2  0  1  2  年     4  月  

《 8日 》    黒滝山 ・ 大佐飛山

巻川林道 〜 黒滝山 〜 大佐飛山  (往復)

   大佐飛山(1908m)は男鹿山塊の最高峰として隣接する男鹿岳と共に愛好家に親しまれている山である。 特に大佐飛山は近年ネットの情報と昨今の登山ブームにより残雪期に登る人が急増したようで、ピーク時となる4月中旬から下旬にかけての週末には数十人が入山することも珍しくないようだ。 私もこの山に登るべく、7年前の晩秋に下見を兼ねて大佐飛山へのルートの中間点にある黒滝山(1754m)に登ったが、その先の西村山へのルートファインディングに手を焼き敗退した。 無雪期・積雪期を問わずここが一番迷いやすいことはその後に知った。 当時はその黒滝山すらもマイナーで、一番近い登山口へのアプローチの林道(巻川林道)の存在も知らなかったが、帰路に登山口の確認をしてリベンジを誓った。 今年は例年よりも積雪が多いので、前日の明るいうちに巻川林道に入り、通称“ぶらぶら梯子”と呼ばれる送電線の巡視路を兼ねた登山口まで車で入れるかどうかを確認する。 林道はまだ所々に雪が残っていたが、何とか通行することが出来た。 以前辿った麓の百村の集落の光徳寺を起点とするルートと林道との出合からの登山口に車が1台停まっていた。 人影は無かったので、今日入山しているパーティーがいることが分かった。 そこから1キロほど先にある送電線の下の“ぶらぶら梯子”まで車で入れたので、登山道の下見をしてから近くの路肩に車を停めてそこに泊まった。 他に車はなく、結局その後も車は上がって来なかった。 翌朝3時に起きると予報どおり小雪が舞っていた。 予報では未明は雪だが、昼前から移動性の高気圧に覆われるとのことだったので、意を決して予定どおり4時に出発する。 820mの登山口には残雪は無いが、昨夜からの新雪が登山道にうっすらと積もって滑り易かった。 急坂を15分ほど登ると光徳寺からのルートと合流し、最初のピークの百村山(1085m)に向かう。 春のカタクリで有名な百村山だが、意外にも百村山の手前から残雪が現れ、山頂ではまだ30センチもの積雪があった。 百村山までは尾根も顕著で昨日入山したパーティーやそれ以前の古いトレースもあったので、登山口から40分ほどで順調に着いた。 間もなく夜が明けたがご来光もなく天気は冴えない。 目標の大佐飛山までは、百村山・三石山・サル山・山藤山・黒滝山・西村山・大長山という7つのピークを越えていく。 次のピークの三石山までも順調に登ったが、三石山を過ぎると木々は疎らになり、新雪の量も多くなってトレースが部分的に途切れるようになった。 黒滝山までの登山道は明瞭なのが災いしてテープ類はあまり無い(有っても一部は雪に埋もれている)ので、ルートファインディングに時間が掛かる。 3つ目のピークのサル山付近では青空も覗くようになったが、一旦止んだ小雪が再び舞ったりしてなかなか天気が安定しない。 標高に比例して新雪の量は増え、トレースは完全に消えてしまった。 尾根の幅も広くなってきたので、ルートファインディングにさらに時間が掛かるようになった。 新雪が軽いのでラッセルは今のところ苦にならないのが救いだ。 4つ目のピークの山藤山からは大佐飛山の山頂の一角が辛うじて望まれたが、その頂はまだまだ遠い。 中間点となる黒滝山への登りは急坂が続いたが、新しいトラロープに助けられる。 新雪は10センチを超えるようになり、ここから先の状況によっては登頂が少し怪しくなってきた。 黒滝山まではコースタイムを少し超える4時間ほどで行けると考えていたが、結果的にここが一番の核心になってしまった。 黒滝山の山頂手前からは、膝下のラッセルになってしまったので、早くもスノーシューを履く。 意外にも黒滝山の山頂直下で2張りのテントと5人の登山者に出会った。 雑談を交わすと、昨日林道で見た車のパーティーであることが分かった。 大佐飛山には登らずにこれから下山するとのことだったが、大佐飛山を目指す他のパーティーがこの先で幕営しているとの情報を得た。 予定よりも少し遅れて8時過ぎに黒滝山の山頂に着く。 当然のことながら、山頂の雰囲気は無雪期とは全く趣を異にする。 以前敗退した西村山へは笹藪や背の低い灌木が全て雪に埋まっていたので、どこでも歩けそうだった。 黒滝山までとは逆にテープ類は所々にあり、しかも残雪期用に目線の高さにあるのでルートファインディングはさほど困難ではない。 西村山との鞍部まで下ると、左の樹林帯からの真新しい立派なトレースと合流した。 このパーティーは全員がスノーシューを履いているようで、図らずもここからはラッセルやルートファインディングの必要は無くなった。 天気も予報どおりに青空が少し見え始め、尻上りに良くなっていくような期待が持てた。 西村山への登りからは雪庇の発達した緩やかで顕著な尾根を歩くようになり、開放感に溢れた快適な登高となった。 先行パーティーの立派なトレースに助けられ、9時半過ぎに最後のピークとなる大長山(1866m)に着く。 山頂直下からは大佐飛山が眼前に大きく望まれた。 午前中に登頂出来る目処が立ったので20分ほど大休止する。 那須連峰は未だ雲が取れないが、日留賀岳や鹿又山が良く見える。 周囲の山々も新雪を身に纏い、冬山のような景色だ。 大長山からは気持ちの良い無木立の尾根を1813mの鞍部に向けて緩やかに下る。 数時間前に積もったばかりの新雪の眩い輝きが足取りを一層軽くする。 天気は時間が進むにつれて回復し、間もなく鶏頂山や日光の山々も見えるようになった。 1813mの鞍部から大佐飛山への最後の登りに入ると、先行していた3人のパーティーが下ってきたので、トレースのお礼を言った。 このパーティーは黒滝山付近で幕営していたパーティーだと思ったが、下山後にネットの情報で鴫内山(1413m)方面から日帰りで登ってきていたことが分かった。 11時前に待望の大佐飛山の山頂に着く。 山頂の木々に付けられた山名板の高さから見て積雪はまだ2m近くある感じだ。 山頂の北側に回り込むと男鹿岳や会津の山々が一望出来た。 風も無いので1時間近く展望を愛でながらゆっくり寛ぐ。 山頂に戻ると、スキーを履いて登ってきた2人のパーティーと出会った。 正午前に山頂を辞するとすぐに単独の方が登ってきたので、今日は私達を含めて8人が大佐飛山に登ったことになる。 最後に出会った単独の方は、今回が8回目の登頂だったことが下山後にやはりネットの情報で分かって驚いた。 天気はますます良くなり、後ろ髪を引かれる思いだ。 大佐飛山から黒滝山の間の踏み固められたトレースは登山道よりも明瞭で歩き易く、各ピークへの登り返しも全く苦にならなかった。 南面が開けた黒滝山の山頂からは那須野原が眼下に一望され、まだ陽の高い4時半に車に戻った。 春の残雪を踏んで登るつもりが、思わぬ新雪により山々の景色に一層磨きがかかり、記憶に残る山行となった。


巻川林道の通称“ぶらぶら梯子”と呼ばれる送電線の巡視路を兼ねた登山口


光徳寺からのルートと合流し、最初のピークの百村山に登る


三石山を過ぎると木々は疎らになり、新雪の量も多くなってトレースが部分的に途切れるようになった


3つの目のピークのサル山の山頂


黒滝山への登りは急坂が続いたが、新しいトラロープに助けられる


黒滝山直下の登り


無雪期とは全く趣を異にする黒滝山の山頂(帰路の撮影)


西村山へは笹藪や背の低い灌木が全て雪に埋まっていた


西村山との鞍部まで下ると、左の樹林帯からの真新しい立派なトレースと合流した


西村山の山頂


西村山から大長山の間の雪庇の発達した尾根


西村山から大長山へは開放感に溢れた快適な尾根の登高となる


西村山から大長山へは開放感に溢れた快適な尾根の登高となる


大長山の山頂直下から見た大佐飛山


大長山からは気持ちの良い無木立の尾根を1813mの鞍部に向けて緩やかに下る


1813mの鞍部付近から見た大長山


大佐飛山への最後の登りで先行していた3人のパーティーとすれ違う


待望の大佐飛山の山頂


大佐飛山の山頂の北側から見た男鹿岳


大佐飛山からの下りから見た大長山


1813mの鞍部から大長山へ登り返す


大長山へ登り返しから見た大佐飛山


大長山へ登り返しから見た那須連峰


大長山へ登り返しから見た日留賀岳(左)と鹿又山(右)


芸術的な尾根の雪庇


樹林の中の大長山の山頂


西村山から黒滝山へ


南面が開けた黒滝山の山頂からは那須野原が眼下に一望された


黒滝山から山藤山へ下る


山藤山へ登り返す


山藤山からサル山へ下る


サル山から三石山へ下る


2 0 1 2 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P