《 19日 》 竜門山 ・ 西朝日岳 ・ 大朝日岳 ・ 小朝日岳
日暮沢 〜 清太岩山 〜 竜門山 〜 西朝日岳 〜 大朝日岳 〜 小朝日岳 〜 古寺山 〜 日暮沢 (周回)
梅雨前線の動向で週末の山行計画は二転三転したが、最後の“1000円高速”に後押しされ、朝日連峰への日帰り登山に行った。 思えばこの制度のお蔭で週末ハイカーの私が秋田の鳥海山や大白森といった遠方の山まで足を延ばすことが出来たので、今回の廃止はとても残念だ。 朝日連峰は秋の紅葉シーズンに限れば、私が日本一好きな山域であり、その変化のある芸術的な紅葉は世界にも誇れる山岳景観だと信じてやまない。 過去何度も秋には訪れている反面、冬から春にかけては豪雪と不安定な気象、夏は低山ゆえの暑さで敬遠していた。 今回はまだ残雪期の雰囲気の残る初夏のみずみずしいお花を期待して初めて違う季節に行ってみることにした。 ルートは幾つか考えられる日帰りのルートの中で最もポピュラーな日暮沢を登山口とする大朝日岳への周回ルートとした。 山形道の月山ICから車で30分ほどの日暮沢小屋付近の林道の脇に前泊し、まだ暗い3時半に出発。 小屋の周囲には地元ナンバーの車が10台ほど停まっていたが、すでに昨日から入山しているようだった。 今日は“表参道”の鳥原山の神社で山開きの神事が行われるらしい。 高度計の標高を650mに合わせ、“通い慣れた”竜門山へのブナ林の尾根を登る。 足元には昨日の夕立で落ちたサラサドウダンの花が一面に敷き詰められていた。 間もなく周囲が明るくなり、鳥のさえずりが休みなく聞こえてくる。 4時半にご来光となり、朝陽が山肌をオレンジ色に染めていく。 天気は予報どおり良さそうだ。 時折樹間から月山が見える。 水場を過ぎると登山道に雪が現れ、付近には珍しくリュウキンカの群落が見られた。 山ツツジ、タムシバ、オオカメノキ、カタクリなどの定番の春の花達も絶えることなく見られ、先々週の谷川岳から始まったお花見山行にさらに磨きがかかった。 清太岩山直下の残雪の急斜面にはトレースに加え、ワンドが所々に立てられていて、労せずに登ることが出来た。 急斜面をひと登りすると森林限界となり、爽やかな青空の下にこれから辿る西朝日岳から小朝日岳への稜線が見えた。 山肌の残雪と新緑のコントラストが美しい。 紅葉のシーズンにはいつもカラフルな模様で目を楽しませてくれる清太岩山の頂からは、朝日連峰の主脈が一望され、急遽日帰りでここまで足を延ばした甲斐があった。 次のユーフン山への登りでは、ハクサンチドリとシラネアオイが見られた。 陽射しは強くなってきたが、まだ暑さはそれほど感じない。 再び残雪の斜面を登り、7時半に竜門山に到着。 稜線上には雪はなく、山桜が満開だった。 逆光ではあるが、遠く飯豊の山並みも見えた。 昨夜竜門小屋に泊まったパーティーはすでに出発しているので、稜線上に人影は全くない。 竜門山は赤く燃えるような紅葉の印象が強く、緑と白の山肌が新鮮だ。 竜門山から西朝日岳への稜線はイワカガミとウスユキソウの競演で、ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、チングルマ、イワウメも随所に見られた。 紅葉狩りと同じようにお花見に夢中になり、足が前に進まない。 竜門山から1時間半を要して、ようやく人待ち顔の西朝日岳の山頂に着いた。 連峰中屈指の展望を誇る山頂からは主峰の大朝日岳が指呼の間に望まれた。 西朝日岳からは再び残雪が登山道を覆うようになり、暑さを和らげてくれた。 ここからはハクサンイチゲが主役となった。 中岳から先では盛夏にニッコウキスゲが咲くらしいが、残雪との境目にはシラネアオイの群落が見られた。 金玉水の水場はまだ雪の下だ。 大朝日小屋を経て11時前に大朝日岳の山頂に到着。 日暮沢からここまで4〜5人と出会っただけだったが、山開きということもあり、朝日鉱泉あるいは小国からの登山者で狭い山頂は賑わっていた。 山頂の隅で靴を脱ぎ、展望を楽しみながら30分ほどゆっくりランチタイムとした。 大朝日岳から小朝日岳の間はチングルマが多く、イワカガミとウスユキソウの競演が続いたが、ヒメサユリはまだ蕾で茎も細く時期尚早な感じがした。 正午を過ぎると上空には厚い雲も浮かぶようになったが、夏の陽射しで暑さが堪えるようになってきた。 銀玉水は残雪の下から鮮烈に流れていたので、タオルを冷たい水で濡らして体を冷やす。 それでも小朝日岳への急登は暑さが堪えた。 最後のピークの古寺山から先では標高も下がるので暑さが危惧されたが、再び現れた残雪と微かに吹いてくる涼しい風に救われた。 古寺鉱泉への道を右に分け、ハナヌキ峰を経て新緑の美しいブナ林を登山口の日暮沢に下る。 日暮沢への林道はタニウツギが満開だった。 まだ陽の高い4時半前に日暮沢に到着。 道の駅『にしかわ』にある温泉施設『水沢温泉館』で汗を流し、長い帰途についた。