《 4日 〜 5日 》 谷川岳
土合橋 〜 白毛門 〜 笠ケ岳 〜 朝日岳 〜 清水峠 〜 七ツ小屋山 〜 蓬峠(テント泊) 〜 武能岳 〜 茂倉岳 〜 谷川岳 〜 土合橋 (周回)
今年は早くも梅雨入りしてしまったが、雨模様だった週末の天気予報が急変したので、お花見山行ということで谷川連峰のいわゆる“馬蹄形縦走”をした。 馬蹄形はちょうど10年前の秋に歩いたことがあったが、好天に恵まれたこともあり、いつか違う時期に再訪したいと思っていた。 馬蹄形縦走とは登山口の土合橋を起点として、白毛門・笠ケ岳・朝日岳・七ツ小屋山・武能岳・茂倉岳・一ノ倉岳・谷川岳という顕著な8つのピークを縦走しながら周回して起点の土合橋に戻るというルートの呼び名であり、その辿る稜線の形が馬の蹄に似ていることから名付けられたものだろう。 コンパクトではあるが、全てのピークと稜線が森林限界となる1500mを超えているため、いつでも展望が楽しめるのが最大の魅力だ。 前回は中間点となる清水峠の『白崩避難小屋』に泊まったが、相棒の妻が避難小屋は狭くて暗いので嫌だというので、今回はテントを持っていくことにした。 関越道の下牧PAで前泊して翌朝登山口の土合橋に向かう。 土合橋の広い駐車場を6時過ぎに出発。 すでに車は10台以上停まっていた。 高度計を700mに合わせる。 予報以上の好天で、雲一つない快晴の天気だ。 登山道に入るとすぐに『馬蹄形概念図』と記された大きな看板があった。 登山口で挨拶を交わした単独の年配の方と相前後しながら、気持ちの良い新緑のブナ林をゆっくりとしたペースで登る。 結局この方とは最後は一緒に行動することとなり、今回の宿泊地も清水峠からその先の蓬峠に変更となった。 白毛門への登り一本調子の尾根は次第に痩せ、所々で木の根を掴みながらの急登となる。 震災の影響で登山者は減っている傾向にあるものの、昨今の登山ブームにより白毛門(少数だが笠ケ岳)への日帰りの登山者が多い。 数時間後に山仲間の山人さん&モコモコさんも白毛門を登られたということは知る由もなかった。 登山口での清々しい涼しさが嘘のように、登るにつれて気温が高くなり、まるで夏山のような暑さとなった。 一方、梅雨前線の影響で谷川岳方面の天気は悪くなり、いつの間にか青空は無くなっていた。 登山道には意外にも石楠花が多く見られたが、結局馬蹄形の縦走路全般に亘って石楠花が多かった。 森林限界となる松ノ木沢の頭からは眼前の白毛門はもちろんのこと、周囲の山々の展望が一気に開けた。 暑さを危惧していたが、上空の薄雲が太陽を遮ってくれたお蔭で、松ノ木沢の頭から白毛門までの登りはあまり苦にならなかった。 予定よりも早く9時前に白毛門の山頂に着く。 稜線の先には笠ケ岳と大烏帽子が鎮座し、谷を挟んで谷川岳や一ノ倉岳の大岩壁と残雪の一ノ倉沢が望まれた。 白毛門の山頂にも石楠花が咲き、お花見山行に相応しい景色だった。 1720mの白毛門を過ぎるとようやく登山道に残雪が見られるようになり、気分的にも涼しくなってきた。 日帰りで笠ケ岳や朝日岳まで足を延ばす人は稀で、その後は馬蹄形を逆から縦走してきたという単独の方と出会ったのみだった。 笠ケ岳の山頂からは、それまで見えなかった朝日岳や七ツ小屋山はもちろんのこと、巻機山も遠望されるようになった。 ゴールの清水峠までの時間も見えてきたので、山頂での休憩時間が長くなる。 山頂から麓の宝川温泉に至るウツボギ沢は広く傾斜も緩いので、いつかスキーで滑ってみたいルートだ。 山頂直下に建つカマボコ形の小さな避難小屋の脇を通り、鞍部まで一旦下ってから小烏帽子・大烏帽子といった小さなピークが連続する朝日岳への登りとなる。 所々にシャクナゲに代わって山桜が見られ、朝日岳の山頂直下の岩場にはお目当てのウスユキソウが咲いていた。 正午前に人待ち顔の朝日岳に着く。 梅雨前線の影響が無い新潟方面は天気が良く、巻機山から平ケ岳に繋がる上越国境の山々や中ノ岳や八海山も遠望された。 今日はもう登りはないので再び大休止となる。 今回のお花見のハイライトと期待していた山頂直下の朝日ケ原には、残雪が多かったせいか花は殆ど咲いていなかったが、巻機山への踏み跡が分岐するジャンクシヨンピークからの下りではシラネアオイが見られるようになり、さらに清水峠に近づくとカタクリが咲いていた。 今年は春先に一度もカタクリを見る機会に恵まれなかったが、まさか6月になって関東の山でカタクリが見られるとは思わなかった。 今日の宿泊予定地の清水峠には予定よりも早く1時半過ぎに着いた。 まだシーズン初めのせいか、避難小屋には誰もいなかった。 避難小屋は10年前と変わっていないようだったが、入口に『JR東日本』というプレートが貼られていて驚いた。 二階建ての小屋は12人までなら快適に泊まれそうだった。 周囲には残雪があったが、先ほどすれ違った方からの情報を基に水場を探したが見つからなかった。 天気は予報どおりこれから夕方に向けて悪くなっていくような感じがしたが、まだ陽も高いし明日の天気は保障出来ないので、登山口から相前後して歩いてきた年配の方と連れ立って蓬峠に向かうことにした。 今日最後のピークとなる七ツ小屋山を過ぎて蓬峠への下りに入ると、シラネアオイがそこらじゅうに群生していた。 まだ咲いていない株も多く、その昔北海道の夕張岳で数えきれないほどのシラネアオイの大群落に遭遇したことが思い出された。 天気は何とか持ち、夕方の4時に蓬ヒュッテの建つ蓬峠に着いた。 山小屋でテントの受付をすると、意外にも無料で良いとのことだった。 狭い山小屋の食堂では5〜6人の宿泊者が楽しそうに歓談していた。 山小屋の近くには水場はなく、土樽からの登山道を下った所にある水場を教えてもらった。 芝生のような快適なテント場は私達と年配の方だけで、頑張ってここまで来た甲斐があった。 年配の方は疲労の色が濃く、水汲みを買って出る。 水場は山小屋から下り5分、登り10分、標高差は90mだった。 天気は依然として悪かったが、結局雨は降らなかった。 風もなく静かな夜で、スリーシーズン用のシュラフではもう暑いくらいだった。
翌朝は年配の方よりも一足早く4時半にテント場を出発。 残念ながら稜線は霧に包まれ、ご来光はおろか展望は全く冴えない。 相変わらず登山道に彩りを添えている石楠花とシラネアオイが唯一の心の救いだ。 今日の最初のピークとなる武能岳の山頂からは微かに茂倉岳と一ノ倉岳が見えたが、次の茂倉岳までの長い登りでは、再び稜線は霧に包まれてしまった。 天気が悪いため休憩も殆どしなかったので、茂倉岳には予定よりも早い7時に着いた。 茂倉岳の山頂からは谷川岳が一瞬見えたが、それも長続きはしなかった。 もうこのままずっと霧が晴れずに終わってしまうのかと思ったが、谷川岳(オキノ耳)の山頂に着く直前に霧が急速に上がり始め、ようやく近くの山々が見えるようになった。 早朝に麓から登ってきた登山者で谷川岳(トマノ耳)の山頂は賑わっていたので、静かなオキノ耳の山頂でさらに霧が上がるのを待つ。 次第にオジカ沢ノ頭や万太郎、仙ノ倉、そして辿ってきた茂倉岳などが見えるようになった。 3年前に山仲間の山人さん&モコモコさんとご一緒した俎ー山稜が懐かしい。 馬蹄形の最後のピークとなるトマノ耳の山頂では写真を数枚撮っただけで、すぐに下山を始める。 残雪の状況では西黒尾根は大変かと思われたが、山頂直下の残雪は予想以上に少なく、その後の岩場も全く問題無かった。 最盛期には遠く及ばないが、小学生を含め30人以上の人達とすれ違った。 展望には恵まれなかったが、陽射しは上空の雲に遮られたままだったので、暑さに苛まれることなく正午に西黒尾根の登山口の舗装された車道に降り立つ。 さらに車道を20分ほど下り、土合橋の駐車場に着いた。