2  0  1  3  年     5  月  

《 25日 〜 26日 》    前烏帽子岳 ・ 三ツ岳 ・ 野口五郎岳

   七倉 〜 高瀬ダム 〜 前烏帽子岳 〜 烏帽子小屋(テント泊) 〜 三ツ岳 〜 野口五郎岳  (往復)

   梅雨の走りか、週末は再び東北・新潟方面の方が長野方面より天気が良かったので、大日杉小屋から飯豊本山へ登る計画を立てたが、直前に長野方面の天気予報が好転したので、急遽予定を変更し今シ−ズン初めて北アルプスの山に行くことにした。 GWの後半に七倉(高瀬ダム)から新穂高への縦走を計画したが、天気予報が悪く計画倒れになったので、今回はこの計画の一部を割愛して七倉(高瀬ダム)から烏帽子小屋を経て野口五郎岳までの往復としたが、図らずも昨年最後に行った北アルプスの山行(高瀬ダム〜烏帽子小屋〜野口五郎岳〜湯俣温泉〜高瀬ダム)と同じようなルートになってしまった。 長野道の筑北PAで前泊し、翌朝登山口の七倉山荘前の駐車場に向かう。 意外にも七倉山荘の駐車場には登山者ではなく、湯俣温泉にでも行くのか軽装のハイカーの姿がそれなりに見られた。 出発の準備をしていると、タイミング良く二人のハイカーから声が掛かり、高瀬ダムまでタクシーを相乗りすることになった。 同乗した方々は濁沢周辺でバードウォッチングと山菜採りをされるとのことだった。 タクシーの運転手さんの話では、毎年GWの入山者は稀で今年はまだ誰も登山者を乗せてないとのことだった。 7時半前に高瀬ダムを出発。 予報どおりの青空で気持ちが良い。 不動沢のトンネルと吊橋を渡って濁沢の登山口へ向かう。 烏帽子小屋への通称『ブナ立尾根』はもう何度も登っているが、残雪期に登るのは初めてだ。 登山口付近には一片の残雪もなく、新緑のブナの木々が目に鮮やかだ。 登山口から30分ほど登ると、登山道の脇にシラネアオイやサンカヨウなどの花が見られた。 今シーズン初の北アルプスの山行だったので、どの辺りから残雪が出てくるのか興味深かったが、標高1600m付近から山肌や沢筋に残雪が見られるようになり、1800m付近から残雪が登山道を覆うようになった。 無雪期には全く気が付かなかったが、ブナ立尾根は尾根が痩せている所は傾斜が緩く、尾根の幅が広くなると傾斜が急になるような感じだった。 幅の広い尾根にジグザグに登山道が付けられている所が、残雪期には雪が深くて登りにくい急斜面になるということだ。 1800m付近から2200m付近にある大岩までの間に部分的にそのような急斜面があり、その都度アイゼンを着けて登る。 雪の緩んだ所では股まで潜ることもあった。 大岩を過ぎると木々も疎らになり、眼前の不動岳やその背後の針ノ木岳や蓮華岳など周囲の山々の展望が良くなる。 稜線に上がる手前では、残雪期ならではの広いダケカンバの斜面となり、雪山気分が満喫出来た。 ほぼ予定どおり1時半に烏帽子小屋に着く。 山小屋はまだ一部が雪に埋もれていた。 行程の半分ほどが雪だったので、ここまで無雪期よりも5割増しくらいの時間が掛かった。 稜線は全くの無風で日向だと暑いくらいだ。 登山道は小屋の周辺を除いてほぼ露出していた。 烏帽子小屋付近からは毎度見慣れた山々の風景が見られたが、赤牛岳やその背後の薬師岳にはまだかなりの残雪が見られた。 三ツ岳の山頂付近で幕営する予定でいたが、登山道が使えれば烏帽子小屋から三ツ岳へは空身なら1時間ほどで登れるし、夕方から少し天気が不安定になるとの予報だったので、少し早いがここで行動を打ち切ることにした。 あまり知られていないが、烏帽子小屋の冬期小屋(山小屋の一部)が開放されていた。 冬期小屋は3部屋に別れていて、20人くらい泊まれる広いスペースがあり、料金は@2000円だった。 小屋の軒先にテントを設営してから、指呼の間の前(ニセ)烏帽子岳に登る。 すでに午後に入っているため上空には雲も浮かんでいるが、眼前の烏帽子岳と南沢岳の間に立山が、針ノ木岳と蓮華岳の間に鹿島槍が遠望され、三ツ岳・赤牛岳・水晶岳・唐沢岳などの展望もまずまずだった。 相変らず風もなく暖かい山頂でのんびり展望を愛でながら寛ぐ。 なによりもこの静かさが嬉しい。 烏帽子小屋に戻って水を作る。 冬期小屋に置かれていた専用のノートを見ると、やはりGW頃の入山者は少ないようで、今年も2パーティーしか記帳していなかったった。 GW前半にブナ立尾根を登った4人のパーティーはラッセルで登山口から山小屋まで11時間を要したとのことだった。 夕食は小屋を使わせてもらったが、予想どおり誰も登って来なかった。 午後からは曇るという明日の天気の前兆か、残念ながら期待していた夕焼けショーは見られなかった。


高瀬ダムから見た三ツ岳付近の稜線


不動沢の吊橋を渡って濁沢の登山口へ向かう


登山口付近の新緑のブナの木々


シラネアオイ


コシアブラ


登山道から見た不動岳


登山道から見た唐沢岳


標高2000m付近の急斜面の尾根


標高2200m付近にある大岩


大岩を過ぎると木々も疎らになり展望が良くなる


ブナ立尾根上部の痩せた雪稜


ブナ立尾根上部から見た燕岳


残雪期ならではの広いダケカンバの斜面を登る


稜線直下


稜線直下から見た三ツ岳


稜線に上がる


烏帽子小屋はまだ一部が雪に埋もれていた


前烏帽子岳付近から見た唐沢岳(中央左)と餓鬼岳(中央右)    左下は高瀬ダム


前烏帽子岳の山頂


前烏帽子岳の山頂から見た烏帽子岳(左)と南沢岳(右)    中央奥が立山


山頂から見た不動岳    針ノ木岳(左奥) ・ 蓮華岳(右奥)


山頂から見た赤牛岳


山頂から見た三ツ岳


前烏帽子岳付近から見た燕岳(左)と大天井岳(右)


烏帽子小屋の軒先にテントを設営する


広い烏帽子小屋の冬期小屋(山小屋の一部)


   翌朝は4時半過ぎに烏帽子小屋を出発。 昨夜からの曇天が続いて朝焼けはなく、まだ西の空に満月が見られた。 小屋の周りの黒々とした残雪の尾根を少し登り下りして10分ほどで登山道に入る。 昨年の夏も同じような時間帯に登っているので登山道の記憶は新しい。 5時過ぎにようやく雲間からのご来光となった。 薄雲が多くすっきりしない空模様だが、風が無いので登るにはちょうど良い。 このまま曇天が続いてしまうのかと思ったが、三ツ岳の手前辺りから次第に青空が覗いてくるようになった。 左前方の燕岳から大天井岳へと続く表銀座の縦走路の先に槍ケ岳が見えた。 その先で残雪が登山道を覆っていたが、アイゼンは着けずにキックステップで登る。 三ツ岳の直下から山頂を巻いてしまう登山道を適当な所で外れ、前回踏み損ねた三角点のある三ツ岳の山頂へ向かう。 予定より少し遅れて6時に人待ち顔の三ツ岳の山頂に着く。 山頂からはそれまで三ツ岳で隠されていた野口五郎岳が眼前に大きく望まれ、残雪が豊富な水晶岳も良い角度で見渡せた。 快晴ではないが青空が広がり、天気は予想以上に良くなってきた。 三ツ岳から一旦下って登山道に戻り、指呼の間の三ツ岳の西峰に足取りも軽く登り返す。 岩のオブジェがユニークな三ツ岳の西峰からは、水晶岳や赤牛岳が三ツ岳からとは少し違った趣で望まれた。 三ツ岳の西峰から野口五郎岳までは緩やかな登り下りの稜線漫歩だ。 風も無く穏やかで休憩する口実が見つからない。 所々で残雪が登山道を覆っているが、緩やかな斜面で歩くのに全く支障はない。 未明の曇天が嘘のように、白馬岳まで遠望出来るようになった。 平日のように見渡す限り縦走路に人影がないのが不思議に思えた。 雪から完全に露出した野口五郎小屋を左手に見ながら、野口五郎岳の山頂直下の雪渓を登る。 8時ちょうどに雪の禿げた広い野口五郎岳の山頂に着く。 昨年の8月以来、僅か9か月ぶりの登頂だが、緑濃い盛夏の山の雰囲気とは全く違う残雪の山々の風景が楽しめた。 北アルプスのほぼ中心に位置するこの山からの展望の良さは言うまでもない。 30分ほど山頂からの大展望を堪能し、後ろ髪を引かれる思いで往路を引き返す。 夏山のように次第に暑くなってくると、それに合わせて雲も湧いてきた。 11時前に烏帽子小屋に戻り、テントを撤収してブナ立尾根を下る。 私達以外のトレースはなく、この週末には船窪方面への縦走者もいなかったことが分かった。 登りで目を付けていたコシアブラを収穫し、まだ陽の高い3時半過ぎに高瀬ダムに着いた。 タクシーの運転手さんは昨日と同じ方だった。 いつもの大町市営の『上原の湯』で汗を流して帰途に着いた。


曇天で朝焼けはなく、まだ西の空に満月が見られた


三ツ岳へは登山道を登る


雲間からのご来光


薄雲が多くすっきりしない空模様だが、風が無いので登るにはちょうど良い


三ツ岳手前の残雪


三ツ岳の山頂


三ツ岳の山頂から見た野口五郎岳


山頂から見た水晶岳


山頂から見た槍ケ岳


山頂から見た赤牛岳とその背後の薬師岳


山頂から見た立山(右) ・ 五色ケ原(中) ・ 越中沢岳(左)


岩のオブジェがユニークな三ツ岳の西峰


三ツ岳の西峰から野口五郎岳までは緩やかな登り下りの稜線漫歩だ


三ツ岳の西峰付近から見た水晶岳


縦走路から見た赤牛岳


所々で残雪が登山道を覆っているが、緩やかな斜面で歩くのに全く支障はない


野口五郎小屋手前から見た三ツ岳


野口五郎小屋手前から見た水晶岳


野口五郎小屋手前から見た野口五郎岳の山頂


野口五郎小屋


野口五郎岳の山頂直下の雪渓を登る


野口五郎岳の山頂


山頂から見た真砂岳


山頂から見た水晶岳


山頂から見た鷲羽岳(中央)


山頂から見た薬師岳


山頂から見た槍ケ岳


立山を正面に望みながら往路を戻る


三ツ岳の西峰から見た三ツ岳


三ツ岳の西峰から見た烏帽子岳


三ツ岳の直下から見た三ツ岳


三ツ岳の直下から見た赤牛岳(中央左)と薬師岳(右奥)


烏帽子小屋付近から見た前烏帽子岳


烏帽子小屋から見た赤牛岳


ブナ立尾根を下る


2 0 1 3 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P