2  0  1  1  年     5  月  

《 21日 》    笠ケ岳

奈良俣ダム 〜 笠ケ岳  (往復)

    週末は生憎土曜日のみ晴れるとの予報だったので、尾瀬の至仏山の前衛の笠ケ岳に日帰りで登った。 過去の記録を調べてみると、笠ケ岳には15年前の秋に日帰りで鳩待峠から登ったことになっていたが、その記憶は不思議と全くなく、何故か山頂の写真もなかった。 現在、鳩待峠は上高地同様に交通規制が厳しくなり、さらに残雪期の至仏山は登山禁止と敷居が高くなってしまったため、今回は湯ノ小屋温泉からの静かなルートを辿ることにした。 関越道の下牧PAで前泊して翌朝登山口の湯ノ小屋温泉に向かう。 湯ノ小屋温泉からさらに奈良俣ダムへと車道を進み、通行止めのゲートの前に駐車して5時半に出発。 すでに車が2台停まっていたが、どちらも山菜採りのようだった。 高度計を900mに合わせる。 舗装された曲がりくねった林道を30分ほど登って行くと、湯ノ小屋温泉からの登山道と合流したが、どちらから登っても時間的には差が無い感じに思えた。 そこから5分ほど林道を歩くと再び通行止めのゲートがある変則四叉路があり、その脇から古い標識に導かれて登山道に入る。 ブナの木々が意外と多く、新緑がとても眩しい。 取り付いた尾根は1100mから1200mの間で1時間ほど小さなアップダウンを繰り返し、標高は全く上がらない。 樹間から目指す笠ケ岳や谷川連峰の山々が見えたが、不思議と笠ケ岳の頂稜部には雪がなく黒々としていた。 早朝は天気が良かったが、次第に空の色が濁ってきたのでヤキモキする。 私の好きなコシアブラの木々が多くなり、帰路を待たずに山の恵みを少しだけいただく。 再び未舗装の林道と交差したワラビ平から先は、それまでとは逆に痩せ尾根の急登が続くようになり、1500m付近からようやく登山道に雪が見られるようになった。 奈良俣ダムから3時間半でコンクリート製の荒廃した『咲倉沢頭避難小屋』に着く。 緊急時にしか使えないような小さな小屋だが、鉄梯子で屋根に上がれるようになっていた。  避難小屋の屋根の上からの展望は素晴らしく、武尊や谷川・朝日・巻機などの山々が一望された。 避難小屋から僅かに登った標高1700m地点からは幅の広い緩やかな尾根となり、登山道は残雪で完全に消失した。 トレースはなく、GW中の入山者が少なかったことが想像される。 赤テープの類は一切無かったが、尾根は顕著で、樹間の広い歩き易い所を選んで登れば良かった。 大きなツリーホールから、稜線の雪はまだ多い所で2mほど積もっていることが分かった。 気温の上昇で雪の表面は柔らかくなっていたが、残雪は予想以上に締まっていたので、アイゼンもワカンも不要だった。 1962m地点で坤六峠からの県境尾根と合流し、無雪期には湿原となる片藤沼まで緩やかに下る。 南斜面だけ雪が残る笠ケ岳の頂稜部が指呼の間に見え、その右奥には至仏山が、そして燧ケ岳も望まれた。 笠ケ岳の頂稜部には草木がなく、急峻な岩場となっていたので、残雪がない理由に納得した。 至仏山への縦走路の分岐から10分ほど岩場を登り、11時半に真新しい標識の立つ山頂に着いた。 雪の全くない山頂は久しぶりだ。 猫の額ほどの狭い山頂だが、遮るものない360度の大展望で気持ちが良い。 風もなく穏やかな山頂で昼飯を食べながら上越国境の山々の山座同定を楽しむ。 40分ほどゆっくり寛ぎ、景色も充分堪能出来たので、私達だけの静かな山頂を辞する。 気温の上昇で雪の踏み抜きを危惧していたが、自分たちのトレースを忠実に辿ったお蔭で、意外にも全くスムースに避難小屋まで下ることが出来た。 むしろ本当の“核心”は避難小屋から下の暑さだった。 特に最後のアップダウンの多い尾根は、登り返しが果てしなく続くようにさえ思えた。 登山道から林道に出た所で一息入れていると、山菜採りをしている方と出会った。 普段は山登りをされているが、この時期だけは山菜採りに没頭されるとのことだった。 コシアブラなどはビニール袋に入れると蒸れてしまうので、その場合は雪を拾って入れておくと良いとアドバイスを受けた。 まだ陽の高い4時過ぎに奈良俣ダムに置いた車に戻った。


今回登山口とした奈良俣ダムの通行止めのゲート


通行止めのゲートがある変則四叉路の脇から古い標識に導かれて登山道に入る


ブナの木々が意外と多く、新緑がとても眩しい


樹間から見た笠ケ岳の頂稜部には雪がなく黒々としていた


コシアブラ


1500m付近からようやく登山道に雪が見られるようになった


コンクリート製の荒廃した『咲倉沢頭避難小屋』


避難小屋から見た武尊山


避難小屋から見た笠ケ岳


避難小屋から見た谷川連峰の山々


避難小屋から先は残雪で登山道は完全に消失した


幅の広い緩やかな尾根から見た笠ケ岳


尾根は顕著だったので、樹間の広い歩き易い所を選んで登る


大きなツリーホールから、稜線の雪はまだ多い所で2mほど積もっていることが分かった


無雪期には湿原となる片藤沼から見た笠ケ岳の頂稜部


至仏山への縦走路の分岐から岩場を登る


真新しい標識の立つ笠ケ岳の山頂


山頂から見たならまた湖と上越国境の山々


山頂から見た至仏山


山頂から見た平ケ岳(中央奥)


山頂から見た燧ケ岳


帰路は自分たちのトレースを忠実に辿る


印象的だったブナの新緑


2 0 1 1 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P