8月28日、通い慣れたエッツタール(谷)の中心的なリゾートのセルデンから13キロ先の車道の終点のオーバーグルグル(1907m)に向かう。 教会の前の有料駐車場(8ユーロ)に車を停め、新しいホテルが林立する村の中を通って登山口へ。 登山口には立派な道標と案内板があり、「ハンガーまで3.5時間」・「フェストコーゲルまで3.5時間」と記されていた。
日本の山のような森の中のトレイルを沢沿いに登って行くと、新しく立派な観瀑台と眼下に滝が見えた。 観瀑台を過ぎると間もなく目標のハンガー(3020m)の端正な山頂が望まれるようになった。 シェーンヴィースヒュッテを過ぎると間もなくハンガーの取付きの道標があったが、意外にも「落石のためルート閉鎖」と記された看板が添えられていた。 山頂を目前に何とも言えない喪失感に苛まれたが、同じ登山口から登れるフェストコーゲル(3038m)があるので、仕切り直してそちらに転進することにした。
ハンガーとフェストコーゲルの間に位置するホーエ・ムート(2653m)の山腹をトレイルと藪を繋いでショートカットしながら最短距離で巻いていくと、1時間半ほどでフェストコーゲルへのトレイルに合流した。 トレイルは運休中のリフトの右側のスロープをジグザグに登る単調な道だったが短時間で標高が稼げた。 ホーエ・ムートの背後に登れなかったハンガーが見えると足取りが少し軽くなった。
リフトの中間駅を過ぎると小さな氷河湖があり、そこから先は岩の堆積する広い尾根となった。 トレイルの踏み跡やペンキマークは薄いが、所々に立派なケルンがあり登高は容易だった。
下からは十字架に見えた人工物は気象観測器機だったので目と鼻の先にある山頂に向かう。 山頂には小さないケルンが積まれていただけで十字架はなかった。 登頂が正午になってしまったので山頂からの展望は冴えなかったが、想定外の出来事をリカバリーして登頂が叶って良かった。
往路を下り始めると突然山頂にヘリコプターが飛来し、気象観測器機の点検作業が始まったので驚いた。 下山後は駐車場の前の教会で滞在期間中の無事を感謝して祈った。