2 0 1 0 年  9 月  

《 18日 〜 20日 》    小河内岳 ・ 荒川岳

    鳥倉林道 〜 三伏峠 〜 小河内岳避難小屋(泊) 〜 荒川岳 〜 高山裏避難小屋(泊) 〜 三伏峠 〜 鳥倉林道  (往復)

    3連休は海外の報告会を兼ねて山仲間のkana‐catさんとの山行となった。 昨年のSWの混雑の経験を活かして、マイナーなルート、しかも出来ればお喋りがしやすい避難小屋がベストなので、以前辿ったことのある南アルプスの三伏峠を経て荒川岳を登るルート、そして泊まりは高山裏避難小屋を選んだ。 前回の山行では今回の計画とほぼ同じ行程を一泊二日で歩いたが、今回は山行の趣旨から余裕をもって初日はその手前にある小河内岳避難小屋に泊まることにした。 どちらの小屋も盛夏の1か月ほどは管理人が入り有料となるが、それ以外の時期は無料開放されており、前回の高山裏避難小屋は私達だけで貸し切りだったことは記憶に新しい。 中央道の小黒川PAに前泊し、翌朝6時半に松川IC付近の高速バスの利用者用の駐車場でkana‐catさんをピックアップし、三伏峠への登山口となる鳥倉林道の通行止めのゲートに向かう。 8時にゲートに着いたが、さすがに3連休だけあってすでに30台ほど停められる駐車場は満車で、手前の路肩には駐車している車の長蛇の列が出来ていた。 路肩の空いているスペースに車を停めて8時半過ぎに出発。 40分ほど勾配の緩い舗装された鳥倉林道を歩く。 天気は予報よりも悪く雲が多いが、その方が暑くないので助かる。 鳥倉林道の開通直後は車で来ることが出来た三伏峠への旧登山口を9時半前に登り始める。 三伏峠を経て塩見小屋まで行く人達はすでに出発し、三伏峠の山小屋やテントで泊まる人達はまだこれからなのか、それほど大勢の登山者は見られなかった。 異常だった夏の暑さも和らぎ、樹林帯の登りは全く苦にならない。 小河内岳避難小屋付近(三伏峠付近から高山裏避難小屋までの間も)には水場がないので、三伏峠の手前30分くらいの所にある最初で最後の水場から水を歩荷する。 正午に三伏峠に着き、三伏小屋前のベンチでのんびりランチタイムとする。 山小屋の周りやテント場は多くの人達で賑わっていたが、人気の塩見岳方面への縦走路を左に分け、小河内岳方面の縦走路に足を踏み入れると、予想どおりそこからは全くの静かな山行となった。 残念ながら最初の展望のピークの烏帽子岳でも天気は回復せず、塩見岳を始め蝙蝠岳や荒川岳といった周囲の山々は雲や霧でスッキリと見えない。 霧はますます濃くなり、2時半過ぎに小河内岳の山頂直下に建つ小河内岳避難小屋に着く。 殆ど無人に近いと予想していたが、単独行の若い男性4人が先客として小屋にいた。 3連休と1000円高速、そして昨今山に若い人が増えたことの証だ。 皆静かな山歩きを求めにきていたのか、私達以外は終始無言だった。 夜行の疲れか、5時を過ぎると彼らは皆寝てしまったので、お喋りをするのもはばかられ、当初の目論見とは逆に周囲に気を遣いながら静かに夕食を食べるハメになった。 私達の後はもう誰も来ないと思われたが、日没前に賑やかな若人が一人訪れ、ようやく小屋内の重苦しい雰囲気が少し和らいだ。 この賑やかな若人(Oさん)とはその後下山まで同じ行程を辿ることになり、最終日は4人で行動を共にすることになった。


鳥倉林道の通行止めのゲート付近


夏の暑さも和らぎ、三伏峠までの樹林帯の登りは全く苦にならない


三伏峠


烏帽子岳の山頂


小河内岳方面の縦走路には人影がなく、静かな山行となった


小河内岳の山頂直下に建つ小河内岳避難小屋


小河内岳避難小屋の内部


    2日目はまだ暗い5時に小河内岳避難小屋を出発。 私達とOさん以外は皆すでに出発していた。 稜線は風も多少あり、秋の山らしい涼しさだ。 雲は多めながらも、途中の樹林帯からご来光を拝むことが出来た。 小河内岳から荒川岳の間の唯一のピークである板屋岳は展望に恵まれない不遇な頂だが、以前はなかった立派な標識が建てられていた。 7時半に高山裏避難小屋に到着。 小屋から50mほど下った水場で水を汲み、1時間近くまったりと小屋で寛ぐ。 前回はこの小屋の周囲のテント場で夏合宿をしていた母校の明大山岳部を率いるOBの加藤慶信さんとこの小屋の前で偶然出会った。 加藤さんは8000m峰を8座登頂した若手の登山家でガイドの見習いもしていたが、腰が低くとても優しい人柄だった。 将来是非ヒマラヤの高峰をガイドしていただきたいと思い、その気持ちを彼に伝えたが、2008年10月にクーラカンリで雪崩に遭い、帰らぬ人となってしまった。 この小屋にはそんな忘れ得ぬ思い出がある。 避難小屋に寝具や食料をデポし、9時半前に荒川岳に向かう。 曇りがちだった天気は次第に良くなり、最初のピークの荒川前岳に着く頃には青空が広がり始めた。 3連休の中日だったが意外にも縦走路には人影が薄かった。 天気も良くなったので、中岳の山頂でしばらく休憩してから悪沢岳(東岳)にも足を延ばすことにした。 中岳避難小屋のスタッフの方の話しでは、空身であれば避難小屋から悪沢岳まで1時間半で往復出来るとのことだった。 悪沢岳には18年前の初冬に赤石岳への縦走で訪れて以来だったが、その時は積雪があったので山の印象はまるで違い、初めて登る山のような感じがした。 正午に悪沢岳に到着。 先行していたOさんと写真を撮り合う。 風もなく穏やかな山頂からは北に塩見岳と蝙蝠岳、そしてその先に、間ノ岳と農鳥岳、甲斐駒と仙丈、南には赤石岳が大きく望まれ、今日辿ってきた縦走路や白峰南嶺の山々と笊ケ岳など360度の大展望だ。 天気は安定し急ぐ必要もないので、1時間ほどのんびりと山頂で思い思いに寛ぐ。 1時前に重い腰を上げて往路を戻る。 気温は14度で、二週間前の猛暑が嘘のように陽射しが心地よく、中岳への登り返しもそれほど苦にならなかった。 所々で草紅葉が赤く染まり、秋の訪れを感じさせる。 赤石岳方面への縦走路に足を踏み入れたい衝動をこらえ、前岳から高山裏へ岩屑のカールを下る。 帰路の途中で追いついてきたOさんは、山頂直下の岩場でデポしたストックを持ち去られてしまったとのこと。 避難小屋の手前の水場で水を汲み、4時過ぎに避難小屋に戻った。 今日の宿泊者は私達3人を含めて7人だった。 小屋の中は薄暗いので、残照の荒川岳を眺めながら小屋の前のテーブルで夕食を食べる。 Oさんらの同宿者も加わり、昨夜とは違う賑やかな宴となった。


小河内岳山頂から見た朝焼けの富士山


小河内岳の下りから見た未明の荒川三山


樹林帯からご来光を拝む


板屋岳の手前から見た奥茶臼山


板屋岳の手前から見た小河内岳と塩見岳(右奥)


高山裏避難小屋


避難小屋の内部


荒川前岳へ岩屑のカールを登る


荒川前岳の山頂付近での加藤慶信さん(左)と松本浩さん(右)(2003年9月)


荒川前岳から中岳(左)と東岳(悪沢岳)(右)への縦走路


中岳の山頂


中岳から東岳(悪沢岳)へ向かう


東岳(悪沢岳)の山頂


東岳(悪沢岳)の山頂から見た南アルプス北部の山々


東岳(悪沢岳)の山頂から見た赤石岳


山頂で思い思いに寛ぐ


東岳(悪沢岳)の山頂から見た中岳(中央右)と前岳(中央左)


東岳(悪沢岳)の山頂から見た中岳(中央右)と前岳(中央左)(1992年11月)


中岳から見た東岳(悪沢岳)


中岳から見た東岳(悪沢岳)(1992年11月)


荒川前岳から岩屑のカールを下る


高山裏避難小屋から見た荒川三山


小屋の前のテーブルで夕食を食べる


    3日目もまだ暗い5時に高山裏避難小屋を出発して往路を三伏峠に向かう。 若いOさんは居心地が良いのか、すっかり私達の輪の中に溶け込んでしまい、図らずも登山口まで一緒に行動することになった。 天気は終始高曇りで青空は殆ど望めなかったが、遠望は利いたので退屈せずに済んだ。 昨日同様、すれ違う登山者も稀で、静かな山行を味わえた。 小河内岳を経て10時前に三伏峠に着いたが、ここも初日の賑わいが嘘のように閑散としていた。 三伏峠から鳥倉林道に下り、12時半にゲート付近に停めた車に戻った。 当初はどこか麓の温泉にゆっくり浸かってから帰途につく予定だったが、夕方から始まる渋滞の前に帰れそうだったので、松川IC付近の高速バスの利用者用の駐車場にkana‐catさんを降ろしてから一目散に中央道に乗ったが、自然渋滞に加えて事故があり、結局帰宅は夜遅くになってしまった。


まだ暗い5時に高山裏避難小屋を出発


縦走路から見た中央アルプス


縦走路から見た富士山


縦走路から見た赤石岳(左)と大沢岳(右)


小河内岳直下の登り


小河内岳の山頂


小河内岳の山頂から見た小河内岳避難小屋


小河内岳の山頂直下から見た塩見岳


烏帽子岳の山頂


烏帽子岳の山頂から見た仙丈ケ岳(中)と甲斐駒(右)


2 0 1 0 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P