2 0 0 9 年  4 月  

《 29日 》    蓮華岳 <スキー>

扇沢 〜 針ノ木峠 〜 蓮華岳 〜 大沢右俣 〜 扇沢  (周回)

    GWの針ノ木方面のスキーは今回で3度目だ。 1回目はマヤクボ沢出合から針ノ木岳の山頂に直登し、山頂から快適な春のザラメ斜面を滑ったが、2回目は天候不順で敗退。 この時も針ノ木岳を目指して先頭で登っていたが、風がとても強いばかりか中間部のデブリが酷く、帰りも滑りが楽しめないと判断し途中で下山したが、こともあろうにその直後に雪崩が発生し、後続の3名の方が亡くなられるという信じられないような事故があり、色々な意味で考えさせられる山行となった。 この事故以来、気分的にここを滑ることはないだろうと思っていたが、山の魔力には勝てずスキーで再訪することになった。 今回は扇沢から針ノ木峠を経由して蓮華岳に登り、山頂付近から大沢という沢を滑る周回ルートとした。 登山口の扇沢には臨時の山岳指導所が設けられており、指導員の方から雪は例年の同時期に比べて少ないが、3日前の日曜日に稜線で新雪がかなり積ったという注意を受けた。 標高が高い所の雪は多く、低い所の雪が少ないのが今シーズンの春山の特徴だ。 7時過ぎに登山口を出発。 前2回はいずれも登山口からスキーで登ったが、今回は雪の量が少ないのでスキーを担いで登り始める。 登山道に沿って除雪された車道を部分的に絡めながら20分ほど登ると、ようやく足元の雪が安定してきたのでスキーを履く。 大沢小屋の手前の堰堤はトレースに従い右岸を登る。 堰堤を越えると前方に先行しているパーティーの姿が散見された。 ここから蓮華岳までは全く迷う心配がないので気は楽だ。 天気は予報どおりの快晴で、風も弱く絶好の登山日和だ。 大沢小屋付近からは左手に滑走ルートとなる大沢らしき所が良く見えたが、新雪の直後なので予想どおりシュプールはなかった。 大沢小屋からほぼ同じペースで登った男性2人のパーティーに話しを伺うと、彼らも大沢を滑られるとのことだった。 結局このパーティー(長野市のM島さんとI藤さん)とは蓮華岳の山頂まで同じペースで登ることとなった。 図らずも新雪の恩恵で沢(針ノ木雪渓)のデブリは綺麗に埋まり、上部のみならず中間部も今までの中で一番美しい。 大沢を滑るのを止めて、こちらにしようかという誘惑が頭をかすめる。 3年前の事故の当日は本当に酷いデブリだったことが鮮明に思い出された。 間もなく雪崩の事故現場付近となり、心の中で故人のご冥福を祈った。 あの時交わした最期の会話は一生忘れることはないだろう。 陽射しは強いが気温はあまり上がらず、シールが良く効く快適な登高となる。 こいう時はモナカが怖い。 振り返ると爺ヶ岳や岩小屋沢岳が新雪で綺麗だ。 マヤクボ沢出合には先行していた10人ほどのスキーヤーやボーダーが思い思いに休憩していた。 1回目の時はマヤクボ沢に向かう人が圧倒的に多かったが、今日はマヤクボ沢へのトレースは薄く、逆に針ノ木峠へはシールやツボ足のトレースが明瞭に印されていた。 私達は予定どおり針ノ木峠へ向かう。 すぐにシールでは登りにくくなり、ツボ足に切り替える。 登高ペースを合わせるため、妻のスキーも一緒に担ぐ。 爺ヶ岳の奥に真っ白な鹿島槍も見え始め、峠や山頂からの展望に期待が持てる。 意外にも後続のパーティーはまばらで、またどちらかと言うと針ノ木峠へ登るパーティーの方が多かった。 峠に近づくにつれてマヤクボ沢が良く見渡せるようになったが、本当に今日は綺麗な素晴らしい斜面を披露している。 先行者の立派なツボ足のトレースのお蔭で扇沢から4時間ほどで針ノ木峠に着いた。 針ノ木小屋はまだ半分雪の下に埋もれていた。 峠から針ノ木岳へ登る尾根にはトレースがなく、逆に蓮華岳方面には新しいツボ足のトレースと先行するパーティーの姿が見えた。 峠からの展望は申し分なく、眼前の北葛や七倉はもちろんのこと、槍や穂高、水晶や野口五郎などの裏銀座の山々が雲一つ無い青空の下に望まれた。 新雪のお蔭でGWというよりは4月上旬くらいの冬山の名残を感じさせるような清々しい風景だ。 ありがたいことに風もなく、予定よりも早目に着いたので、30分ほどのんびり休憩する。 峠からは再びM島さんとI藤さんのパーティーと相前後して蓮華岳の山頂を目指す。 稜線も雪が多く、ツボ足での快適な登高が続く。 間もなくお約束の剱や立山が見え始め、山々の展望にさらに磨きがかかる。 これで大沢の滑りが良かったら完璧だ。 左手に素晴らしい無木立の斜面が現れたが、ベテランのI藤さんから、ここは赤石沢の源頭で山スキーのルートにも一応なっているが大沢ではないと教えてもらう。 蓮華岳の山頂が指呼の間になると、その手前の広い沢の源頭にスキーが数本デポしてあり、そこが大沢であることが分かった。 滑り出しは少し急だが、ザラメなら問題ないだろう。 大沢も意外と人気があるようだ。 山頂まで雪はたっぷりあったので、スキーをデポせずそのまま山頂に向かう。 針ノ木峠から素晴らしい展望を楽しみながら1時間半ほどで蓮華岳の山頂に着いた。 蓮華岳は登頂回数が多い山の一つだ。 山頂から北東の方向にも素晴らしい大斜面が広がっていたが、再びI藤さんから、上部は快適だが下部に滝が出てきてやっかいだと教えてもらう。 相変わらず山頂も無風で、新雪を冠した北アルプスの山々の大展望を肴に1時間近くのんびりと寛ぐ。 すでに大沢を滑られた経験のあるベテランのお二人は、今日の雪の状態を見て、山頂から北の方向にダイレクトに滑り込み、途中から大沢に合流するルートを滑ることになった。 私達は予定どおり大沢を滑ることにしたので、お二人とはここでお別れすることとなった。 山頂でゆっくり時を過ごしたので、他のパーティーは全て大沢を下ってしまい、図らずも私達だけで貸切りとなった。 山頂から稜線を大沢の取り付きまで滑るのは面白くないので、大沢の上流で合流するよなライン取りで滑り出す。 天気は良いが気温が低いため、水分が多い新雪の斜面はアイスバーンのように表面が硬くてエッジが効かない。 やはりこの時期に降る雪はスキーには大敵だ。 仕方なく途中から大沢の源頭を目指して斜滑降で滑り、大沢の上部から先行者のシュプールに従って滑ることにした。 上部の雪は部分的に硬く、また斜面の傾斜が見た目より急だったので、私達の技術では全く滑りを楽しむことは出来ない。 滑落の恐れがあるので、2〜3回ターンしては立ち止まり、足元の雪質を確めながらの修行のような滑りとなる。 先週の飛騨沢での最高の雪質を足が覚えているのでなおさらだ。 遥か下の方では既に核心部を滑り終えたお二人が、私達の滑りを心配そうに見上げている?ような姿が見て取れたが、怪我をしてもつまらないので眼前の風景を愛でながら小刻みなターンを繰り返して滑る。 間もなくお二人が滑った山頂からのシュプールと合流したが、こちらの方が斜面が荒れていない分、良かったようにさえ思えた。 中間部からは雪も緩んで少し滑り易くなったが、今度はデブリが出てきてやっかいになる。 お二人が痺れを切らして?下山していく後姿が見えた。 下部になるとようやくザラメとなり、ほんの少しだけ滑りを楽しめたが、下から見上げた大沢(右俣)の核心部は急峻でかつ狭く、雪質が良くないと私達のような素人には楽しめないルートであることを実感したが、スキーでなければ辿れないルートを経験出来たという満足感だけは残った。 大沢小屋まで滑ると、あとは扇沢まで消化試合だ。 午後4時前、蓮華岳の山頂から1時間半ほどで扇沢に下山した。


大沢小屋手前の堰堤付近を登る


大沢小屋付近から見た大沢


新雪の恩恵で沢(針ノ木雪渓)のデブリは綺麗に埋まり、上部のみならず中間部も美しい


大沢小屋から蓮華岳の山頂まで同じペースで登った長野市のM島さんとI藤さんのパーティー


新雪で綺麗な爺ヶ岳(右)と岩小屋沢岳(左)


マヤクボ沢出合付近


マヤクボ沢出合から見た針ノ木峠方面


綺麗な素晴らしい斜面を披露しているマヤクボ沢


先行者の立派なツボ足のトレースで針ノ木峠を登る


針ノ木峠から蓮華岳方面には新しいツボ足のトレースと先行するパーティーの姿が見えた


針ノ木小屋はまだ半分雪の下に埋もれていた


針ノ木峠付近から見た針ノ木岳


針ノ木峠から蓮華岳へ登る


針ノ木岳とマヤクボ沢


剱や立山が見え始め、山々の展望にさらに磨きがかかる


赤石沢の源頭から見た爺ヶ岳(右)と鹿島槍(左)


蓮華岳の山頂とその手前の大沢の源頭


蓮華岳の山頂


蓮華岳の山頂から見た大沢の源頭


山頂から北の方向にダイレクトに滑り込むM島さんとI藤さん


大沢の上部を先行者のシュプールに従って滑る


2〜3回ターンしては立ち止まり、足元の雪質を確めながら滑る


上部の斜面の傾斜は見た目より急だ


中間部からは雪も緩んで少し滑り易くなった


中間部から上部を振り返る


中間部から下部へ


下部になるとようやくザラメとなり、ほんの少しだけ滑りを楽しめた


下から見上げた大沢(右俣)は急峻でかつ狭く、手強いルートであることを実感した


下部から大沢小屋に向けて滑る


大沢小屋から扇沢までは消化試合だ


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