2 0 1 0 年  5 月  

《 2日 〜 4日 》    浄土山 ・ 獅子岳 ・ 五色ケ原 ・ 鳶山 ・ 鷲岳 ・ 越中沢岳

    立山駅 〜 室堂 〜 浄土山 〜 獅子岳 〜 五色ケ原(テント泊) 〜 鳶山 〜 越中沢岳 〜 鷲岳 〜 五色ケ原(テント泊) 〜 獅子岳 〜 一ノ越 〜 室堂 〜 立山駅  (往復)

    立山から薬師岳を縦走するルートは10年以上前の初夏に五色ケ原のお花畑を愛でに行き、その足で越中沢岳まで辿ったが、その後現在に至るまで越中沢岳と薬師岳の間が未踏破となっていた。 この間に目標とすべき顕著な山(ピーク)がないことと、車でのアプローチのしにくさがネックになっていたためだ。 今回のGWは山仲間のゆきさんを誘い、車2台でアプローチして懸案だった立山から薬師岳を縦走することにしたが、直前の山行で2回続けて計画を変更(今回のGWの計画も当初、猿倉〜白馬岳〜雪倉岳〜蓮華温泉〜猿倉のスキーツアーだった)したことで、計画そのものがいい加減となり、結果的にそれが原因で薬師岳への縦走が叶わなかった。 GWの初日の天気予報は良かったが、登山口となる立山駅や室堂周辺の混雑を過剰に恐れ(それなら何故計画したのか?)、2日目の朝一番のケーブルカーで室堂に上がることにした。 前日の昼過ぎに上信越道でゆきさんと合流し、松本ICから平湯温泉経由で下山口とした神岡の飛越トンネル手前に車を1台デポし、立山駅の近くの駐車場で前泊する。 翌朝5時半に立山駅に着くと、意外にもすでにケーブルカーの切符売り場の前は長蛇の列が出来ていた。 登山者も多いが殆どが一般の観光客だった。 やはりGWに室堂に行くという計画をしたこと自体、すでに計画は失敗だった。 図らずもケーブルカーではなく臨時の直通バスで室堂に上がれることになったが、室堂からの出発がすでに8時半を過ぎ、計画よりも1時間ほど出発が遅れてしまった。 大勢の登山者や山スキーヤーで賑わっている一ノ越の喧騒を嫌い、明瞭なトレースに従って浄土山を目指して登る。 室堂山から先に浄土山を巻いて薬師岳への縦走路に合流するトレースがあることを期待したが叶わず、少し戻ってから浄土山に登る。 天気は予報どおりまずまずだったが稜線は風が強く、休憩もそこそこに指呼の間の龍王岳方面に進む。 一ノ越経由で龍王岳の基部(富山大学立山研究所)に登ってくる登山者やスキーヤーは多く、結果的には一ノ越経由で登った方が早かったようだ。 龍王岳には登らずその基部から雪の下の登山道に沿って薬師岳への縦走路に入る。 室堂周辺での喧騒が嘘のように予想どおり縦走路のトレースは薄く、前方には登山者や山スキーヤーの姿は見えなかった。 鬼岳とのコルに下る急斜面では登山道が雪から露出している部分もあったが、ザックの重さで体が振られるため迷わず補助ロープでアンザイレンする。 前回辿った時の記憶は全く無く、コルから見上げた鬼岳や龍王岳の偉容に圧倒される。 先行者のスキーのシールのトレースに助けられ鬼岳を効率良く巻いて登ることが出来たが、すでに雪は柔らかくなり始め、もしトレースがなければツボ足で鬼岳を越えるのは大変だと思った。 ネットの記録も殆どがスキーを使った縦走であることが納得出来た。 鬼岳を上手く巻いて支尾根を2つ乗越し、獅子岳とのコルへトラバース気味に下るが、軟雪に足を取られ2回ほど足を滑らせてヒヤリとする。 コースタイムよりも早いことを期待していた下りが登り以上に時間がかかり、このままのペースでは今日の幕営地に予定している越中沢岳付近まで行くのは難しくなった。 今日中に越中沢岳付近まで行かれなければ、明日薬師岳を越えることは難しくなるので、計画どおりの2泊では飛越トンネルまで縦走出来ないことがこの時点で想像がついた。 室堂へ引き返して雷鳥沢で幕営し、奥大日岳から大日岳へ縦走することも考えたが、僅かな可能性に賭けて先に進むことにした。 コルから獅子岳に登り返すが、ここも予想以上に標高差があり、あらためて今回の計画の悪さを痛感した。 獅子岳の山頂直下でこちらに向かってくる2人組の山スキーヤーと出会った。 昨日の午前中は天気が悪く風も強かったのでザラ峠までしか行けず、おまけにスキー靴が壊れてしまったので引き返すことにしたとのことだった。 縦走路の1つのピークに過ぎないと思っていた獅子岳の山頂からは龍王岳がその名のとおりの重厚な面持ちで望まれ、盟主の立山よりも立派に見えた。 純白の五色ケ原が良く俯瞰され、薬師岳までの縦走路の長さに唖然とする。 眼下には黒部湖、そしてその対岸には針ノ木岳や蓮華岳を始めとする後立山の山々が連なっている。 時間も気になるが、期待以上の展望の素晴らしさにしばしば足止めされてしまう。 獅子岳からは偽ピークを2つ越え、ザラ峠に向けて標高差400mを一気に下るが、ここもコースタイム以上に時間がかかった。 ザラ峠から標高差で100mほど登り返し、ようやく五色ケ原の一角に着いた。 三ツ岳、野口五郎岳、赤牛岳などの裏銀座の山々を眺めながら五色ケ原の入口付近の緩斜面を登る。 だだっ広い雪原の真ん中に五色ケ原山荘の屋根が見えたので、それを目指してスキーのトレースを辿る。 もう一軒の山小屋の五色ケ原ヒュッテはまだ雪の下だ。 3時前に五色ケ原山荘に着いたが、ここまでの所要時間(6時間強)と午後の腐った雪の歩きにくさ、そして眼前の鳶山の大きさに圧倒され、ここで今日の行動を打ち切って幕営することにした。 雪が多くGWの開業が出来なかった山荘では3名のスタッフが除雪作業に追われていた。 スタッフの許しを得て、風が遮られる山小屋のすぐ脇にテントを張る。 予想どおりその後も他のパーティーは現れなかった。 水を作りながら明日以降の行動についてゆきさんと協議し、薬師岳への縦走は諦めて明日はここをベースに越中沢岳まで往復してゆっくりと展望を楽しむことにした。 意外にも夕食後は風が急に強まり、山荘の脇にテントを張ったにもかかわらず、夜中はテントを叩く風の音で殆んど眠れなかった。


大勢の観光客やスキーヤーで賑わう室堂


一ノ越の喧騒を嫌い、明瞭なトレースに従って浄土山を目指して登る


室堂平と別山


大日岳(左)と奥大日岳(右)


浄土山の山頂付近から見た立山


龍王岳の基部(富山大学立山研究所)から見た剱岳(中央奥)


龍王岳の基部から見た薬師岳(中央奥)と五色ケ原(手前の雪原)


鬼岳と龍王岳のコルから見上げた龍王岳の偉容に圧倒される


鬼岳と獅子岳のコルから見た獅子岳


鬼岳と獅子岳のコルから見た鬼岳


獅子岳の山頂


獅子岳の山頂から見た龍王岳(左)と立山(右)


獅子岳の山頂から見た針ノ木岳(中)


獅子岳からザラ峠へ下る途中から見た純白の五色ケ原


ザラ峠から五色ケ原へ登る


五色ケ原の入口付近から見た龍王岳(左)と獅子岳(右)


裏銀座の山々を眺めながら五色ケ原の入口付近の緩斜面を登る


だだっ広い雪原の真ん中に建つ五色ケ原山荘(背景は鳶山)


五色ケ原山荘のすぐ脇に幕営する


    翌朝は予報に反して雲が多くご来光は拝めなかったが、次第に天気は良くなり、絶好の登山日和となった。 6時半前にテントを出発して越中沢岳方面に向かう。 山荘からしばらく行った先で幕営していた4名のパーティーと出会う。 昨日は五色ケ原周辺でスキーを堪能し、今日はこれから室道方面に戻るとのことだった。 アプローチを度外視すれば確かに五色ケ原周辺はスキーのフィールドが多く楽しめそうだ。 一方、縦走者のスキーのトレースは鳶山を左から巻いて山頂は通らずにその直下の偽ピークから越中沢乗越へと下っていた。 越中沢乗越付近にはブロックが積まれたテントの跡が2つあり、目を凝らすと越中沢岳の山頂付近に登山者がいるのが見えた。 ザックは軽く雪も締っていたので、労せずして9時前に越中沢岳の山頂に着いた。 周囲に人影が全くない静かな越中沢岳の山頂で眼前の赤牛岳や水晶岳を始めとする黒部源流の山々の大展望に歓喜しながらのんびりと寛ぐ。 縦走路の先には“北アルプスの女王”の名に相応しい薬師岳や北薬師岳が孤高を誇っていたが、不思議と縦走出来なかったことに対する敗北感は全くなかった。 帰路は登山道のない奥木挽山方面への尾根を僅かに辿って赤牛岳や越中沢岳の展望を楽しんだり、往路では登らなかった鳶山や登山道のない鷲岳のピークを踏んだりしながら昼過ぎに五色ケ原山荘のテントに戻った。 もちろん、ここからも居ながらにして裏銀座や後立山の銀嶺が望まれる。 GW中の快晴の天気の日にこの雄大な景色を私達だけで独占していると思うと気分が良い。 山荘のスタッフの予想どおり今日も五色ケ原を訪れる人はいなかった。 強風に備えてテントの周りの雪のブロックを補強したが、再び日没後から風が強まり、翌朝まで吹き止むことはなかった。


テント場から見た未明の裏銀座や後立山の銀嶺


静寂の五色ケ原(背景は立山/中央奥)を出発する


五色ケ原から鳶山へ


五色ケ原山荘の背後の鷲岳にはスキーのシュプールが刻まれていた


鳶山への登りから見た鷲岳


スキーのトレースに従い鳶山の山頂を左から巻く


鳶山の山頂直下の偽ピーク


偽ピークから見た鳶山


偽ピークから見た薬師岳


偽ピークから見た越中沢岳


偽ピークから越中沢乗越へ下る


越中沢乗越から越中沢岳へ登る(背景は鳶山)


越中沢岳の山頂


越中沢岳の山頂から見た薬師岳


越中沢岳の山頂から見た赤牛岳(中央左)と水晶岳(中央右)


越中沢岳の山頂から見た五色ケ原と立山方面の山々


越中沢岳の山頂から見た黒部源流の山々


越中沢岳の山頂から見た鍬崎山


越中沢岳の山頂から見た奥木挽山(手前)と裏銀座の山々


奥木挽山方面への尾根から見た赤牛岳


越中沢岳から越中沢乗越へ下る


越中沢乗越から鳶山へ登る(背景は越中沢岳)


鷲岳へ登る


鷲岳の山頂


鷲岳の山頂から見た五色ケ原


    翌朝は天気予報が外れたのか、霧で周囲の見通しが悪かった。 雪が締っている早朝の時間帯に出発したかったが、風もまだ強くしばらくテント内で様子を伺う。 風が少し弱まった6時にテントを撤収して出発する。 濃い霧の中、図らずも自分達の付けたトレースが役に立った。 こんな天気では昨日無理をして薬師越えをしなくて良かったと思った。 ザラ峠から獅子岳へのきつい登りでは風が一段と強まって苦しめられたが、山頂に近づくにつれて風は収まり、霧もだいぶ晴れてきたのでホッとした。 獅子岳と鬼岳とのコル付近で雷鳥のつがいを見つけると、ゆきさんがとても嬉しそうに戯れていた。 天気は回復傾向にあるのか、一番懸念していた鬼岳のトラバースの登下降も視界が利いたので事なきを得た。 最後の龍王岳への急斜面の登りでは補助ロープで確保しながらスタカットで登る部分やアイスバーンのトラバースがあり、図らずも緊張感のある縦走となった。 11時前に龍王岳の基部(富山大学立山研究所)に着くと再びホワイトアウトの状況となってしまったが、ここまでくればあとは全く問題ないので無事辿り着けたことが嬉しかった。 さすがに今は誰もいないが、沢山のトレースに助けられて一ノ越に下る。 ゆきさんが再び雷鳥を見つけて戯れる。 せっかくなので立山くらいは登って帰ろうと思ったが、上空の霧は晴れそうもなかったので潔く室堂へ下る。 室堂周辺には相変わらず観光客が多く、2時間を要して立山駅に着いた。 立山駅からすぐの保養施設『ウェルサンピア立山』で汗を流し、最後の大仕事にそこからちょうど100キロ離れた飛越トンネルへ車を回収しに行った。


濃い霧の中、テントを撤収して出発する


視界は30mほどしかなく、自分達の付けたトレースが役に立った


獅子岳手前の偽ピークから見た五色ケ原方面


獅子岳手前の偽ピークから見た獅子岳の山頂


獅子岳の山頂に着くと風は収まり霧もだいぶ晴れた


冬毛の雷鳥


鬼岳とのからコル龍王岳へ登る(背景は鬼岳)


龍王岳の基部(富山大学立山研究所)に着くと再びホワイトアウトとなった


沢山のトレースに助けられて一ノ越に下る


雷鳥と戯れるゆきさん


登山者やスキーヤーで賑わう一ノ越


室堂周辺は相変わらず観光客が多かった


2 0 1 0 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P