2 0 0 9 年  6 月  

《 7日 》    甲斐駒ケ岳

竹宇駒ケ岳神社 〜(黒戸尾根)〜 甲斐駒ケ岳  (往復)

    土曜日に法事があり、日曜日はそこからのアプローチが良い甲斐駒への日帰り登山となった。 登山口の竹宇駒ケ岳神社(尾白川渓谷駐車場)に前泊し、高度計の標高を770mにセットして4時前に出発。 10分ほど前に熊鈴を鳴らしながら先行していく人影が見えた。 黒戸尾根は長いと敬遠されがちだが、途中で林道などが一切横切ることなく、麓の集落からダイレクトに3000m級の高嶺に登れる希少なクラッシックルートである。 15年ほど前のGWに初めてこの尾根を辿り、予想以上の積雪に敗退して以来、今回で4回目となったが、3年前の6月に夏のヨーロッパアルプス登山に向けての『訓練山行』と称して、同行した西廣夫妻と競いながら早足で駆け登ったことが記憶に新しい。 今回も夏の海外登山(ワスカラン)に向けての訓練という意識も多少あったが、山にどの程度残雪があるかを確めたいという気持ちが強かった。 まだ入梅していないせいか蒸し暑さはなく、朝食のための休憩を長めに取ったが、1時間半ほどで横手との分岐に着く。 分岐から先も尾根らしくないなだらかな新緑の樹林帯が延々と続く。 『刃渡り』という花崗岩の露出した痩せ尾根でようやく周囲の展望が得られ、鳳凰三山の地蔵岳が大きく望まれたが、山肌はすでに黒く、3か月前のラッセルが懐かしい。 後から登ってきた若い方が傍らをあっという間に追い越していった。 前山である黒戸山の山頂をかすめ、その北側斜面を5合目小屋に100mほど下る。 以前から老朽化していた小屋は完全に撤去されていた。 ここからはようやく尾根が顕著になり、急峻な所には梯子が何段にも架けられている。 積雪期にはここが核心となるが、今日は雪のかけらも無い。 間もなく七丈小屋に着くと(8時過ぎ)、意外にも一人の外国人がベンチで休んでいた。 声を掛けると、彼が熊鈴の主であることが分かったが、日本語がとても上手なことに驚いた。 彼はアルジェリアから貿易関係の仕事で日本に来られて13年になるとのことで、登山も日本に来てから始められたという。 しばらくすると、今月から営業を始めた山小屋の管理人さんも私達の話の輪に入ってきたが、その中で大岩山から三ツ頭(甲斐駒と鋸岳を繋ぐ稜線の中間にある)の間に以前あった登山道(八丁尾根)を現在山梨県が整備しており、来年あたりに完成するという耳寄りな話を聞いた。 七丈小屋からは少し疲れのみえてきた妻と別れて先行し、彼と相前後しながら山頂に向かう。 七丈小屋から僅に登った先からようやく残雪が登山道を覆い始めたが、先行者のトレースもあり、最後までアイゼンやピッケルの出番はなかった。 8合目まで登ったところで、山頂付近に霧がかかり始めた。 少しでも展望の良い状態の山頂を踏みたかったので、彼とも別れて先を急ぐ。 陽の当る岩の尾根には雪がなく、登山道が岩の陰に回り込んだ所だけに残雪がみられた。 9合目を過ぎると、登山口を3時に出発したという方、途中で追い越していった若い方、そして七丈小屋に幕営していたという2人組みのパーティーが相次いで下山してきた。 10時過ぎに誰もいなくなった山頂に着くと、唯一眼前の仙丈ガ岳だけがすっきりと望まれ、辛うじて霧の中から顔を覗かせている北岳と間ノ岳の頂稜部が栗沢山の向こうに見えた。 意外にも山頂には僅かばかりの残雪があった。 高度計を見ると2850m(山の標高は2967m)であり、高度計で測った登山口からの単純標高差は約2100m、黒戸山の登下降が約100mあったので、往復の累積標高差は約2300mということになる。 しばらくすると彼と妻が相次いで山頂に着いた。 再び彼と雑談を交わすと、彼の母国のアルジェリア(アフリカ北部)にはアトラス山脈という2000m級の山々があるが、登山口までの道路や交通機関が乏しいので、一般人の登山には不向きであるという。 日本の山の良さは、登山口までのアプローチが良く縦走も可能だからだそうで、今年のGWも黒戸尾根を登り、北沢峠を経て仙丈ガ岳に登ったという。 雲が少し黒くなってきたので、11時に皆で下山する。 もう誰も登ってこないと思ったが、9合目付近でもう一人の若い方とすれ違う。 七丈小屋で再び管理人さんと雑談を交わし、雲で陽射しの遮られた快適な尾根を延々と下り、夕方4時半に登山口に着いた。 帰りの中央道と並行する甲州街道は事故も手伝って大渋滞し、自宅に着いたのは12時近くになってしまった。


竹宇駒ケ岳神社から尾白川に架かるつり橋を渡る


横手との分岐から先も尾根らしくないなだらかな新緑の樹林帯が延々と続く


『刃渡り』から見た地蔵岳(左)と高嶺(右)


5合目小屋跡付近から見た甲斐駒の山頂方面


七丈小屋までは雪のかけらも無かった


8合目の手前から見た9合目


山頂付近には僅かばかりの残雪があった


甲斐駒の山頂から見た仙丈ガ岳


甲斐駒の山頂から見た北岳(左)と間ノ岳(右)


甲斐駒の山頂から見た鋸岳


甲斐駒の山頂


登山道が岩の陰に回り込んだ所だけに残雪が見られた


雲と樹林で陽射しの遮られた快適な尾根をひたすら下る


2 0 0 9 年    ・    山 行 の 報 告    ・    T O P