2010年7月

《 3日 〜 4日 》    プロローグ

  昨夏に続きペルーのブランカ山群に行く機会を得た。 これは昨夏のペルー滞在中に同行したガイドの平岡さんに具体的な山や日程について話し合っていたことが実現したもので、今後も機会あるごとにその山域に詳しいガイドさんとの連絡を密にすることが、自分の登りたい山に行ける秘訣だと実感した。 今回の山行は憧れのアルパマヨ(5947m)をメインとし、他にキタラフ(6036m)とピスコ(5752m)を7月の上旬から中旬の3週間で登るという計画だ。

  アルパマヨは一昔前にドイツの山岳雑誌社が世界中の著名な登山家に行ったアンケートで“世界一美しい山”に選ばれたブランカ山群のシンボル的な山であり、深田久弥氏もこの山を「鋭い三角錐のまことに胸のすくような美しい姿」と描写し、未完に終わった『世界百名山』の一峰に選んでいた山である。 残念ながら今回は世界一美しいと称された北西壁(アルパマヨ谷)からの雄姿を見ることなく、反対側のサンタクルス谷からアプロチーチしたが、ヒマラヤ襞の発達した南西壁やB.Cから眺めた山容は充分芸術的かつ魅力的だった。 キタラフは今回のメインであるアルパマヨと同じH.Cからも登れる山として、アルパマヨが順調に登れた場合の予備日を利用して登ることになった。 アルパマヨが登れなかった場合には必然的にキタラフも登れないということで不確定要素は高いが、3週間の日程で6000mクラスの山を3つ登るという目一杯の計画なので仕方がない。 ピスコは5000m峰であるが、周囲を6000m台の名峰に囲まれたブランカ山群随一の展望を誇る山で、登山者が一番多い山である。 ルート上に特に危険や困難な箇所はなく、ガイドレスや他の高峰への順応目的で登られていることもその理由の一つだ。

  アルパマヨは世界一美しい山であるばかりか、その登頂は素人にとっては非常に困難であり、とても私が挑戦出来るような山ではなかったが、2年前に平岡さんが現地の優れたガイドチームと共にガイド登山を成功させた実績を見て、思い切って挑戦することにした。 今回“登山者を選ぶ”この山の登山隊に参加することになったのは私と女性のセブンサミッターの島田さんの2人で、そのH.Cまで同行する妻、そして別途10日間の日程でピスコだけを登る中山さんとピスコをスキーで滑る鈴木さんと白馬でペンションを営まれている国際山岳ガイドの林さんということになった。 平岡さんの音頭で出発の1か月前に小淵沢のユースホステルで隊員の顔合わせを行い、小川山でマルピッチのクライミング講習などをして親睦を深めた。

  2010年7月3日の午後に成田空港で隊員一同集合し、夕方4時のアメリカン航空で乗継地のロスに向かう。 機内ではのっけから島田さんとヨーロッパアルプスなどの山談義で盛り上がる。 7大陸の最高峰を初め、数々の世界の名峰を登られている島田さんは、今回計画しているアルパマヨとキタラフも以前挑戦されたが、諸事情により登頂出来なかったとのことで、今回はリベンジに執念を燃やされていた。 成田からロスまでの搭乗時間は9時間半、ロスでのトランジットが3時間、ロスからリマまでが8時間で翌日の午前零時過ぎにリマのホルヘ・チャベス空港に着く。 今回もアメリカの入国審査はESTA申請のお蔭で非常にスムースだった。 日本とペルーの時差はマイナス14時間である。 リマで宿泊したホテルは昨年と同じ空港に併設されている4ツ星の『ラマダ・コスタ・デル・ソル』だった。

  7月4日、昨夏と全く同じスケジュールで8時にエージェントのエクスプロランデス社が手配した20人乗りのベンツのマイクロバスがホテルに迎えに来てくれた。 今日の宿泊先も昨夏と同じカルアス(2650m)のホテルだ。 この時期特有の“ガルーア”と呼ばれる濃霧のため海岸沿いの地域は曇天となる。 気温は18度だが、暑い日本から来ると肌寒く感じる。 季節は冬なので地元の人も厚着をしていた。 市街地を抜け、南米を縦断するパンアメリカンハイウエイを海岸線に沿って北上する。 寝不足と時差ボケで居眠りをしているうちにバランカの町に着き、昨夏と同じ海岸のレストランでセビッチェ(白身魚や貝と玉葱・トウモロコシをあえた料理)やイカのフライ、海鮮炒飯などの定番メニューを食べる。 食後は浜辺で高度計の数字を0mに合わせる。  

  バランカの町を出発して間もなく『ワラス200km/リマ207km』と記された道路標識のある三叉路を右折して標高4050mのコノコーチャ峠に向かう。 途中、唐辛子を大地に整然と並べて乾燥させている農家があり、珍しいので見学させてもらう。 天気は山に近づくほど良くなり、この時期らしい青空になってくる。 コノコーチャ(湖)のあるコノコーチャ峠付近からはブランカ山群の最南端のカウヤラフ(5686m)が望まれたのみならず、前回は見えなかったワイワッシュ山群の盟主であるイェルパハ(6634m)やヒリシャンカ(6094m)といった垂涎の山々の頂稜部が遠望され、気分が一気に盛り上がる。 天気が良かったので、峠から少し下った所で車を停め、高所順応を兼ねて傍らの小さな丘に登ることになった。 ゆっくり登り下りしたつもりだったが、その後バスの中で何となく気分が優れなくなる。 毎度のことだが今回も順応が遅いようだ。 

  6時過ぎにワラス(3090m)に到着し、エクスプロランデス社の事務所に立ち寄る。 マックスとベロニカも私の顔を覚えていてくれたようで、挨拶をすると少し驚いていた。 ワラスから30分ほど車に揺られ、7時前にカルアスのホテル『エル・アブエロ』に到着。 オーナーのディアスさんも珍客の再訪に驚いていた。 夕食はホテルでトゥルーチャ(鱒)の塩焼きをメインディッシュに食べた。 昨夏同様ディアスさんの奥さんや娘さんが作った料理は盛り合わせがとても丁寧で美味しかった。


世界一美しいと称されたアルパマヨの北西壁(資料写真)


ホルヘ・チャベス空港を出発する登山隊のメンバー


バランカの町の海岸のレストラン


唐辛子を大地に整然と並べて乾燥させている農家を見学する


コノコーチャ峠付近から見たコノコーチャ(湖)    イェルパハの頂稜部が遠望された


コノコーチャ峠付近から見たブランカ山群の最南端のカウヤラフ


コノコーチャ峠付近から見たイェルパハ(中)とヒリシャンカ(左)


高所順応を兼ねて傍らの小さな丘に登る


ワラスの手前の車窓から見たブランカ山群の山並


2 0 1 0 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P