《 25日 〜 26日 》 南沢岳 ・ 烏帽子岳 ・ 野口五郎岳 ・ 真砂岳 ・ 南真砂岳
高瀬ダム 〜 烏帽子小屋 〜 南沢岳 〜 烏帽子岳 〜 烏帽子小屋(テント泊) 〜 三ツ岳 〜 野口五郎岳 〜 真砂岳 〜 南真砂岳 〜 湯俣温泉 〜 高瀬ダム (周回)
週末の用事が延期になり、急遽山に出掛けることになった。 先の大滝山同様、北アルプスでまだ辿ったことのないルートを地図で探していると、高瀬ダムから湯俣温泉経由で裏銀座の縦走路と合流する『竹村新道』が目に留まり、高瀬ダムを起点に周回することにした。 竹村新道は長いが、途中に山小屋や水場も無いので、この時期でも静かな山歩きが出来そうだ。 長野道の筑北PAで前泊し、翌朝登山口となる七倉山荘前の駐車場に向かう。 予想どおり七倉山荘の駐車場は7分くらいの入りだった。 駐車場で支度をしていると、突然山仲間の西さんに声を掛けられた。 西さん&セッちゃんは、セッちゃんだけが未踏破の船窪小屋から蓮華岳を縦走するとのことで、すでにミニバイクを下山口の扇沢に仕込んできたとのことだった。 駐車場で高瀬ダムへのタクシーの相乗り客をしばらく待ったが、すでに烏帽子小屋方面に行く人は6:30のゲートの開門を待って出発したようで、駐車場にいるのは船窪小屋方面に登る人だけだった。 仕方なく西さん&セッちゃんに見送られてタクシーに乗り、高瀬ダムへ向かう。 料金は意外と安く2000円だった。 天気は良く、ダムからは烏帽子岳の岩峰のピークが見えた。 予定よりも少し遅れダムを8時前に出発。 今日は夕方から雷雨の予報が出ていたので、昼過ぎまでに烏帽子小屋に着けば良いと思っていたが、以前から登り易かったブナ立尾根はさらに登山道が整備され、ゆっくり登った割には正午に烏帽子小屋着いてしまった。 幕場にはすでに10張りほどのテントの花が咲いており、隣は若いW大の学生さん達のパーティーだった。 天気は生憎の高曇りだったが、予定よりも早く着いたので、テントを設営してから明日の三ツ岳方面とは反対の縦走路を烏帽子岳まで行くことにした。 幕場から30分ほどで前(ニセ)烏帽子岳を越え、尖った烏帽子岳の岩峰の基部に着いたが、天気はまだ持ちそうだったので、烏帽子岳の頂はパスしてその先の南沢岳まで足を延ばすことにした。 烏帽子田圃と呼ばれる鞍部のお花畑のチングルマはすでに秋色に変わり、イワギキョウやリンドウなどの花が咲き始めていた。 南沢岳直下の白い砂礫の斜面にはまだコマクサが辛うじて可憐な花を咲かせていた。 幕場から緩やかなアップダウンを繰り返し、1時間半ほどで静かな南沢岳の山頂に着いた。 南沢岳を訪れたのは今回で3度目だが、その頂には独特の雰囲気が漂い、展望もユニークなので、北アルプスの中では私にとってお気に入りの山だ。 久々に再訪出来たことを喜んでいたのも束の間、先日病院に見舞いに行ったばかりの同期入社の同僚が亡くなったとの電話があり愕然とした。 ケルンを積んで同僚の冥福を祈りながら山頂を辞すると、予報に反して天気が好転し、夕立の心配は全くなくなった。 帰路は縦走路から外れた烏帽子岳の頂も踏んだので、幕場への帰りは5時になってしまった。
涼しくて快適な一夜を過ごし、翌朝は5時に幕場を出発。 天気は予想以上に良く、空には雲一つない。 間もなくご来光となり、眼前の三ツ岳の山肌がオレンジ色に染まる。 西さん&セッちゃんもこの素晴らしい風景をどこかで眺めていることだろう。 三ツ岳の山頂は縦走路から少し離れているので、踏み跡を見つけて辿らなければならないが、周囲の山々の展望に目を奪われてうっかり通過してしまった。 その先の三ツ岳の西峰から、眼前の水晶岳や赤牛岳、そしてその奥の薬師岳を眺めながら至福の時を過ごす。 幕場や山小屋にはそれなりに登山者はいたが、行先や行動する時間帯がまちまちなので、前後に登山者の影は薄い。 今日は急ぐ旅ではないので、清々しい朝の山々の展望を充分に楽しむ。 三ツ岳の西峰から僅かに下り、野口五郎岳への緩やかな登りに入る。 逆光ではあるが、右手には餓鬼岳から燕岳、大天井岳を経て槍へと続く表銀座の山並みも一望される。 野口五郎小屋で水を買い(リッター200円)、指呼の間の山頂でゆっくり展望を愛でながら寛ぐ。 夏の北アルプスの喧噪もなく、これから向かう真砂岳の先には鷲羽岳も見えるようになった。 いつまでも佇んでいたい場所だが、重い腰を上げて真砂岳に向かう。 三ツ岳と同様真砂岳の山頂も縦走路から少し離れているので、湯俣温泉へ下る竹村新道の分岐の手前から踏み跡を辿って山頂に向かう。 すでに槍や穂高には雲が掛かり始めたが、鷲羽岳が大きく望まれ、それまで見えなかった黒部五郎岳や笠ケ岳も顔を出した。 真砂岳の山頂で最後の追悼のケルンを積み、ほぼ予定どおりの9時半に山頂を辞した。 山頂から尾根通しに竹村新道へ下る踏み跡も見られたが、一旦縦走路に戻ってから標識を確認して分岐を左に折れる。 標識には『湯俣温泉まで4時間30分』と記されていた。 裏金座の縦走路も予想以上に静かだったが、竹村新道には登山者の気配が全く感じられなかった。 真砂岳との鞍部から100m近い登り返しがあったが、分岐から40分ほどで南真砂岳に着いた。 南真砂岳も登山道が山頂を通っておらず、湯俣温泉からの登りだと気が付かずに通り過ぎてしまうだろう。 全くの寂峰ではあるが、鷲羽岳を眺めるには一番良い場所かも知れない。 最後の展望のピークとなる南真砂岳からは眼下に前山的な湯俣岳を見ながら急降下する。 意外と早く湯俣温泉へ下れるのかと思ったが、再び100mほどの登り返しがあり骨が折れる。 逆方向で高瀬ダムから湯俣温泉を経て竹村新道を登り、裏銀座の縦走路に合流してから最初の幕場まで行くのは大変だろう。 すれ違った登りのパーティーは一組だけだった。 南真砂岳から1時間少々で湯俣岳に下る。 山頂は鬱蒼とした樹林に囲まれ、ただの通過点という感じだが、長い竹村新道のコースタイムのチェックポイントとしては貴重な存在だ。 湯俣岳から先はブナ立尾根と同じくらい登山道が良くなり、途中の展望所からは槍へと続く北鎌尾根の岩峰が雲間に望まれた。 湯俣温泉が北鎌尾根のゲートウエイだということを改めて感じる。 足を労わりながらゆっくり下ったので、ほぼコースタイムどおりの4時間15分で竹村新道を下り、湯俣温泉の一軒宿の晴嵐荘に着いた。 宿のご主人としばらく歓談し、小さな露天風呂で足湯を楽しむ。 このままここで泊まれれば最高だが、現役の週末ハイカーにはそれは叶わない。 高瀬ダムまでは高瀬川の右岸に沿って延々と歩く。 変化のない退屈な道だが、秋の紅葉の時期なら楽しめるかもしれない。 昔の昭文社の登山地図には湯俣温泉から高瀬ダムまでのコースタイムは3時間半と記されていたが、最新の地図では2時間50分に改定された。 実際歩いてみると休憩なしで2時間30分ほどで、うち未舗装の狭い林道が1時間30分、舗装された車道が約4.5キロ(トンネル約1.5キロ)で1時間だった。 逆方向でも休憩なしなら3時間は掛からないだろう。 4時半過ぎに高瀬ダムに着き、夏場は6時までダムに常駐しているというタクシーに乗って七倉に下った。