《 15日 》 谷川岳 ・ 一ノ倉岳 <スキー>
 谷川岳ロープウェイ駅 〜 天神平 〜 谷川岳 〜 一ノ倉岳 〜 芝倉沢 〜 土合橋 (周回)
山スキーを始めた頃から是非行きたいと願っていた谷川岳(一ノ倉岳)の芝倉沢をスキーで滑った。 芝倉沢は7年前に一度計画したものの天気に恵まれず、途中の谷川岳トマの耳から西黒沢源頭・天神尾根を経て熊穴沢を滑るルートへの変更を余儀なくされたので、今回はそのリベンジが叶ったとも言える。 残雪期のザラメ雪が好みの私にとってこのルートのベストシーズンは3月下旬から4月上旬とみていたが、その時期の谷川岳周辺は好天の日が少なく、その後何年も計画を実施することが出来なかった。 今年も3月中には行けなかったが、3月の気温が低く雪も平年並みに降っていたので残雪量は多く、しかも先週と前日にも雪が降ったので4月中旬でも充分楽しめると判断してトライすることにした。 道の駅『みなかみ町水紀行館』に前泊し、翌朝登山口となる谷川岳ロープウェイ駅に向かう。 ゴンドラの始発は7時で、切符も7時からの発売だったが、切符売り場には50人ほどの列しかなく、少し拍子抜けした。 ゴンドラの車窓からは新雪に輝く谷川岳が綺麗に見え、予報どおりの快晴の天気となった。 全く混雑することなく7時半には天神平駅に着いた。 周囲を見渡すと山スキーヤーが10人ほど見られ、後は殆どが登山者だった。 大勢の登山者により天神尾根へはすでに階段状のトレースがついていたので、アイゼンを着けスキーを担いで登ることにしたが、結局そのまま一ノ倉岳の山頂まで担いで登ることになった。 逆に私達以外は皆、谷川岳までシールで登っていた。 30分足らずで天神尾根に上がると、尾根には風もなく雪も締まったままでとても歩き易かった。 左手には阿能川岳や小出俣山、俎ー、オジカ沢ノ頭、遠くに浅間山、右手には白毛門や笠ケ岳、武尊、遠くに至仏など周囲の山は全て見える。 途中の尻出岩もまだ雪で覆われていたので渋滞することはなかった。 1800m辺りから昨日の新雪がうっすらと積もり、山肌が一層白く輝きを増した。 西黒沢源頭の広いバーンはまだ誰も滑っていない。 滑るだけが目的ならここが一番良いだろう。 妻の体力温存のため意識的にペースを落として登ったが、トレースと雪の状態が非常に良かったので、天神平駅から2時間半ほどで谷川岳のトマの耳に着いた。 山頂はすでに大勢の登山者で賑わっていたので、少し離れた所で大休止する。 予想どおり万太郎方面に向かう山スキーヤーも2〜3人見られた。 10時半にトマの耳を出発し、オキの耳を経て一ノ倉岳に向かう。 平標山までの主脈上の山々はもちろん、巻機山や遠く越後三山、平ケ岳、燧ケ岳なども良く見える。 ここから先は山スキーヤーの世界となり、トレースは先行パーティーの足跡だけになった。 稜線の積雪はまだ多く、雪庇も大きいので4月中旬という感じは全くしない。 一方、気温は平年並みに暖かいので、所々で股まで雪を踏み抜く。 スキーを担いで雪を踏み抜くのも滑稽だが、シールで歩くことが相応しくない稜線だ。 トマの耳から4人のパーティーが先行していたが途中で追い越す。 稜線の先には一ノ倉岳を登っている先行者が3人見えた。 稜線の鞍部から一ノ倉岳へのやや急な登りに入ると再び雪が締まって登り易くなり、予想よりも少し早く正午に一ノ倉岳に着いた。 雪庇の張り出した山頂の左側をトラバースして200mほど進むと、天神平を同時にスタートした2人のパーティーが準備を終えて滑り出すところだった。 ラッセルのお礼を言うと、指呼の間の茂倉岳の山頂に見える単独の登山者が終始先行してトレースを付けてくれたとのことだった。 芝倉沢側の雪庇の張り出しは小さく、茂倉岳との鞍部よりも少し手前におあつらえ向きの切り裂き(ドロップポイント)とその下に芝倉沢源頭の全容が見渡せる広いテラスがあった。 間もなく4人のパーティーが到着し、のんびりと山々を眺めながら大休止していた私達よりも一足早く滑り出していった。 意外にも後ろからまだ数パーティーがやってくるのが見えたので、重い腰を上げ1時前に滑り出す。 沢の源頭は想像していたよりも狭く感じたが、もし7年前にここに来ていたら全く違った印象を受けただろう。 このルートの特徴とも言える通称“ノド”と呼ばれる沢が急に狭まる所が眼下に見えた。 ノドはあまり歓迎出来ないが、逆に沢の源頭のどこを滑ってもルートは間違いようがない。 滑り出しの斜面は右側の方が傾斜が緩くシュプールも少なかったので、右側から回り込むようにノドをめがけて滑る。 上から見た時はノドまですぐに着いてしまうだろうと思われたが、それなりに滑り甲斐があって楽しめた。 次のパーティーが滑ってくる気配はなく、図らずも終始私達だけで貸し切りとなった。 上部は新雪が僅かに乗っていたのでとても気持ち良く、中間部からは次第に雪が重たくなり、ノドの手前からはスキーの曲りが悪くなった。 それでもアイスバーンやモナカ雪、そしてスキーが刺さるようなことは全く無かった。 ノドにはデブリの跡が見られたが、右岸をトラバースすれば安全に通過出来ることが分かった。 ノドを過ぎると今度は“S字”と呼ばれる幅の狭い沢となる。 今の時期はデブリがあるので余計狭く感じる。 雪質は次第に悪くなっていくが、“消化試合”という感じではなく、残雪期にしか辿れない所を滑っているという満足感の方が勝っている。 また午後は順光になるため、沢は明るくロケーションも良かった。 デブリはそこら中に見られたが、この時期だから仕方がない。 沢は意外と長く、もう終わるかと思うとまたその先に続きが現れ、大きく右に折れる所にあったデブリ地獄を過ぎてからもまだ続いた。 傾斜が緩むと一気に視界が広がり、沢の取り付きの疎林の雪原に飛び出した。 ここからは清水峠への登山道と合流し、雪に埋もれた成蹊大学の虹芝寮の脇を抜けて湯檜曽川沿いを進む。 雪解けによる渡渉を懸念していたが、一か所だけ飛び石伝いに渡ったのみで、ゴールの土合橋まで雪は途切れることなく繋がっていた。 空身で10分ほど車道を登り、車を停めた谷川岳ロープウェイ駅に3時に着いた。