2 0 1 0 年 1 1 月  

《 27日 〜 28日 》    大門沢下降点

奈良田 〜 大門沢小屋(泊) 〜 大門沢下降点  (往復)

    冬が訪れる前にアルプスの山に登りたい。 夜が長いので出来れば避難小屋か冬期小屋が使えるところが良いと考え、天気との兼ね合いから南アルプスの大門沢小屋に泊まり、西農鳥岳に登ることにした。 道の駅『とよとみ』で前泊し、翌朝登山口の奈良田に向かう。 朝起きると隣に見覚えのある車が停まっていて、急遽西さん&セッちゃんとご一緒することになった。 途中の早川町周辺は紅葉の盛りで、車窓から最後の紅葉を楽しめた。 今日は宿泊場所の大門沢小屋まで4時間の道のりなので、ゆっくりと10時に登山口の奈良田第一発電所の駐車場を出発。 登山口には他県ナンバーの車が1台あった。 大門沢小屋には過去3回泊まったことがあり、18年前の年末に西農鳥岳を登ろうとしたが、積雪のため大門沢小屋に辿り着くのが精一杯で敗退したほろ苦い想い出がある。 最近では2年前の秋に白峰南嶺を辿った時に泊まった。 林道を40分ほど歩き、砂防ダムに架かる大きな吊り橋を渡って山道に入る。 古い吊り橋を2つ渡り、その先の細い沢を飛び石伝いに渡ると樹林帯の単調な登りとなる。 岩に印されたペンキマークやケルンに導かれて沢の右岸を歩いていくと、落ち葉のせいか登山道は次第に細くなり大きなガレ場が出てきた。 ガレ場の記憶はなく、その先は廃道のような踏み跡しかなかったので、最後のケルンまで引き返すことにしたが、良く見ると似たような踏み跡が多く、引き返すこともままならない状況になった。 右往左往しながらその周囲を徘徊し、かなりの距離を戻った所で沢に架かる木の橋を偶然見つけ、登山道に戻ることが出来た。 どうやら大門沢ではなく大コモリ沢という枝沢を遡ってしまったようだ。 結局2時間ほど時間をロスしてしまったので、ルートを外れた場所の検証は帰路にすることにして先を急ぐ。 途中の八丁坂付近では大量に積もった落ち葉のラッセルとなる。 4時に大門沢小屋に到着。 先行者はおらず、私達だけで貸し切りとなった。 夕食の準備をしていると熊鈴の音が聞こえ、意外にも単独の方が入ってきた。 その方は登山口の他県ナンバーの車の主で、今日中に稜線まで上がろうとしたが、大門沢下降点の下の積雪が多く、ルートが分からずに徘徊して戻ってきたとのことだった。 明日はもう登らずに下山されるとのこと。 夜の天気予報では昨日の予報よりも悪くなり、山梨県は晴れだが長野県の中部は曇りに変わった。 天気の悪化を告げるかのように夜中は時折突風が吹き、山小屋を揺らした。


登山口の奈良田第一発電所


古い吊り橋を2本渡る

 

岩に印されたペンキマークに導かれて沢の右岸を歩く(この先で登山道から外れる)


大コモリ沢に架かる木の橋


八丁坂付近では大量に積もった落ち葉のラッセルとなる


大門沢小屋

 

無料開放されている大門沢小屋の内部


    翌朝は2時半に起床。 3時半に出発する予定でいたが、風もあり小雪が舞っていたので、出発を1時間ほど遅らせることにした。 稜線はさらに状況が悪いことが想定されたので、目標の西農鳥岳は諦めて、手前の農鳥岳まで登ることにした。 雪はほぼ降り止んだので満を持して4時半に出発。 新雪がうっすらと積もった樹林帯の中を無言で黙々と登る。 一旦降り止んだ雪が再び降り始めたが、空からというよりは稜線に積もった雪が強風に煽られて飛んできているような感じがした。 夜が明けて周囲が少し明るくなってきたが、空は鉛色でご来光など望むべくもなかった。 新雪の下の凍った地面が滑るので途中からアイゼンを着ける。 森林限界となりハイマツが出てくると雪が急に深くなり、まもなく登山道が分からなくなった。 その先にはちょっとした平坦地があり、昨日の話どおり周囲を徘徊した足跡があった。 稜線を見上げると寒々しい雲が取り付き視界を遮っていた。 昨日とは違った意味でのルートファインディングとなり、沢状地形のすっきりとしたラインを選んでキックステップで登って行くと、獣道のような道形が現れたので、それを辿っていくとペンキマークが印された岩が雪の上から出ていた。 そこからは道形どおりに上へ上へと登って行くと再びペンキマークが印された岩があったので、そこが登山道であることを確信した。 雪はさらに深くなり膝下のラッセルとなったが、西さんと交代でラッセルを続けていくと不意に頭上に大門沢下降点の櫓が朧げに見えた。 当初の予定より少し遅く9時に大門沢下降点に到着。 予想どおり稜線の風は強く、霧で展望は全くなかった。 皆のモチベーションは一気に下がり、農鳥岳は諦め一番近いピークの広河内岳まで登ろうという提案も却下され、トンボ返りで往路を引き返す。 森林限界付近まで下ると急に太陽が顔を出し、ようやく一息つけた。 富士山が良く見えるようになったが、背後の稜線には相変わらず強風が吹き荒れているような感じだった。 失意の中、大門沢小屋へと下るが、4人の足跡はすでに降雪によりかき消されていた。 農鳥岳まで行けなかったので、予定よりも早く正午前に大門沢小屋に到着。 昼食を食べながら荷物をまとめて1時間ほど寛ぎ、リベンジを誓って奈良田へと下山する。 途中で昨日の道迷いの原因の検証をすると、間違ったと思われる所には木に赤テープが巻かれていたが、傍らの岩のペンキマークは登山道と違う方向を指しており、その先にはペンキマークやケルン、赤テープ類が数多くあったので、よほど注意していなければ登山道と違う踏み跡に引き込まれてしまうばかりか、道を外れたことに気が付かずにさらに先に進んでしまうことが分かった。 その踏み跡がいったい何なのかはまだ不明のままだ。 宿題を残したまま4時前に登山口の駐車場に到着し、 早川町営の草塩温泉で汗を流した。 翌日ネットでその道迷いについて検索してみると、何とその日に日帰りで農鳥岳を目指して登られた方がいて、同じ場所で道に迷って下山したということと、山小屋でお会いした単独の方も同じ場所で道に迷っていたことがその方とその日に出会ったことで分かり、その偶然性に驚いた。


1時間ほど山小屋の中で待機する


まだ暗い4時半に山小屋を出発


一旦降り止んだ雪が再び降り始めた


森林限界付近からは雪が急に深くなる


大門沢下降点の直下を登る


大門沢下降点の櫓が朧げに見えた


強風が吹き荒れいていた大門沢下降点


大門沢下降点からトンボ返りで往路を引き返す


森林限界付近で寛ぐ


リベンジを誓って大門沢小屋を後にする


2 0 1 0 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P