山行の報告（２００９年３月）

２　０　０　９　年　　３　月

《７日》七面山・希望峰

羽衣～敬慎院～七面山～希望峰（往復）

直前の天気予報が雨模様から晴れに変わったので、一番天気が良さそうな南アルプス前衛の七面山と隣接する希望峰に行くことにした。　だいぶ以前に冬期の七面山を訪れたことがあるので、今回は尾根伝いに八絋嶺まで行ってみたかったが、積雪期の日帰りでは望むべくもなかった。　七面山の山頂付近には身延山久遠寺の奥宮ともいうべき『敬慎院』というお寺があり、宗教色の濃い山である。　前回は敬慎院への参詣者の喧騒を嫌って、角瀬から『裏参道』というルートを往復したが、今回は七面山から希望峰の間でラッセルが予想されるため、より短時間で行ける『表参道』を往復することにした。　登山口となる羽衣の参道の入口の駐車場には１０台ほど車が停まっていたが、登山者のものは僅かであろう。　８時に駐車場を出発。　表参道という名称に相応しく、登山道は杉の大木の間を行く幅の広い山道となっていたが、登山口の標高は約５００ｍほどなので、参詣者も標高約１７００ｍにある敬慎院までここを登ることになる。　そのため急勾配の所にはスリップ防止のための土嚢が積まれ、数百メートル毎に屋根のあるベンチなどが置かれていたが、予想に反して石碑や石仏といった宗教的なものは一切無かった。　道幅は最後まで狭まることはなく岩場とかも皆無だったので、トレイルランやボッカ競争のコースには最適だろう。　登り始めて間もなく樹間から白峰三山や金峰山などがすっきりと望まれ、今日の好天を約束してくれた。　逆光ながら毛無山の背後に富士山も見える。　今年は雪不足なので、敬慎院の近くまで雪がないのではと思っていたが、標高１０００ｍ位の所から登山道を雪が覆うようになった。　途中にあった『中適坊』という茶店を兼ねた僧坊の方に話しを伺うと、３日前に３０センチほどの降雪があったが、昨日の雨で半分位溶けたとのことであった。　傘を杖代わりに下ってくる参詣者と途中で何度かすれ違う。　何番目かの方に話しを伺うと、昨日は敬慎院に泊まられたとのことであった。　立派な山門をくぐると間もなく展望台と敬慎院の境内との分岐があり、前者を辿る。　眼下に身延山を見下ろす展望台からは富士山の眺めが良かった。　ここにも立派な山門があり、山門越しに見える富士山の写真を撮る。　展望台でしばらく休憩した後、スパッツを着けて七面山の山頂へ向かう。　ここからが実質的な登山の始まりだ。　今日の先行者はおらず、３日前の降雪で先週までのトレースは完全に消されてしまったが、その形跡が凹面となって雪の上に印されていたので、ルートも明瞭で脛までの軽いラッセルで済んだ。　コースタイムの５割増位のペースで展望に恵まれない樹林帯を１時間ほど登って行くと、ようやく前方の樹林が切れ、陽射しに恵まれた明るい山頂が見えた。　その風景を写真に収めようとカメラを構えたところ、付近に人の気配を感じた。　八絋嶺からの縦走者かな？と思ったところ、それはカモシカだった。　全くの突然の出会いだったが、過去に何度もこういう場面でハチ合わせしたことがあるので、そのまま何枚かカモシカを入れた風景の写真を撮る。　しばらくその場でにらめっこをしていたが、後から妻が追い着いてくると、山の主らしく悠然と反対方向へ立ち去っていった。　山頂は明るく開けているが木々の背が高く、すっきり見えたのは聖岳くらいでそれ以外の南アルプスの山々は展望が悪かった。　山頂でしばらく休憩した後、展望の良い希望峰へと向かう。　予想どおり八絋嶺への縦走路にはトレースが無く、膝下のラッセルとなったのでワカンを着ける。　七面山までとは逆に赤テープが随所に見られるようになり、ルーファンに全く問題がないのがありがたい。　七面山の山頂の標識には『希望峰まで１時間』と記されていたが、４０分ほどで希望峰の山頂らしき展望の良い場所に着いた。　真正面の黒々とした笊ケ岳が赤石岳を隠していたが、白峰三山・塩見岳・荒川岳・聖岳・上河内岳が青空の下に一望され、ラッセルの苦労も報われた。　雪に埋もれていたのか、山頂の標識が見当たらなかったので先に進むことにした。　３０分ほど小さな登り下りを繰り返して尾根を辿ったが、それらしき所もないので引き返す。　帰宅後にネットで調べたところ、やはり最初の展望地が希望峰の山頂であった。　尾根を徘徊しているうちに天気は急速に下り坂となり、希望峰に戻った時はすでに周囲の山々は鉛色の雲に覆われていた。　長居は無用なので直ちに七面山へと向かう。　もう誰もいないと思われた山頂で一人の登山者と出会い、ラッセルの御礼を言われる。　その方も今日初めて出会った登山者が私達とのことであった。　敬慎院への下りでは霧がかかり、幻想的な雰囲気に包まれた。　敬慎院を参拝してから往路の表参道を足早に下り、５時半に駐車場に戻った。　　　　　　　　　　　