2 0 1 0 年  5 月  

《 8日 〜 9日 》    空木岳 ・ 南駒ケ岳

    駒ケ根高原 〜 池山尾根 〜 空木平避難小屋(泊) 〜 空木岳 〜 南駒ケ岳 〜 空木岳 〜 駒ケ根高原  (往復)

    山仲間の西さん&セッちゃんとGWの報告会を兼ねて中央アルプスの山に行くことにした。 GW明けの静かな避難小屋に泊まろうという発想から登る山とルートを決めていくと、空木岳山頂直下の駒峰ヒュッテに白羽の矢が立ち、駒ヶ根高原から池山尾根を登り、縦走や周回のルートをとらずに空木岳から南駒ケ岳の稜線を駒峰ヒュッテをベースにピストンすることにした。 金曜日の夜に川越で西さん&セッちゃんを車に乗せて中央道の小黒川PAで前泊する。 翌朝7時半に駒ケ根高原から林道を辿った臨時の駐車場を出発。 林道の終点が本来の登山口だが、林道の上部が工事のため通行止めになっていたので、遠回りだが臨時の駐車場から一旦林道を500mほど下って登山道に入る。 池山尾根は10年以上前に一度辿ったことがあるが登山道の記憶は全くなく新鮮だった。 雪の全くない登山道を歩くのも久しぶりだ。 歩き始めてから1時間半ほどで白樺林に囲まれた素晴らしいロケーションの池山小屋に着き、その傍らに引水されている冷たい山の水で喉を潤す。 池山小屋から先も起伏の少ない快適な登山道が続き、樹間から残雪の木曽駒や宝剣岳が垣間見られた。 標高2000mを過ぎるとようやく登山道に残雪が見られるようになった。 意外にも下山してくる若い2人組のパーティーと出会ったので、念のため駒峰ヒュッテの状況を伺うと、入口の扉が凍り付いて開かなかったとの貴重な情報を得た(後でこれは誤報であることが分かった)。 登山道は途中から尾根の南側を巻くようになり、残雪の急斜面をトラバースする手前でアイゼンを着け、補助ロープで確保しながら登る。 しばらくすると登山道の雪は疎らになったが、アイゼンは脱着が面倒臭いので外さずに登る。 尾根の背に乗る手前の樹林帯からは再び積雪が多くなった。 天気は予報よりも悪く、陽射しは感じるものの青空はなく、寒気の影響により空の色は灰色に濁っていた。 先ほどのパーティーから話しを聞かなければ、予定どおり駒峰ヒュッテに行っただろうが、もし入口の扉が凍り付いて開かなかったら嫌だなと思う気持ちが募り、協議の結果、足下に見えている空木平避難小屋に行くことにした。 稜線から100mほど下って2時過ぎに避難小屋に着くと、意外にも小屋は屋根以外はまだ雪の下に埋れていた。 今年は雪が多いのか、あるいは残雪期には一般的に駒峰ヒュッテを利用するのか、いずれにせよGWには誰もこの小屋を利用していないことが分かった。 再び1時間ほど登り返して駒峰ヒュッテに行ってみることも考えたが、まだ陽が高かったのでとりあえず時間を計りながら皆で小屋の扉を掘り起こしてみることにした。 最初のうちは雪も柔らかく、スコップでブロック状に掘ることが出来たが、しばらくすると5センチほどの硬い氷の層が出てきたので、ピッケルで根気よく叩き割る。 1時間ほどで扉の下まで掘り下げることが出来て喜んだのも束の間、引き戸になっていた扉と下のレールとが凍っているようでびくともしない。 お湯を沸かして扉の下に流し込むと、僅かに扉が動くようになった。 当初から2センチほど開いていた扉をピッケルで根気良くこじ開けると、扉との隙間から小屋の内部に吹き込んだ大量の雪が裏側から扉を圧迫していることが分かった。 ピッケルで少しづつ内側の雪を剥がし、2時間ほど掛かってようやく体が通れるほど扉を開けることが出来た。 小屋の中に入ると入口付近には雪が吹き溜まり、床は全て水浸しになっていたので、安住の地となるまでにはさらに30分ほど掛かった。 ここまで登った体力以上の労力を費やしたような気もしたが、無事泊まれるようになったので、これもまた良い思い出となった。 西さんがボッカしたビールで乾杯し、焼酎とワインを飲みながらセッちゃんが作ってくれたマグロとローストビーフの手巻き寿司に舌鼓を打った。 他にこの小屋を訪れる人もいなかったので、思惑どおり貸切りでGWの報告会をすることが出来た。


池山小屋の傍らに引水されている冷たい山の水で喉を潤す


池山小屋から先も起伏の少ない快適な登山道が続いた


残雪の急斜面をトラバースする手前でアイゼンを着ける


尾根の背に乗る手前の樹林帯からは再び積雪が多くなった


池山尾根の上部を登る


池山尾根の上部から見た木曽駒方面


天気は予報よりも悪く、寒気の影響により空の色は灰色に濁っていた


空木平避難小屋はまだ雪の下に埋れていた


避難小屋の扉を雪の下から掘り起こす


1時間ほどで扉の下まで掘り下げることが出来た


セッちゃんが作ってくれたマグロとローストビーフの手巻き寿司に舌鼓を打つ


予定どおり貸切りとなった空木平避難小屋


    翌朝は3時半に起床し、5時過ぎに避難小屋を出発する。 空木岳が朝陽に照らされて輝き、昨日よりも良い天気に嬉しくなる。 トレースはないので登り易い所を選んで直登気味に登る。 雪は良く締っていたので登り易いが、稜線から吹き下ろす風が強くて閉口する。  稜線の風の強さいかんでは南駒ケ岳への縦走も危ぶまれたが、小1時間ほどで空木岳の山頂に着くと、稜線の方が逆に風が弱くて助かった。 山頂から朝の清々しい360度の大展望を充分に満喫してから主脈を南下する。 予想どおり稜線上に人の気配は全くない。 目標の南駒ケ岳が朝日に照らされ人待ち顔で鎮座している。 GW後の山らしく稜線上の登山道はほぼ雪から露出していたが、所々で登山道を覆っている残雪は気温がまだ低いため硬く氷化していたので、僅かな区間でもアイゼンとピッケルが必要だった。 アイゼンの脱着は面倒臭いが、縦走路は殆ど登山道を使えたため、コースタイムどおりに最初のピークの赤椰岳に着いた。 風もほぼ無くなり、絶好の登山日和となった。 指呼の間となった南駒ケ岳の頂稜部には雪が多く、所々の急斜面では補助ロープで確保しながら登る。 9時前に目標の南駒ケ岳に到着。 空木岳からは近すぎず遠すぎずの距離で残雪の山のプチ縦走を楽しめた。 山頂は大きな雪庇が発達し、残雪期ならではの造形美を誇っている。 南アルプス、御嶽、乗鞍、槍、穂高、そして白山などが空木岳や赤椰岳の山頂からと同様にすっきりと遠望され、とても気分が良い。 居心地の良い山頂に30分ほど滞在し、重い腰を上げて往路を戻る。 無雪期には木曽側からの良い周回ルートがあるため、空木岳から南駒ケ岳をピストンする人も稀だろう。 最後の空木岳への登り返しには骨が折れたが、快晴無風の天気が本当にありがたい。 11時半過ぎに再び静かな空木岳の頂に立ち、名残を惜しみながら正午に山頂を辞した。 山頂直下の駒峰ヒュッテに立ち寄ってみると、入口の扉は冬期でも使えるような小窓タイプになっていて、何の障害もなく開けることが出来た。 昨日出会ったパーティーはこのシステムを知らなかったのだろう。 小屋の内部は清潔だったが、スペースは3畳ほどと狭く、積極的な利用には向かない感じがした。 空木平避難小屋に戻り、荷物をまとめて下山する。 途中、今度は池山小屋に立ち寄ってみると、こちらは室内にトイレもあり、小屋の前には水が引かれ、まるで営業小屋のような雰囲気だった。 下山後は一昔前の温泉旅館の雰囲気が漂う『駒ケ根温泉ホテル』で入浴し、その近くの『雷音』(らいおん)という洒落たラーメン屋で夕食を食べた。


空木平避難小屋から見た朝陽に照らされる空木岳


天気は良いが稜線から吹き下ろす風が強い


空木岳の山頂直下を登る


爽やかな朝の空木岳の山頂


空木岳の山頂から見た木曽駒 ・ 宝剣岳 ・ 伊那前岳


空木岳の山頂から見た南駒ケ岳(右遠景は恵那山)


空木岳の山頂から見た御嶽山


空木岳の山頂


縦走路から見た赤椰岳(左)と南駒ケ岳(中)


稜線上の登山道はほぼ雪から露出していた


赤椰岳の山頂から見た空木岳(右)と三ノ沢岳(左奥)


赤椰岳の山頂から見た南駒ケ岳

   

赤椰岳と南駒ケ岳の鞍部から見た南駒ケ岳


南駒ケ岳の頂稜部


雪庇が発達した南駒ケ岳の山頂


南駒ケ岳の山頂



南駒ケ岳の山頂から見た空木岳(右)と木曽駒方面の山々


南駒ケ岳の山頂から見た越百山


南駒ケ岳から赤椰岳へ往路を戻る


赤椰岳から空木岳へ登り返す


再び静かな空木岳の頂に立つ


空木岳の山頂直下に建つ駒峰ヒュッテ


空木平避難小屋に戻る


空木平避難小屋から池山尾根に登り返す


池山尾根の上部を下る


白樺林に囲まれた素晴らしいロケーションの池山小屋


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