ジグナールクッペ(4556m)

   山頂を私達3人で独占していると、間もなく若いカップルが登ってきたので、山々を背景にお互いの記念写真を撮り合い、氏に促されて最後のピークのジグナールクッペへ向かう。 痩せ尾根を広いコルまで一旦下ると、稜線を行かずに少しまた下り、ジグナールクッペへの明瞭なトレイルに合流した。 前方には5〜6人の中高年の団体が非常にゆっくりしたペースで登っていたが、リーダー格の年配の男性が道を譲ってくれた。 その方は親日家らしく日本語が堪能で、山頂に着いてからも気さくに話しかけてこられ、頼んでもいないのに記念写真を撮ってくれた。

   am10:15、ツムシュタインシュピッツェの山頂から僅か30分ほどで最後のピークのジグナールクッペ(4556m)の山頂に着いた。 小広い山頂に建つ三階建ての黒い大きな山小屋の周囲は、宿泊客も含め大勢の登山者で賑わっていた。 妻はトイレを借りに行ったが、私はなぜか山小屋の中を覗こうとはしなかった。 いつの日か再びこの頂を訪れ、山小屋に泊まる予感がしたからだろうか?。 すでに隣接する二つのピークを踏み、見える景色もそれほど変わらないので、残念ながら感動は余り湧いてこなかったが、4年前にスイス側からモンテ・ローザを登った時に、氷河を登り詰めたザッテルから初めて見たこのマルゲリータ小屋になぜかとても懐かしさを覚えた。 妻も同感とのことだった。

   20分ほど周囲の山々を眺めながらゆっくり休憩し、モンテ・ローザの三山がけを終えて下山にかかる。 あとはひたすらニフェッティ小屋を経由してサラティバスのゴンドラの駅まで1600mほど高度を下げるだけだ。 途中リスカムから下ってくるパーティーの姿が遠目に見えた。 果して彼らは山頂まで辿り着くことが出来たのだろうか?。 間もなく昨夜山小屋で同室した親子のパーティーとすれ違った。 おそらくこの親子は私達が登らなかったヴァンサン・ピラミッドを登り、これからツムシュタインシュピッツェを登ってから、今晩はマルゲリータ小屋に泊まるに違いない。 最高峰を擁するこの山域は、そのようなゆったりとした山登りが似合う所なのかもしれない。

   正午過ぎにニフェッティ小屋に着くと、ジジ氏から「サラティバスからの下りのゴンドラはpm2:00発とpm4:30発がありますが、どちらに乗りたいですか?」と意見を求められた。 前者だと無駄はないが、これから昼食をとらないで下ってもぎりぎりの時間なので、少々時間は持て余すが行程に余裕がある後者で下ることをお願いした。 デポした荷物をまとめて山小屋を出発し、途中のプンタ・インドレインの駅舎のレストランで遅い昼食を食べた。 昼食後氏に明日以降に予定しているロシュフォール稜の概要や難易度について訊ねると、ガイドと1対1であればトリノ小屋からエギーユ・ド・ロシュフォールまでは登り3時間、下り2時間の合計5時間だが、それほど難しくないので妻も一緒に登れるのではないかとのことだった。 また、以前から気になっていたフランスの名峰ラ・メイジュ(3983m)の登頂の可能性について訊ねると、フィックスロープが無いのでマッターホルンよりは難しいが、意外にも山小屋から山頂まで4〜5時間で登れるとのことで、憧れの山に一歩近づいたような嬉しい気分になった。 レストランで時間調整をしながらゆっくり休憩し、さらに1時間ほど下ってサラティバスからゴンドラに乗り、登山口のスタッフェルにpm5:00に着いた。 九十九折りの山道をジジ氏の車で下りながら後ろを振り返ると、モンテ・ローザの銀嶺が遙かに高い所から私達を見送ってくれた。 氏には申し訳なかったが、高速道路に入ったとたん睡魔に襲われ居眠りをしてしまった。 モン・ブラン・トンネルを出た所で、神田さんの携帯にシャモニへの到着が予定よりも少し遅れるという連絡を入れてもらった。


ジグナールクッペの山頂に建つヨーロッパで一番高いマルゲリータ小屋


   ジグナールクッペの山頂から見たデュフールシュピッツェ(左)とノルトエント(右)


ジグナールクッペの山頂から見たドム


ジグナールクッペの山頂から見たリスカム    右端はマッターホルン


ジグナールクッペからニフェッティ小屋に下る


   リスヨッホ付近から見たデュフールシュピッツェ(左)とツムシュタインシュピッツェ(右)


   リスヨッホ付近から見たツムシュタインシュピッツェ(左)とジグナールクッペ(右)


リスヨッホ付近から見たパロットシュピッツェ


リスカム東峰


ヴァンサン・ピラミッド


登山口のスタッフェル


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