8月19日、am6:00起床。 今朝は雲もなく好天の兆しが見えるが、テレビの天気予報では午後から雨になっている。 明日からの天気も悪そうで、まさに下り坂の様相を呈していた。 今日は足慣らしに天気の状況を見ながら、前回曇天のため山頂からの展望が得られなかったシュヴァルツホルン(2928m)に登ることにした。
アパートから歩いて5分ほどの所にあるバス停からam8:06の始発のポストバスに乗り、グローセ・シャイデック(峠)へ向かう。 車窓からはアイガーが良く見え、天気予報が外れるかもしれないという期待が持てる。 月曜日の朝のせいか、乗客は私達を含めて10人ほどしかおらず、30分ほどで終点のグローセ・シャイデックに着くと、他の乗客はそのまま峠の反対側のマイリンゲン方面へバスを乗り継ぎ、フィルストの展望台に向かう人はいなかった。 覆い被さるようなヴェッターホルンの巨大な岩壁の基部に位置する峠からは、グリンデルワルトの町から屏風のように屹立しているアイガーの北壁や、カミソリの刃のような同峰のミッテルレギ(東山稜)が高度感たっぷりに望まれた。 昨夜降った雨で麓から霧が湧き始めたが、まだ上空は青空でしばらくこの絶景を楽しめそうだ。
今日の目的地のシュヴァルツホルンは3000mに迫る山だが、山頂までトレイルがあり、天気さえ良ければ山頂からの素晴らしい展望が約束されている。 フィルストの展望台方面への起伏の少ない幅の広い砂利道のトレイルをヴェッターホルンを背にして進む。 間もなくグロース・フィーシャーホルンやシュレックホルンの雄姿も見えてきた。 もちろんこれから登るシュヴァルツホルンも青空の下に良く見えている。 午後からは天気が下り坂という予報で、自然と歩くペースが速くなり、30分ほどでシュヴァルツホルンへのトレイルが分岐するオーバーレーガーの小さな山小屋に着いた。 残念ながらグリンデルワルトの谷から湧き上がる霧が周囲の高い山々を呑み込んでいったが、まだ雨の心配は無さそうなので、予定どおり分岐から山頂を目指すことにした。
分岐の標識に従って右に折れると、ここからは牧草地の中を通る山道となった。 相変わらず私達の他にシュヴァルツホルンに登るハイカーの姿は見当たらない。 間もなく周囲は深い霧に包まれ、視界は殆ど無くなってしまった。 前回の記憶では、ここから山頂まで2時間半ほどだったが、果して今日は正午まで天気が持ってくれるだろうか?。 歩く人が少ないため、放牧された大きな牛たちが所々でトレイルを塞ぎ、迂回しながら登ることもしばしばだった。 霧で視界が遮られているため、トリカブトと大きな野アザミが群生しているトレイルを黙々と登り続け、オーバーレーガーの分岐から1時間少々でフィルストの展望台からのメイントレイルと合流した。 牧草地の中のトレイルは次第に岩屑のアルペンルートに変わり、間もなくシュヴァルツホルンの西尾根の長い鉄梯子を登るヴァリエーションルートとの分岐点に着いた。 ヴァリエーションルートには先行する3組のパーティーが見えた。 前回は雨混じりの天気だったので迷わず一般ルートをとったが、今日も少し雲行きが怪しくなってきたので、やむなく右の一般ルートを登った。
時々霧が晴れてヴェッターホルンやシュレックホルンが垣間見られ、何とか天気は持ちそうだと思ったが、間もなく大きな雷鳴が轟くと、やや強い雨が降ってきた。 傘をさしてしばらく待機し、空を見上げながら進退について悩んでいると、ヴァリエーションルートを登った最初のパーティーが濡れ鼠で下ってきた。 天気の回復の見込みは無く、私達も下山しようと思ったが、不思議と短時間で雨がやんだので、だましだまし山頂まで登り続けることにした。 この状況では今回も山頂からの展望は叶えられないと諦めていたが、山の神の計らいで山頂直下から周囲の霧が晴れ、山々を覆っていた雨雲も風が運び去り、不思議なくらいの青空になった。
予定どおり正午過ぎにシュヴァルツホルンの山頂に着き、ヴァリエーションルートから相次いで登ってきた2組のパーティーと良い天気になったことを喜び合った。 予想どおり山頂からの360度の展望は素晴らしく、手の届きそうな所に見えるヴェッターホルンや眼前の4000m峰を眺めながら、1時間ほどゆっくりと寛いだ。 一番良い時間帯に山頂に着いたようで、山頂から30分ほど下ると再び雨が降り出した。 フィルストの展望台の直下まで下ると雨はやんだが、展望台には行かず1000m下のグリンデルワルトまで幅の広いハイキングトレイルを下ることにした。 さすがにこの辺りは人気のコースで、曇天にもかかわらずハイカーの姿が多い。 すでに青空は無く、周囲はモノトーンの世界となったが、時折雲間から見える山並みに一喜一憂しながら2時間ほどでグリンデルワルトに下った。
メインストリートを散策しながらpm5:00頃にアパートに帰宅し、夕食はスパゲティと生野菜とスープを自炊した。 pm7:50からの詳細な天気予報を見ると、明日以降の悪い天気は変わらず、明日予定していたゼフィーネンフルゲ(峠)へのハイキングは、明朝の天気予報を見てから決めることにした。