《 23日 》 黒岩山 ・ 長栂山
滝上発電所 〜 中俣小屋 〜 黒岩山 〜 長栂山 (往復)
中俣新道から栂海新道の黒岩山(1624m)に登り、朝日岳(2418m)まで稜線のお花畑を愛でようと一泊二日の計画をしたが、土曜日が雨の予報だったので、仕方なく日曜日に同じ行程を日帰りで行くことにした。 登山口はヒスイ峡の先の滝上発電所の傍らにある林道の通行止めゲート(270m)で、その付近の駐車場に前泊する。 駐車場から中俣新道の起点となる中俣小屋(550m)までは、通行止めゲートから小滝川に沿って未舗装の林道を6キロほど歩かなければならないので、今回はアプローチに自転車(変速機の無いママチャリと折りたたみ式のミニサイクル)を使うことにした。 目標の朝日岳へは日帰りでは遠いので、未明の2時半に出発する予定だったが、前夜からの雨が降り止まず、出発は3時になってしまった。 未舗装の林道の路面状態は悪くないが、昨日からの雨で水たまりが多く、タイヤが濡れた砂利でスリップして走りづらい。 林道は大半が緩やかな登りだったが、所々で急勾配となり、乗ったり押したりを繰り返しながら進む。 夏至の直後なので3時半くらいから明るくなると思ったが、あいにくの曇天で4時まで暗く、自転車はとても乗りにくかった。 通行止めゲートから1時間ほどの所にあった砂防工事の飯場の傍らに自転車をデポし、朝食を食べてから歩き始める。 飯場のすぐ先の橋を渡ると、右側の斜面に雑草に埋もれた『中俣新道』と記された標柱があった。 林道から雑草の中の踏み跡を僅かに登ると、ユニークな三角形の中俣小屋があり、その右手からさらに続く急斜面の登山道をロープや鎖を頼って登る。 シーズン初めで入山者も無く、浮石や倒木で登山道は少し荒れていた。 中俣小屋から30分ほど登ると傾斜も緩み、樹間からのご来光となった。 樹林帯で展望のない中俣山(1037m)のピークは何の特徴もなく、文字の消えかかった古い山名板が足元に落ちていた。 中俣山を過ぎると登山道は緩やかな登り下りとなり、大小の水芭蕉の群落があちこちに見られるようになった。 季節はずれのカタクリやタムシバの花も所々で見られ、稜線でのお花見に期待が持てた。 昨日の雨で登山道が沢のようになっている所が多く歩き辛い。 1200mを過ぎると尾根は顕著になり、樹間から五輪山(2261m)や犬ケ岳(1593m)などが望まれるようになったが、すでに谷から霧が湧き始めていた。 登山道に残雪が見られるようになると間もなく森林限界となった。 お花畑を期待していた黒岩山直下の草原は残念ながらまだ残雪に覆われ、その先の栂海新道の稜線はすでに霧に煙っていた。 予定より少し早く8時前に栂海新道との分岐に着いたが、分岐の標柱はまだ雪の下に埋もれていた。 分岐を右に行くとすぐ先が黒岩山の山頂だった。 12年前の海の日の連休に山仲間の山人さん&モコモコさんと栂海新道を縦走した時以来の登頂だったが、あいにくの深い霧で展望は全く得られなかった。 気を取り直して稜線を黒岩平方面に向かうが、栂海新道の稜線はまだ残雪に覆われていた。 黒岩平は所々で残雪が消えていたが、ここにも水芭蕉がメインに咲いていて、シラネアオイ、チングルマ、コザクラが僅かに見られただけだった。 霧はますます濃くなり、残雪でお花見が出来ないばかりか、朝日岳方面への縦走も危ぶまれたが、まだ時間も早いので天気の回復を祈って先に進む。 黒岩平から先も尾根が広く、視界は10数メートルしかないので、ルートが非常に分かりづらい。 スプーンカットになった硬い残雪にはトレースが残らないので、ストックでマーキングしながら登る。 霧が僅かに晴れる毎に周囲の景色を記憶し、所々で露出している登山道を探し当てながら登るため時間が掛かる。 標高の割に全く暑くないのが救いだ。 意外にも2000mを超えたアヤメ平の湿原は残雪が消えて木道が露出していた。 ようやく霧が晴れて長栂山(2267m)が指呼の間に望まれ、諦めかけていた展望に期待が持てたが、この時が最初で最後の青空となってしまった。 長栂山の山頂直下の尾根は40度ほどの急斜面だったので、左から回り込んで雪の禿げた草付を登ったが、最後に急な雪壁があって登れなかった。 仕方なく草付を一旦下り、さらに大回りして傾斜の緩い残雪の斜面をトラバース気味に登っていくと、長栂山だと思っていたピークを通り越してしまったが、足元には照葉の池と思われる大小二つの池があった。 高度計は2250mを指していたが、池の傍らにあるはずの長栂山の山頂が分からず、周囲を右往左往すると、登山道はあったが山頂の標識は見つからなかった。 時刻は正午となり、朝日岳には何とか登れても展望は全く期待出来ず、何よりも帰路の雪渓のルーファンが危惧されたので、中途半端だが深追いせずここで引き返すことにした。 間もなく長栂山の山頂の標識があると思われるピークが見えてきたが、帰宅後に調べてみると、山頂の標識が置かれている場所と地形図や登山地図上の山頂の表示が違っていることが分かった。 予想どおり気温の上昇で雪渓上の霧は往路よりも濃くなり、途中からトレースやストックでのマーキングも分からなくなってしまった。 高度計の標高を頼りに拙い地形の記憶を繋ぎ合わせ、黒岩平への道を探し当てながら進む。 運良く黒岩平の手前で霧が少し晴れたので、無事黒岩平へ戻ることが出来た。 黒岩岳手前の中俣新道への分岐を2時半過ぎに通過し、林道には5時過ぎに下り立った。 中俣小屋に置かれたノートを見ると、最後の記帳は昨年の10月で、小屋を管理している方のものだった。 往路の林道の登りでは自転車にあまりメリットを感じなかったが、復路の下り坂では労せずして登山口まで運んでくれる自転車のありがたみを痛感した。 6時ちょうどに駐車場の車に戻ると、とうとう大粒の雨が降ってきた。