2 0 0 9 年  6 月  

《 28日 》    燕岳 ・ 東沢岳 ・ 餓鬼岳

中房温泉 〜 燕岳 〜 東沢乗越 〜 東沢岳 〜 餓鬼岳 〜 東沢岳 〜 東沢乗越 〜 中房温泉  (周回/往復)

    北アルプスの主脈でまだ辿ったことのないルートが二つある。 一つは餓鬼岳から東沢乗越の間であり、もう一つは薬師岳から越中沢岳の間である。 今回は前者のルートを日帰りで往復することにした。 登山口の中房温泉の駐車場に前泊し、夜中の1時に出発。 合戦尾根は柏原新道や八方尾根と同様、夜中でも道に迷うことはない。 今日は餓鬼岳までの長丁場なので、燕山荘まで3時間半を目標に、ゆっくりと疲れないように登る。 汗はそれなりにかくが、さすがに夜中なので夏の暑さはない。 喧騒の表銀座もこの時間帯なら人通りはなく、穂高の町の夜景も綺麗だ。 2時間少々で合戦小屋に着き、朝食をゆっくり食べる。 まもなく夜が白み始めると、足元に残雪があらわれた。 突然、目の前を鮮明な青白い光が右から左に走った。 流れ星にしては明るすぎるので、隕石か何かだったのだろうか?。 槍の穂先も微かに見えるようになり、目標よりも少し早く燕山荘に着いた。 山小屋のテラスはご来光を待つ人達で賑わっていた。 休むことなく燕岳へ向かうと、間もなくご来光となり、5時前に燕岳の山頂に着いた。 ご来光には恵まれたが、予報どおり天気はあまり良くなく、早くも南からの湿った風が吹き始めた。 燕岳からは指呼の間に見える不遇な北燕岳の山頂直下から再び残雪が登山道を覆い始めた。 予想どおりトレースはなく、硬い雪にピッケルを打ち込みながら、キックステップで急斜面をトラバースしていく。 核心部となる次のピークの奥北燕からの下りでは、濃い霧のため正しいルートが分からず、右往左往したあげくの果てに、這松の茂みに残された古い赤布に騙されて一つ隣の急峻な谷を下ってしまった。 ピッケルの制動が利かず、二人揃って5メートルほど急斜面を滑落したのを機に引き返したが、登り返しにも時間が掛かる。 軽量化のためアイゼンを持ってこなかったことが悔やまれる。 霧が少し晴れ、ようやく正しいルートを探し当てたものの、急斜面の雪渓を後ろ向きになって一歩一歩足を蹴りこみながら慎重に下らなければならずもどかしい。 8時過ぎに中房温泉への下山ルートとの分岐である東沢乗越に着いたが、燕岳からはコースタイムよりも1時間以上多くの時間を費やしたのみならず、体力を無駄に消耗してしまった。 天気が予報以上に悪くなればここから中房温泉へ下山することも考えていたが、とりあえず展望の利く東沢岳まで登ってみることにした。 東沢乗越から40分ほどで東沢岳に着くと、ちょうど餓鬼岳から縦走してきた数人のパーティーと出合った。 天気は生憎の高曇りであったが、岩の露出した東沢岳からの展望は新鮮で、眼下に見えた高瀬湖を挟んで対峙する裏銀座の山並みはもちろんのこと、燕岳がいつもと違う面持ちで望まれ、これから辿る餓鬼岳とその手前に荒々しい中沢岳(剣ズリ)の岩峰のピークが立ちはだかっていた。 ここから餓鬼岳まで往復5時間ほどであるが、空を見る限り少なくとも午前中に雨の降り出すことはなさそうだったので、予定どおり餓鬼岳を目指す。 東沢岳から少し下り、燕岳周辺と似たようなユニークな形の岩塔が乱立する稜線を辿る。 東沢岳とほぼ同じ高さの無名のピークまで登り返すと、登山道は中沢岳の左側の樹林帯に向かって一気に標高を下げていく。 ガレた崩壊地をトラバースする辺りで疲れの見えてきた妻と別行動することとなり、私のみ餓鬼岳まで行くことになった。 中沢岳の岩峰の基部を時計回りに回り込むようにして進み、鬱蒼とした樹林帯の中にジグザグにつけられた急坂を喘ぎながら登ると、大小の岩が堆積する展望の良いピークの一角に躍り出たが、三角点や山頂の標識はなく、地図どおりそこは中沢岳の山頂ではないようだった。 岩伝いにルートを探せば真の山頂まで行けそうな感じであったが、妻と別行動になってしまったのでやむなく今回は先を急ぐ。 中沢岳から先は小さなアップダウンが連続する面白い岩稜となった。 小さな梯子が随所に架けられ、スピーディーに行動出来る。 見た目には標高を落とさずに餓鬼岳まで稜線を辿れそうだったが、最後は雪の急斜面を山小屋のスタッフによって刻まれた大きなステップに導かれ、再び樹林帯の中の鞍部まで下る。 鞍部からは緩やかにだらだらと登り返すと、ようやく赤い屋根の餓鬼岳小屋が近づいてきた。 11時半過ぎにようやく餓鬼岳小屋に到着。 小屋の前のベンチに荷物を置き、空身で目と鼻の先の山頂に向かう。 山頂にはこれから唐沢岳に向かう登山者が1人いた。 午後からは下り坂という予報に反して天気は尻上がりに良くなり、お昼近いこの時間帯の展望としては申し分ない。 眼前には針ノ木と蓮華、そして立山と剣が頭を揃え、爺や鹿島槍も良く見える。 しかし何といっても、辿ってきた燕岳からの縦走路と遥か遠方の槍の穂先がはっきり見えたことが驚きだ。 餓鬼岳の頂に立つのはこれで3回目だが、いつ来てもこの頂は印象深い。 4年前に山仲間の西さん&セッちゃんと白沢三股から餓鬼岳を経由して唐沢岳を日帰りで登ったことは未だ記憶に新しい。 写真を撮っただけで早々に山頂を下り、山小屋で帰路の水を買って正午前に出発。 帰路ではさすがに足が重く感じられ、目標を失った身には堪える。 午前中の日照不足で気温は低く、夏山の暑さがないのが救いだ。 東沢岳手前のピークで中沢岳で引き返した妻と合流したので、ここからは少しペースを落とす。 静かな東沢岳の山頂で最後の展望を楽しみ、東沢乗越から中房温泉へと下る。 乗越直下の沢の源頭部はキヌガサソウとサンカヨウが人知れず咲き乱れていた。 中房川の最後の高巻きの登りには閉口したが、夕方6時前には中房温泉に下山することが出来た。


喧騒の表銀座もこの時間帯なら人通りはない(合戦小屋前)


ご来光を待つ燕山荘


燕山荘付近から見た燕岳


燕山荘付近から見た槍ヶ岳


燕岳山頂から見た北燕岳(左)と奥北燕(右)


北燕岳から見た燕岳


東沢岳から見た燕岳 (帰路の撮影)


東沢岳から見た中沢岳(中) ・ 餓鬼岳(右) ・ 唐沢岳(左) (帰路の撮影)


東沢岳から先の稜線には燕岳周辺と似たような岩のオブジェが乱立する (帰路の撮影)


東沢岳から見た裏銀座の山並み


中沢岳付近の稜線から見た餓鬼岳


餓鬼岳の山頂


餓鬼岳の山頂から見た中沢岳(右)と辿ってきた燕岳からの縦走路


中沢岳の頂稜部


中沢岳付近の稜線から見た唐沢岳(背景は立山 ・ 剣 ・ 針ノ木)


東沢乗越付近から見上げた東沢岳の頂稜部


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