2 0 1 0 年 1 2 月  

《 11日 》    鶏冠山 ・ 木賊山

西沢渓谷入口 〜 鶏冠山 〜 木賊山 〜 西沢渓谷入口  (周回)

    鶏冠山は10数年前に東沢を遡って甲武信岳に登った時から気になっていた山だが、登山道の様子も知り得ずに忘却の彼方に追いやられていた。 最近ブームになっている『山梨百名山』にこの山が入っていることを知り、ネットで調べてみると、意外にも昨今ではルートは整備されて新しい標識もあるようだった。 また、鶏冠山から奥秩父の主脈上の木賊山までの古い登山道もそれなりに歩かれているようだったので、西沢山荘からの周回ルートで行ってみることにした。 西沢渓谷入口の駐車場に前泊し、6時前に出発する。 一年で一番日が短い時期なのでまだ周囲は暗い。 早出をしなかったのは、暗い時間帯に東沢を歩きたくなかったからだ。 西沢山荘付近で先行していたパーティーと出会うが、鶏冠山ではなく甲武信岳に行かれるとのことだった。 西沢山荘から西沢渓谷への遊歩道を辿り、東沢に架かる吊り橋を渡ったすぐ先にある『西沢渓谷入口』の看板の脇が鶏冠山への登山道の入口となっていた。 意外にもここから数センチの積雪(新雪)があった。 トレースはなかったが、ネットの情報どおり新しいテープ類が頻繁にあり、懸念していた鶏冠谷出合の渡渉点もすぐに分かった。 渡渉点は川幅が5mほどしかなく、飛び石伝いに渡れそうだったが、表面がツルツルに凍っていてアイゼンも利きそうになかったので、靴を脱いで渡渉用の靴下に履き替え、身を切るような冷たい沢を渡る。 出合から先の登山道も雪で覆われていたが、要所要所の木々に新しいビニールテープが巻かれていて全く迷う所はない。 明るい尾根道は次第に急勾配となり、1800m付近からは雪も深くなってきたのでアイゼンを着ける。  岩壁の基部を左から大きく巻きながら登って行くと、風が強く吹き始め嫌な感じになったが、風はしばらくすると収まってくれた。 頂稜部の最初の小さな岩塔には新しい鎖が取り付けられていたので、県(行政)がルートを整備していることが分かった。 岩塔の上に登ると眼前に大きく岩の鎧を身に着けた鶏冠山の偉容が望まれ、その荒々しい姿に思わず息を飲む。 そこからはしばらく岩稜の登下降となったが、新雪が積もった岩はフリクションが利かず、所々で補助ロープで確保しながら進むため時間が掛かる。 次の小さな岩塔にも新しい鎖やロープが取り付けられていたが、岩の表面や鎖が凍っていなかったので助かった。 山頂直下の最後の岩塔には鎖やロープがなかったので、標識に従い岩塔の基部から右へ少しロープで下ってから巻いて登る。 その急な下りで妻が足を滑らせ、腰を強打してしまった。 しばらくそこで休み、腰の様子を見ながら登ったので、計画よりも1時間ほど遅く11時過ぎに鶏冠山の山頂に着いた。 図らずも山頂は私達だけで貸し切りで、後続者の気配も感じられなかった。 正面には奥秩父の主脈と国師ケ岳が大きく望まれ、木々の間からこれから辿る木賊山の頂が僅かに見えた。 山頂でしばらく寛いでから11時半前に木賊山を目指して鶏冠尾根の核心部に足を踏み入れる。 先ほどまでとは違いテープの数は半減し、シャクナゲなどの灌木がうるさくなったが、道に迷うこともなく順調に進んだ。 但し、鶏冠山の山頂から2時間ほどは小さなピークが連続し、登り下りで全く標高が稼げなかった。 木賊山への登りに入ると雪が少し多くなった。 間もなく痩せた岩稜が行く手を塞いでいたので、道形に沿ってその基部を左から巻いて進んだところ、それまであったテープが急に無くなった。 これはおかしいと基部まで戻り、今度は岩稜の右側を通ってみたが、そこを通過してさらに先へと進んでもテープはなかった。 もう一度基部まで戻り、最後のテープがあった場所から目を凝らして次のテープを探すと、まったく予想外の下の方にあった。 そこまで雪の急斜面を強引に下って同じように次のテープを探すと、かなり古いが進行方向に次のテープ見つけることが出来た。 しばらくはテープどおりに尾根から外れて斜面をトラバースしながら半信半疑で進んだが、その先で再びテープはなくなり、ルートが分からなくなってしまった。 しばらくはその付近を徘徊し、テープを探しながら活路を求めたが、すでに2時半となり、明るいうちに木賊山へ着かない恐れが出てきたので、断腸の思いで引き返すことを決めた。 しかし往路を辿るのもかなり大変なので、最後の賭けに火事場の馬鹿力で倒木を跨ぎ、藪をかき分け、息も絶え絶えに山頂方面に突き進むと、突然嘘のように獣道のような明瞭な道形とテープが目の前に現れた。 大声で妻を呼び、ルートを見つけた喜びを分かち合う。 ルートを逆に戻って道迷いの理由を検証してみたかったが、時間がないので先に進む。 今までの徘徊の苦労が嘘のようにテープが連続し、その先ではもう迷う所はなかった。 傾斜が緩むと間もなく、主脈の縦走路の木賊山の標識の前に飛び出した。 時間はすでに3時半近くになっていたが、くたびれ果てていたのでしばらくそこで休み、3時半過ぎにトレースのある戸渡尾根を下る。 意外にもその直後に、今朝西沢山荘付近で会ったパーティーが上から下りてきた。 話を伺うと、甲武信岳に登ってから破風山方面に縦走したが、雪が深かったので避難小屋までで引き返してきたとのことだった。 徳ちゃん新道への分岐の先で日没となり、6時過ぎに西沢渓谷入口の駐車場に着いた。


東沢に架かる吊り橋から見た鶏冠山


鶏冠谷出合の渡渉点


出合から先の登山道


1800m付近からは雪も深くなってきたのでアイゼンを着けて登る


古い標識


岩壁の基部を左から大きく巻きながら登る


頂稜部の最初の小さな岩塔には新しい鎖が取り付けられていた


岩塔の上に登ると岩の鎧を身に着けた鶏冠山の偉容が望まれた


岩塔から見た破風山


二番目の小さな岩塔を登る


鶏冠山の山頂から見た国師ケ岳


鶏冠山の山頂直下の新しい標識


鶏冠山から木賊山の間はテープの数は半減した


鶏冠尾根の中間部から見た甲武信ケ岳(左)と木賊山(右)


テープどおりに尾根から外れて斜面をトラバースしながら半信半疑で進む


木賊山の山頂直下


木賊山の山頂


戸渡尾根を下る


戸渡尾根から見た鶏冠山(鶏冠尾根)


2 0 1 0 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P