《 20日 》 社山
銅親水公園 〜 社山 (往復)
7年前の晩秋に中禅寺湖畔から阿世潟峠に登り、社山から黒檜岳へと縦走した時に、阿世潟峠から足尾方面に下る古道があることが分かり、いつかこの道を辿ってみたいと思っていた。 その後この古道のみならず、足尾方面から社山へ直接登る“社山南稜”と呼ばれる尾根ルートが愛好家(篤志家?)の間で登られていることがネットの情報で分かった。 ネットの記録には無雪期に中禅寺湖畔へ縦走したり、阿世潟峠を経て周回しているものが主だったが、笹原が生い茂る白樺の疎林の尾根を積雪期にスノーシューで往復するのが面白いと思って機会をうかがっていた。 道の駅『富弘美術館』に前泊し、翌朝登山口の銅(あかがね)親水公園の駐車場に移動して6時半過ぎに出発。 予想どおり他に愛好家の姿はない。 久々に天気予報以上の良い天気になった。 一昨日のルートミスの反省から今回は地形図の縮尺を1万分の1の見やすいものにした。 銅親水公園から通行止めとなっている治山工事用の車道を阿世潟峠方面へ25分ほど歩くと久蔵川に架かる橋があり、そのすぐ先が南稜への取り付きになっていて、ネットの情報どおり錆びた古い看板があった。 取り付きの標高は800mほどだったので、1826mの社山までの単純標高差はほぼ1000mということになる。 南稜には1012m・1182m・1568mという3つの顕著なピークがあるが、今回は最初の1012mのピークは通らず、次の1182mのピークを目指して尾根筋を登る。 取り付き付近には雨量計へと導く新しい標識がいくつかあったが、これは無視して地形図を片手に登り易い藪尾根を小さくジグザグを切りながら直登気味に登る。 踏み跡やテープ類が殆ど無かったのでかえって迷わずに済む。 南斜面の藪尾根は明るく雪も全くなかったのでルートファインディングは意外と楽だったが、雪があったり凍っていたりすると傾斜がきついのでかなり厄介だろう。 要所要所の枝などに最小限のテープを貼っていく。 1000mを過ぎると藪尾根は痩せて顕著になり、獣道が登山道のようになっているところもあった。 1182mのピークが近づくと木々が疎らになり、登山口の銅親水公園とその背後の備前楯山が見え、正しいルートを登っていることが分かった。 多少の試行錯誤はあったものの、取り付きから2時間半足らずで松の木が茂る南稜の1182mのピークに着いた。 眼前には庚申山や皇海山が望まれ、陽光に恵まれた暖かいピークで一休みする。 猿や鹿が飛び跳ねる姿がそこら中で見られ、山頂付近までそれは続いた。 1182mのピークから先は雪となり、標高に比例して積雪を増していった。 愛好家は稀だろうが、尾根の一番歩き易いところには立派な鹿のトレースがついていた。 地形図どおり南稜の尾根は緩やかで、かつ、葉の落ちたこの時期は見通しが良いので、天気さえ良ければ道に迷うような所は無かった。 右手に見える半月山がとても立派に見えて面白い。 どこまでも歩いて行きたくなるような明るい癒し系の白樺林が続く。 この白樺林に霧氷の花が咲いたら、それはもう桃源郷の世界となるだろう。 相変わらず猿やシカが多く、何度となく目の前を通り過ぎていく。 1568mのピークの手前で樹林の禿げた所があり、社山の山頂が望まれた。 あいにく低気圧が通過中で、上空には寒々しい白い雲が発生しているのが玉にキズだ。 1568mのピークの直下から気温の上昇で足が雪に取られるようになったので、スノーシューを履く。 ピークまでは急登だったが、スノーシューでの登りは快適だった。 1568mのピークからは社山の山頂が指呼の間に望まれ、一旦少し下ってから登り返す。 山頂直下の大きな岩が積み重なっている所までは再び急登となったが、雪の状態はベストでスノーシューでの快適な登りが続く。 左手には白根山や錫ケ岳が見えてくる。 終始ゆっくりしたペースだったが、予定よりも早く11時半に社山の山頂に着いた。 意外にも山頂にはまだ1m近くの雪があり、山名標識が僅かに雪の中から顔を出していた。 木々の間からは男体山や太郎山、そして眼下に中禅寺湖が望まれた。 山頂から少し阿世潟峠側へ下った見晴らしの良い所で40分ほど休憩してから往路を戻る。 天気は尻上りに良くなり、下ってしまうのがもったいなく思えた。 もちろん下りも私達だけで貸し切りだ。 1182mのピークから取り付きまでの藪尾根の下りも記憶に新しく、自分の付けたテープにも助けられ、迷うことなく2時半に取り付きに着いた。 社山南稜は思ったよりもコンパクトだったが、数年後にまた今日の状況との変化を楽しみつつ辿ってみたいと思った。