2  0  1  3  年     1  月  

《 12日 》    大山

天丸橋 〜 北尾根(敗退) 〜 天丸橋 〜 沢ルート 〜 大山 〜 北尾根 〜 天丸橋  (周回)

   西上州の鋭峰・大山(1540m)の山頂から車道の通じる天丸橋へダイレクトに下る北尾根ルートは、一時通行止めになっていた時期があり、昭文社の山の地図からも抹消されていたが、昨今の山の地図ではコースタイムも表示されるようになり(但し、コースタイムが誤っている地図もある)、辿る人も増えてきたようだった。 一方ネット上では、踏破した年代にもよるが、@全く問題なかった、A大変な思いをした、B敗退した、と様々な記録があり、かつ、詳しく書かれたものが無かったので、果たしてどれが客観的なものなのか釈然とせず、それを自分の目と足で確かめたいという気持ちが募った。 道の駅『万葉の里』で前泊し、翌朝野栗沢の集落を抜けて登山口の天丸橋に向かう。 今日は天丸橋からその北尾根を辿って大山に登り、隣接する天丸山と帳付山を共にピストンした後、沢ルートを下って天丸橋に戻る予定だ。 野栗沢の集落を過ぎると車道に雪が見られるようになり、天丸橋周辺も僅かだが雪積があった。 明るくなるのを待って6時半に出発。 気温はマイナス7度と寒さは厳しい。 天丸橋から30mほど沢ルートの登山道を進んだ所に目印の大きいビニールテープが木に巻かれ、そこから凍った沢を渡って北尾根の取り付きを探す。 あいにく踏み跡は雪で分からないので、『森林開発公団』と記された古い看板の周囲でテープ類を探す。 看板の背後に新しい水玉模様のビニール紐が付けられていたのでこれに従って登り始めると、等間隔で同じ種類のビニール紐があり、また違う種類の赤テープも見られた。 間もなく足元の雪もなくなり、様々な種類のテープに導かれ植林の急斜面をジグザグに登って行くが、踏み跡は薄くとても登りにくかった。 しばらく登るとようやく尾根は顕著になり、歩き易くなった。 テープ類も途切れることなく続いていたので、順調に北尾根を踏破出来そうな気がしてきた。 取り付きから30分ほど登ると眼前に大きな岩壁があらわれ、尾根を塞いでいた。 周囲にはテープが無かったので、一旦最後のテープがあった所まで戻って次のテープを探すと、岩壁を左から巻くように違う種類のテープがあり、それに従って進むと再び先ほどの赤テープが連続して見られるようになった。 再び急斜面をテープを頼りに登って行くが、踏み跡は薄くとても登山道と言えるような代物ではない。 疑心暗鬼で登り続けると、大山の山頂を望む露岩に出た。 ここが北尾根上の唯一のチェックポイントとなる『焼岩展望台』のことだろうか。 先ほどと同様に、それまであったテープ類が急に無くなり、露岩の周りを1時間ほど右往左往する。 下の沢ルートを登っている方から、道に迷ったのではないかと心配され声が掛かった。 北尾根は沢ルートから近くはないので、ここが焼岩展望台ではないことが分かり、また大山だと思った頭上の山は天丸山だということにようやく気が付いたので、露岩の手前の急峻な尾根にテープを探すと、古い同じ種類のテープが短い間隔で3つほど地面に落ちていた。 その先で再びテープは無くなったが、踏み跡らしきものがあったので、木の根を掴みながら急斜面を登って行くと切り立った岩場に出た。 岩には溶けた雪が氷となって張りついていたので、登ることがはばかられた。 ここが北尾根だという確信も得られなかったので、無理に登ることは止め、無雪期に再訪することを誓って天丸橋に引き返す。 10時過ぎに天丸橋に戻ると、他に車は停まってなかった。 気を取り直して沢ルートを登る。 ここは登りも下りも辿ったことがあるので、全く迷う所は無い。 薄暗く陽が当たらない沢や滝は全てが硬く凍りついていた。 何でこの時間帯にここを歩いてなければならないのかと思うと余計に憂鬱になる。 時間的に見て大山と天丸山には行かず、帳付山だけをピストンするつもりでいたが、妻はもう二度と北尾根は登りたくないと言うので、逆に大山だけを登り、北尾根を下ることにした。 天丸山・帳付山方面との分岐を過ぎるとようやく陽が当たるようになり、正午前に誰もいない静かな大山の山頂に着いた。 寒気の影響による不気味な白い雲が浮かんでいるが、上空は青空で、奥秩父や八ケ岳の山々のみならず、遠く北アルプスやこの時期では滅多に見られない谷川連峰まですっきり見えた。 出発してから殆ど休んでなかったので、30分近く快晴無風の山頂で展望を愛でながら寛ぎ、正午過ぎに北尾根ルートを下る。 ロープは長・短40mあるが、行き詰ったらまた山頂まで戻る覚悟だ。 尾根はそれほど顕著ではないものの急斜面の踏み跡は明瞭で、赤テープのみならず所々の木々や岩にペンキマークもあり、全く迷うことなくあっと言う間に標高差で200mを下った。 その先でネットの情報どおり少し古いトラロープが急斜面に何本か張られていたので、間違いなく北尾根を下っているという確信を持てた。 山頂から標高差で300mほどの所の木に赤で×印が記され、その先に続く尾根を下っていかないよう示唆していた。 ここがいわゆる『焼岩展望台』という所らしく、木々の間から焼岩は見えたが、展望台という感じでは全く無い。 ここから踏み跡や赤テープは左方向に折れ、傾斜も明らかに緩くなった。 あともう少し下れば、標高的には先ほど登ったルートと出会うはずだが、この先から極端に踏み跡が不明瞭になるとは思えなかった。 間もなく尾根が顕著になり、木々の間から左手に尾根が2本見えたので、今朝登った尾根は北尾根ではなかったということがようやく分かった。 植林帯に入ると赤テープの間隔は長くなったが踏み跡は明瞭で、眼下には天丸橋付近の車道も見えるようになり、何とか北尾根を下ることが出来そうで安堵した。 なおも明瞭な踏み跡や赤テープを辿って行くと、足下に天丸橋の堰堤が見え始め、労せずして先ほどの『森林開発公団』の看板に降り立った。 看板の数m手前には小さな古い赤テープが枝に付けられていたが、看板の背後のビニール紐の方が新しく目立つので、登りではその尾根に引き込まれてしまったことが分かった。 足元の雪が無ければ、あるいは周囲がもう少し明るければ、北尾根の取り付きを間違うことは無かったかもしれないが、誤って残置されているテープ類を回収するか、『森林開発公団』の看板に矢印を表示すれば、登りでも全く問題なく北尾根を辿れることが分かり、当初釈然としなかった北尾根ルートの謎を解くことが出来た。 図らずも山頂からスムースに下れたので、予定よりもだいぶ早い1時半過ぎに天丸橋に戻った。 野栗沢の一軒宿である『すりばち荘』の温泉に貸し切りでのんびり浸かり、明日の山の計画を考えながら道の駅『しもにた』に向かった。


登山口の天丸橋


北尾根の取付きにあった古い看板


看板の背後にあった新しい水玉模様のビニール紐


様々な種類のテープに導かれて急斜面の尾根を登る


尾根は顕著になり、歩き易くなった


踏み跡の薄い急斜面をテープを頼りに登る


天丸山の山頂を望む露岩


露岩から見た天丸山(当初は大山と誤認していた)


切り立った岩場の下で引き返した


天丸橋から沢ルートを登る


薄暗く陽が当たらない沢や滝は全てが硬く凍りついていた


大山の山頂直下


大山の山頂直下から見た県境尾根の山々と両神山


静かな大山の山頂


山頂から見た帳付山


山頂から見た浅間山


山頂から見た谷川連峰


寒気の影響による不気味な白い雲


山頂から北尾根へ


北尾根の最初の急斜面の踏み跡は明瞭だった


赤テープのみならず所々の木々にペンキマークがあった


少し古いトラロープが急斜面に何本か張られていた


『焼岩展望台』の木には赤で×印が記され、その先に続く尾根を下っていかないよう示唆していた


尾根が顕著になる


植林帯に入ると赤テープの間隔は長くなったが踏み跡は明瞭だった


北尾根の取り付きのすぐ手前


北尾根の取り付き(北尾根へは古い看板の先にある岩の下に沿って登る)


趣のある『すりばち荘』の温泉


『すりばち荘』付近から見た大山(右)と焼岩(左)


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