2 0 0 9 年  6 月  

《14日》    御嶽山

    濁河温泉 〜 五ノ池小屋 〜 摩利支天山 〜 ニノ池 〜 剣ヶ峰 〜 ニノ池 〜 五ノ池小屋 〜 継子岳 〜 五ノ池小屋 〜 濁河温泉  (往復)

    久々に山仲間の西さん&セッちゃんと山に行くことになったが、生憎梅雨入りしてしまったので天気予報が一番良さそうな山域から登る山の候補を絞っていくと御嶽山になった。 御嶽山は5年前のGWにやはり西さん&セッちゃんと田ノ原から登り剣ヶ峰の山頂で幕営したが、翌日は天候が急変し、頂上稜線を散策することも出来ず暴風雨の中を下山した失意の山だ。 登山を始めたばかりの頃や、今年の4月にもスキーで訪れたが、いずれも最高点の剣ヶ峰のピークしか踏んでなかったので、今回は全く違った発想で登山口を岐阜県側の濁川温泉とし、まだ登ったことのない摩利支天山と継子岳の二つのピークを踏む計画とした。 2台の車を使った縦走や交差縦走も可能であったが、天気がやや不安定なので1台の車で登山口から往復することにした。 登山口の濁川温泉の市営駐車場の脇にテントを張って前夜祭を行い、翌朝4時半過ぎに食べ過ぎでもたれた胃袋を気にしながら駐車場を出発。 夜中に雨が降った影響か、空は冴えない鉛色で空気は重い。 早朝から野鳥を撮るカメラマンで賑わっていた草木谷に架かる橋を渡り、里宮神社の境内の脇から山道に入る。 濁川温泉の標高は1800mもあるため暑さを気にせず登れるが、相変わらず天気が冴えないことが気掛かりだ。 雪解けで水量の多い仙人滝を左の眼下に望み、再び草木谷を立派な橋で渡るとようやく登山道らしくなってきた。 古くから信仰登山で賑わった登山道は、いたる所に木の板が敷き詰められ、飛騨頂上の五ノ池小屋まで100mおきに標識がある万人向けの道だ。 鬱蒼とした樹林帯の展望のない地味な道を黙々と1時間ほど登ると、やや荒廃した『のぞき岩避難小屋』に着いた。 天気が良ければ草木谷の向こうに摩利支天山が大きく望まれるはずだが、濃い霧のためその山肌すら見えない。 避難小屋から上に少し登った標高2400m辺りから登山道を雪が覆い始め、間もなく8合目の『お助け水』に着いた。 雪はすでに硬く締りトレースもあるので、踏み抜くことはない。 勾配が少し急になったかと思うとすぐに森林限界となり、這松の切り裂きの中を登る。 霧はますます濃くなり、辺り一面何も見えない。 前回のリベンジも果たせぬまま一日が終わってしまいそうな悪い予感が脳裏をかすめる。 次第に風も強まり、暑いどころか寒く感じる。 皆一様に無口になり、深い霧の中を黙々と登り続ける。 足を止めて風景を愛でることもなかったので、登山口から3時間足らずで飛騨頂上の五ノ池小屋に着いた。 寒々しい小屋の前で写真を撮っていると、小屋のスタッフの方から「中へどうぞ」と声が掛かったので、ご好意に甘えることにした。 地味な外見とは違い、木の香りが漂うあかぬけた山小屋の中は宿泊客と日帰りの登山者が数名寛いでいた。 石油ストーブが灯る快適な食堂で天候の回復を待ちながら、1時間近く居候することになってしまった。 眼前に聳える摩利支天山が霧の中から一瞬姿を現したので、ようやく重たい腰を上げて山小屋を出発する。 再び霧に閉ざされてしまった稜線を黙々としばらく登ると摩利支天山への分岐に着いた。 進路を右にとり、痩せた岩稜の下をトラバース気味に進んで指呼の間の摩利支天山に向かう。 意外にも山頂に近づくにつれて霧は少しずつ晴れ、山頂では不完全ながらも周囲の景色を眺めることが出来た。 天気がすでに下り坂であれば剣ヶ峰には登らず、ここから引き返そうとも考えたが、天気の回復の兆しが見えてきたので、分岐に戻って剣ヶ峰に向かう。 分岐からサイノ河原避難小屋の前を通り、鞍部にあるサイノ河原に向かって下る。 再び霧が周囲を覆い始め、展望はなくなった。 無数の石仏が乱立するというサイノ河原はまだ雪の下だ。 サイノ河原から雪の斜面をひと登りして二ノ池に着く。 まだ開業していない二ノ池の山小屋の前で休憩していると天気が急速に回復し、指呼の間に剣ヶ峰の山頂が見えた。 足取りは急に軽くなり、残雪をしばらく踏んでから雪の消えた稜線の登山道に合流し、10時半に剣ヶ峰の山頂に着いた。 田ノ原からの大勢の登山者で賑わう山頂からは辿ってきた摩利支天山や二ノ池、そして火口の一ノ池が良く俯瞰された。 30分ほど喧騒の頂上で休憩した後、時計回りに外輪尾根を周遊する。 火口の縁から噴き出している噴煙の硫黄臭が鼻につく。 外輪尾根の最高点からは最新の地図では登山道が消されている不遇な継母岳が見えた。 継母岳への踏み跡は見られたが標識はなかった。 外輪尾根の周遊を終え、摩利支天山を望みながら二ノ池経由でサイノ河原に下る。 午後からは下り坂という予報であったが、サイノ河原避難小屋から三ノ池が良く俯瞰された。 摩利支天山への分岐へ登り返すと、朝方は濃い霧に煙っていた五ノ池とその背後に鎮座する継子岳もすっきり望まれ、気持ちも和んだ。 五ノ池小屋に不要な荷物をデポし、継子岳を往復する。 好天のピークは過ぎ、再び雲や霧が湧き始めた。 緩やかな勾配の道を20分ほど登り、1時過ぎに継子岳の山頂に着いた。 天気が良ければ乗鞍や北アルプスの絶好の展望台となる頂も今日の天気ではそれを望むべくもなかった。 それどころか雨粒がパラパラと落ちてきたので、早々に五ノ池小屋へ下山する。 幸い雨に濡れることなく五ノ池小屋に着き、帰り支度をしていると、突然雨が激しく降り始めた。 前回の悪夢が一瞬脳裏をかすめたが、間もなく雨はピタリと止み、図らずも夏山にありがちな下山時の暑さに苛まれることなく2時間足らずで濁川温泉に下山することが出来た。 朝方もそうであったが、一番天気の悪い時間帯に快適な山小屋の中にいられたことは本当にラッキーだった。 濁川温泉の露店風呂には入らず、木曽駒高原の麓の温泉旅館の鉄分の多い茶色の温泉に入り帰途についた。


里宮神社の境内の脇から山道に入る


森林限界を越え、深い霧の中を黙々と登り続ける


登山口から3時間足らずで飛騨頂上の五ノ池小屋に着く


霧に閉ざされた稜線を摩利支天山への分岐に向けて登る


摩利支天山の山頂


摩利支天山から分岐に向けて下る


サイノ河原から雪の斜面を二ノ池へ登る


二ノ池から見た剣ヶ峰


二ノ池から剣ヶ峰へ登る


剣ヶ峰の山頂直下


剣ヶ峰の山頂


山頂から見た一ノ池


山頂から見た摩利支天山


山頂から見た二ノ池と継子岳


時計回りに外輪尾根を周遊する


外輪尾根から見た剣ヶ峰


外輪尾根の最高点から見た継母岳


二ノ池と二ノ池本館


サイノ河原から見た摩利支天山


サイノ河原避難小屋からは三ノ池が良く俯瞰された


摩利支天山への分岐からは五ノ池とその背後に鎮座する継子岳がすっきり望まれた


緩やかな勾配の道を継子岳へ登る


継子岳の山頂


濁川温泉スキー場から見た摩利支天山(右)と継子岳(左)


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