2  0  1  3  年     1  月  

《 1日 》    硫黄岳

稲子湯 〜 本沢温泉 〜 夏沢峠 〜 硫黄岳  (往復)

   6日間の年末年始の休み中、一番良い天気予報は図らずも元旦だった。 冬型も一時的に緩むとの予報だったので、人出の多さを覚悟して久々に正月の八ケ岳に行った。 人出が一番少ないだろうと稲子湯から硫黄岳に登るルートを選んだが、夏沢峠の山びこ荘が正月営業していたため、年初から目標にしている静かな山行をすることは叶わなかった。 稲子湯の上のみどり池入口の登山口の駐車場に前泊し、翌朝5時半に出発。 気温はマイナス8度と正月にしては暖かい。 駐車場には車が10台ほど停まっていたが、皆昨日以前に出発している感じで、予想どおり日帰の登山者はいない。 積雪は他の山と同様にこの時期にしては多い。 しらびそ小屋までの登山道は昨年の台風で崩壊したため付け替えられていたが、トレースは完璧に出来上がっていて夏道と同じ感覚で歩けた。 もちろんアイゼンは不要だ。 労せずして7時前にしらびそ小屋に到着。 小屋の宿泊客は山に登らない人もいるようだった。 小屋の入口の温度計はマイナス13度と平年より少し暖かい。 小屋の前の雪に埋もれたみどり池からは、期待していた天狗岳は残念ながら見えなかった。 小屋の前で一息入れてから本沢温泉に向かう。 ここから先もトレースは完璧に出来上がっていた。 すぐ先に中山峠との分岐があるが、中山峠方面にも数日前までは無かったと思われる新しいトレースがあった。 時折陽射しは感じられるものの、上空には青空が無くヤキモキする。 本沢温泉までも夏道と同じ感覚で歩けたため、しらびそ小屋からコースタイムどおり1時間ほどで着いてしまった。 ここまでは風が全くなく快適だったが、上空の雲の流れは異常に速く、稜線は風が強いと思われた。 夏沢峠までもラッセルなしで行けそうなことが分かったので、天気の回復を待ちながら小屋の前のテーブルでゆっくり休憩する。 本沢温泉の宿泊客はしらびそ小屋以上に山に登らない人が多い感じだった。 8時半に本沢温泉を出発。 樹間から奥秩父の山並みが見えたが、眼前の硫黄岳は深い霧に包まれていた。 予想どおり夏沢峠までもトレースは完璧でワカンもアイゼンも不要だったので、本沢温泉から1時間ほどで着いてしまった。 峠には多くの登山者がいたので違和感を覚えたが、山びこ荘が営業していることが分かり納得した。 本沢温泉からではなく、殆どの人はアプローチの良い反対側の夏沢鉱泉から入山しているのだろう。 アイゼンを着けて準備をしている間にも、ジャケットをバリバリに凍らせながら次々と硫黄岳から下ってくる。 稜線の風は想像以上に強そうだ。 途中で引き返してきた人もいるようだった。 硫黄岳の山頂は依然として風雪で煙っていたので、30分ほど天気の回復を待って峠で待機していたが、埒があかないので、天気の回復を祈りながら登り始める。 この時間帯から登り始める人はもういなくなった。 峠の周囲の樹林帯を抜けるとすぐに強風が襲いかかってきた。 妻は新年早々の大チョンボでジャケットを忘れたため、目出し帽で顔を覆ったが、しばらくするとサングラスが曇って前が見えなくなり、補助ロープで引っ張りながら進む。 ただでさえ強風で煽られるのに、まるで盲人と一緒に登っている感じで遅々として歩みが捗らない。 登るにつれて視界が悪くなり、トレースはおろかアイゼンの爪跡すら見えない。 帰路のことを考えるとあまり無理をしない方が良いと思い始めた時、20mほどの間隔で50センチほどの鉄の杭が見られるようになった。 この杭は恐らく夏山シーズンにコマクサの保護のために張られているロープの支柱だろう。 これを唯一の頼りに登り続けると、山頂手前からは遭難防止の大きなケルンが続くようになった。 11時半にコースタイムでは夏沢峠から僅か1時間の硫黄岳の山頂に1時間半近くを要して着いた。 山頂は完全にホワイトアウトし、10m先も見えない状態だったので、図らずも山頂は私達だけで貸し切りとなった。 写真を1枚撮っただけでトンボ返りで下山する。 下りもケルンや鉄の杭が朧げに見える毎に一喜一憂しながら、盲人と化した妻を補助ロープで確保して下ったので、夏沢峠まで1時間近くを要した。 峠の手前でようやく一息つき、新年早々このルートと天気を選んでしまったことを悔やみ続けながら足早に往路を戻る。 まだ明るい3時半にみどり池入口の登山口の駐車場に着いた。


しらびそ小屋までの登山道はトレースが完璧に出来上がっていて夏道と同じ感覚で歩けた


しらびそ小屋


しらびそ小屋付近から見た稲子岳南壁


しらびそ小屋から本沢温泉へ


本沢温泉


深い霧に包まれた硫黄岳


本沢温泉から夏沢峠へ


正月営業していた夏沢峠の山びこ荘


天気の回復を祈りながら硫黄岳に登り始める


森林限界付近


サングラスが曇って前が見えなくなった妻を補助ロープで引っ張りながら進む


破天荒の硫黄岳山頂


奥秩父の山には青空が見える


しらびそ小屋から見た東天狗岳


2 0 1 3 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P