となっている樹林帯の中は風が通らず蒸し暑い。 登山口から1時間ほどで『田子倉眺め』という道標がある痩せ尾根の末端に着いたが、陽射しは辛うじて感じるものの、あいにくの深い霧で足下の田子倉湖はおろか、周囲の展望は全く得られなかった。 前週の悪天候の記憶が頭にちらつき、ヤキモキする。 田子倉眺めからしばらく登り、風が良く通り抜けるガラ場で朝食を食べていると、ようやく上空に青空が見え始めた。 足取りが少し軽くなり、朧げに見える剣ケ峰(1131m)のピークを目指して痩せ尾根を登っていくと、雲海の中から抜け出したように浅草岳(1585m)の山頂が見えてきた。 夢中で浅草岳の写真を撮っていると、今度は左手に切り立った鬼ケ面山(1465m)の山並みが霧の中から不意に現れ、その山名どおりの迫力ある景観に心を奪われる。 剣ケ峰のピークを過ぎた所には『鬼ケ面眺め』という道標があり、鬼ケ面山と浅草岳が共に良く見えた。 鬼ケ面眺めからはブナが密集した尾根をしばらく登ると、次第に木々の背が低くなり、ツツジやタニウツギに続いてようやく待望のヒメサユリが見られた。 朝露に濡れたヒメサユリはとてもみずみずしく、正に満開・見頃という感じがした。 一方、足下の田子倉湖や只見の盆地を埋め尽くしている雲海の眺めは壮観で、ここがまだ1500m足らずの高さであることが不思議に思える。 剣ケ峰のピークの先には雲海から頭を出している会津朝日岳(1624m)や遠く会津駒ケ岳方面の山が遠望された。 展望も花も予想していた以上に良く、代替案ながらも浅草岳に登って良かったと思った。 山頂が近づくにつれ、ヒメサユリが多くなり、花の色が濃いものと薄いものがあることを知った。 山頂手前からはヒメサユリの撮影で登るペースが遅くなったが、7時半に1年ぶりの浅草岳の山頂に着いた。 今日は展望よりもヒメサユリが目的の登山者が多いためか、山頂には登山口から相前後しながら登っていた単独の男性しかいなかった。 梅雨空なのでさすがに飯豊までは見えなかったが、守門岳(1537m)や鬼ケ面山の向こうに毛猛山(1517m)や未丈ケ岳(1553m)、そして眼下にはようやく雲の切れ目から田子倉湖が見えた。 山頂で30分ほどゆっくり寛いでいる間に、福島県側から二人、新潟県側から一人の登山者が登ってきた。 8時過ぎに山頂を発ち、鬼ケ面山方面の縦走路に入る。 縦走路は小さな登り下りを繰り返しながら、貉(ムジナ)沢カッチ(1452m)・北岳(1472m)・鬼ケ面山(1465m)・南岳(1354m)の4つのピークを辿って行くが、先ほどの『鬼ケ面眺め』から見た切り立った山並みが嘘のように歩き易い登山道が終始稜線上に続いていた。 南岳まではヒメサユリが登山道の脇に途絶えることなく咲き、一部では群落となっていたり、ニッコウキスゲとコラボしていたりして、お花見を充分満喫することが出来た。 浅草岳から鬼ケ面山までの間では予想どおり10数名の登山者とすれ違ったが、意外にも鬼ケ面山を過ぎてからはそれ以上に多くの登山者とすれ違った。 鬼ケ面山と南岳との間がヒメサユリが一番多かったので、六十里越から鬼ケ面山を往復し、ヒメサユリを愛でようとする人もいるのかもしれない。 田子倉湖の眺めが良い南岳からマイクロウェーブが建つ1125m地点を経て下山口の六十里越の駐車場までは、ハイキングコースのような癒し系のトレイルとなり、六十里越から登ってくる登山者の多さに納得した。 ほぼ予定どおり、12時半前に自転車をデポした六十里越の駐車場に下り立つと、駐車場には未明にはなかった自転車が数台デポしてあった。 駐車場に妻を待たせ、県境の六十里越トンネルを抜けて登山口の田子倉へ自転車で下る。 折りたたみ式のミニサイクルでも20分で下れた。 デポした車を回収し、妻の待つ六十里越の駐車場に戻る。 午後に入り上空には雲が多くなったが、雨は降りそうもなかったので、もう一山登ろうと只見の町を通って南会津の田代山(1971m)に向かう。 2時半に山麓の湯ノ花温泉に着いたが、バケツをひっくり返したような激しい夕立となり、残念ながら山上の湿原のお花見をすることは出来なかった。


無料休憩所から只見線の線路を越えて登山口に向かう


福島県側の田子倉の登山口


ブナの木々が点在する雰囲気の良い登山道


登山口から1時間ほどで『田子倉眺め』という道標がある痩せ尾根の末端に着く


痩せ尾根を登っていくと、雲海の中から抜け出したように浅草岳の山頂が見えた


切り立った鬼ケ面山の山並みが霧の中から不意に現れた


『鬼ケ面眺め』から見た浅草岳


『鬼ケ面眺め』付近から見た貉(ムジナ)沢カッチ


『鬼ケ面眺め』からはブナが密集した尾根をしばらく登る


剣ケ峰のピークの先には雲海から頭を出している会津朝日岳が遠望された


朝露に濡れたみずみずしいヒメサユリ


浅草岳直下から見た鬼ケ面山


浅草岳の山頂が近づくにつれてヒメサユリが多くなった


ヒメサユリ


ヒメサユリ


タニウツギ


浅草岳の山頂


山頂から見た前岳


山頂から見た鬼ケ面山(中) ・ 北岳(右) ・ 南岳(左)


山頂から見た田子倉湖


山頂直下の池塘から見た守門岳


ベニサラサドウダン


前岳の山頂直下から見た鬼ケ面山


ヒメサユリの群落


ヒメサユリ


只見沢の残雪


ヒメサユリとニッコウキスゲ


貉(ムジナ)沢カッチの山頂から見た浅草岳方面


貉(ムジナ)沢カッチの山頂から見た北岳


鬼ケ面山


鬼ケ面山への稜線は歩き易い登山道が終始続いていた


鬼ケ面山の山頂


南岳直下のヒメサユリの群落


南岳の山頂から見た田子倉湖


山頂から見た鬼ケ面山


山頂から見た浅草岳


南岳からマイクロウェーブへはハイキングコースのような癒し系のトレイルとなった


1125m地点のマイクロウェーブ


六十里越の登山口


県境の六十里越トンネルを抜けて登山口の田子倉へ自転車で下る


無料休憩所がある田子倉の駐車場から見た浅草岳


無料休憩所の内部


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