2  0  1  2  年     7  月  

《 28日 〜 29日 》    金山岩 ・ 十石山 ・ 硫黄岳

平湯 〜 金山岩 〜 十石峠避難小屋(泊) 〜 金山岩 〜 硫黄岳 〜 平湯  (往復)

   土曜日は夕方から、日曜日は午後から雷雨という不安定な予報だったので、平湯から乗鞍岳の衛星峰とも言える十石山と硫黄岳に避難小屋泊で登った。 このうち新たに登山道として整備された硫黄岳から平湯までの間は、専ら乗鞍スカイラインをバスで畳平に登った後の下山ルートとして利用されているらしい。 長野道の梓川SAで前泊し、翌朝登山口の平湯に向かう。 安房トンネルの料金所を出てすぐ左のトイレのある駐車場に車を停め、そこから数分先にある平湯大滝への車道の入口で高度計の標高を1300mにセットし、7時半に平湯温泉スキー場跡地のスロープをリフトに沿って登り始める。 天気は予報どおりの曇天で陽射しは弱いが蒸し暑い。 スキー場には観光用?の羊が十数頭群れていた。 登山口には標識は無く、雑草が生い茂ったスキー場のスロープを1時間ほど登ると左からの林道と合流し、その先で砂防工事が行われていた。 朽ちたレストハウスのあるリフトの終点からさらに少し登るとゲレンデトップとなり、ようやく明瞭な登山道と登山口を示す標識があった。 先ほどまでの雑草が生い茂ったスキー場の斜面とはうって変って登山道は下草が刈り払われていた。 樹林帯で展望は無いが、かえって涼しくてありがたい。 緩やかにアップダウンを繰り返していくと登山道の傍らに『白猿ケ池』という名の小さな池があったが、水面には油膜が張っていて期待外れだった。 尾根が次第に顕著になってくると所々で樹間から穂高や明神、そして焼岳が霞んで望まれた。 登山道が登り一本調子になると、ルート上の唯一の水場があった。 辿る人が少なくネットの情報でも水場の状態が不明だったので、下からペットボトル2本の水(4L)をボッカしてきたが、水は小沢のように勢いよく流れていて、登山道からもはっきり音が聞こえた。 秋には涸れるかもしれないが、少なくともお盆くらいまでは水は期待出来そうな感じがした。 冷たい水で喉を潤して大休止する。 ここまで駐車場から3時間ほどだった。 水場から登山道はさらに急登となり、間もなく下ってきた軽装の7人のパーティーとすれ違った。 今日山中で出会った最初で最後のパーティーだった。 水場から1時間弱で十石山と硫黄岳を繋ぐ稜線の峠のような所に着き、雲が多めながらも初めて剣ケ峰(乗鞍岳)が見えた。 そこはテントがいくつか張れるほどの広場になっていて、乗鞍権現社の立派な祠があった。 ここから金山岩を経て十石山へ向かう登山道は荒廃が進んでいると思われたが、意外にもその傍らに『十石山・白骨』方面と記された比較的新しい標識があった。 予想どおり乗鞍権現社から金山岩への道に入ると急に藪っぽくなったが、40分ほどで辿り着いた岩の積み重なった顕著なピークの金山岩(2532m)からは360度の展望が得られた。 金山岩は訪れる人も少なく、正式な山名や山頂標識もない不遇な山だ。 ここから十石山までは這い松の藪漕ぎが延々と続いた。 足元の登山道が明瞭なのが救いだが、背丈ほどある這い松とシャクナゲをかき分けながら進むため、指呼の間の十石山までの歩みは遅々として捗らない。 30分ほどで妻から泣きが入る。 緩やかなピークを一つ越えると藪の勢いも少し衰えたような感じになったが、今度は崩壊が進む痩せ尾根の通過が煩わしくなる。 金山岩から1時間ほどで這い松に埋もれた地味な十石山の頂に着く。 眼前に十石峠避難小屋が見えたが、明日もこの藪漕ぎが待っていると思うと今から気が重い。 2時過ぎに避難小屋に到着。 十石山には7年前の4月に白骨温泉からスキーで登り、その時見た山頂直下の避難小屋にはいつか再訪したいと機会をうかがっていたが、水場が無いという理由で計画を実行出来ずにいた。 今回は図らずも盛夏にここに泊まることになったが、意外にも小屋の入口には屋根から雨水を溜める大きなポリバケツが設置され、水が豊富に蓄えられていた。 マイナーな小屋ゆえ予想どおり中には誰もいなかった。 二階建ての小屋は想像以上に広く30人ほどは楽に泊まれそうだった。 入口付近にはドアのある6畳ほどの個室があったので、そこを利用させてもらう。 銀マットとマットレスがあり、まるで山小屋のような快適さだ。 小屋の中を隅々まで見て回ると、シュラフなどの寝具・鍋釜・食器・炊事道具・燃料・調味料・お酒・燃料・古い雑誌・文庫本などが置かれ、やはり山小屋のようだった。 曇天のためすっきりとは望めなかったが、小屋の傍らから穂高や焼岳、そして乗鞍の山々が良く見えた。 快適な小屋で20年以上前の古いヤマケイの雑誌などを読んで寛いでいると、予報どおり5時前から雷鳴が轟き、土砂降りの雨となった。 テントだと心細いが、小屋の前には避雷針もあり心強い。 今日はもう貸し切りだと思っていると、意外にも雨の中を5人の中高年の男女パーティーがやってきた。 話を伺うと、今朝はるばる神戸から来られ、白骨温泉からの往復でこの山だけを登りに来られたとのことだった。 その後も雨は止まず、期待していた夕焼けショーは叶わなかった。

 

平湯温泉スキー場跡地のスロープをリフトに沿って登る


雑草が生い茂ったスキー場のスロープ


朽ちたレストハウスのあるリフトの終点


ゲレンデトップから始まる登山道と登山口を示す標識


水面に油膜が張っていた『白猿ケ池』


樹間から見た硫黄岳


ルート上唯一の水場の水は小沢のように勢いよく流れていた


乗鞍権現社の立派な祠


乗鞍権現社から見た硫黄岳(中央)と剣ケ峰(左奥)


岩の積み重なった金山岩の山頂直下


金山岩の山頂付近から見た十石山と山頂に建つ十石峠避難小屋


這い松の藪漕ぎとなった十石山への稜線から見た金山岩


十石山への稜線から見た剣ケ峰


十石山への稜線から見た十石山


這い松に埋もれた地味な十石山の頂


十石山の山頂付近から見た十石峠避難小屋


白骨温泉側から見た十石峠避難小屋


小屋の入口には屋根から雨水を溜める大きなポリバケツが設置されていた


避難小屋は想像以上に広かった


入口付近にはドアのある6畳ほどの個室があった


避難小屋の傍らから見た穂高連峰


   静かで快適な個室での一晩を過ごし、翌朝5時に避難小屋を出発。 朝焼けも僅かに見られたが、昨夜の雨の影響で空気は重い。 夏山では至福の時間帯だが、のっけから雨具の上下を着込んで昨日の雨でたっぷり水を含んだ這い松の藪を漕ぐ。 水や食料が無くなり5キロほどザックが軽くなったことで、昨日よりもいくぶん楽に感じるのが救いだ。 間もなく雲間からのご来光となり、朝陽を浴びた剣ケ峰(乗鞍岳)が見えた。 小屋から休まず1時間ほど藪を漕ぎ続けて金山岩に着く。 金山岩からは剣ケ峰はもちろんのこと、昨日は雲に隠れていた四ツ岳がすっきり望まれた。 これから向かう硫黄岳はこれらの山々に比べると小ぶりに感じる。 藪漕ぎで疲れた体を充分休め、硫黄岳方面への縦走路と登山口の平湯との分岐となる乗鞍権現社に下る。 乗鞍権現社に不要な荷物をデポし、片道1時間ほどの硫黄岳を往復する。 乗鞍権現社から乗鞍スカイラインの桔梗ケ原までの縦走路は藪のない良い道だ。 眼前の四ツ岳がますます迫力を増してくる。 登山道がない山なので、来年の春に是非スキーで辿りたいと心に誓った。 残念ながら予報どおり天気は早くも下り坂となり、山々には雲が湧き始めた。 意外にも登山道は硫黄岳の山頂直下を巻いていて、這い松に覆われたピークには登れなかった。 長居は無用とトンボ返りで乗鞍権現社に引き返す。 乗鞍権現社を9時半に発ち、予定どおり正午ちょうどに平湯の駐車場に着いた。 結局今日は誰とも出会うことなく、目論見どおり地味ながら静かな山行が楽しめた。


雲間からのご来光


雨具の上下を着込んで昨日の雨でたっぷり水を含んだ這い松の藪を漕ぐ


藪尾根から見た剣ケ峰(乗鞍岳)


藪尾根から見た金山岩


金山岩の山頂


金山岩から見た四ツ岳


金山岩から乗鞍権現社へ下る


乗鞍権現社付近から見た硫黄岳(左)と四ツ岳(右)


硫黄岳の山頂手前


硫黄岳の山頂手前から見た四ツ岳


登山道は硫黄岳の山頂直下を巻いていた


乗鞍権現社から登山口の平湯へ下る


2 0 1 2 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P