【三回目のカナディアンロッキー】
昨年の夏、24年ぶりに訪れたカナダのロッキー山脈(カナディアンロッキー)では、氷河はないものの山頂からの展望やルート上の景観が素晴らしい3000m前後の山が数多く登れることが分かり、海外での新しい登山のフィールドを提供してくれた。 但し、昨今の温暖化の影響による恒常的な山火事の影響で、天気が一番安定する盛夏は空の色が濁ってしまうため、今回は滞在期間を昨年より1か月早い6月下旬から7月下旬とした。 滞在先は昨年の経験を生かし、インフラが整ったゲートウェイのカルガリーにすることに迷いはなかった。 昨年よりも更に進んだ極端な円安(1CADが116円)でアパートの家賃は1日約18,000円、レンタカーの料金は1日約12,000円だったが、エアチケットは繁忙期前だったことでウエスト・ジェット航空の直行便は1人約206,000円だった.
今回の登山とハイキングの計画については、昨年カルガリーで買った10部のハイキングの地図と2冊の登山のガイドブック、そして山のGPSアプリ『AllTrails』の山行記録を参考にしたが、何よりも役に立ったのは昨年カルガリーで知り合ったミカコさんからのタイムリーな山の情報だった。
2024年6月24日、夏休み前の月曜日の午後ということもあってか、成田空港は異様なほどガラガラに空いていた。 ウエストジェット航空の直行便は定刻どおにカルガリーに着き、空港のレンタカーの受付窓口も繁忙期だった前回とは全く違って待ち時間がなかった。 レンタカーは予約した車のイメージとは違うヒュンダイのエラントラという名のセダンで、海外仕様なのか車幅がとても広く、運転に気を使わなければならなかった。
昨年滞在した居心地の良いアパートは残念ながら今年は借りれず、予約したアパートはカルガリーの中心部に少し近い場所になった。 アパートの家主は別の場所に住んでいるようで、当日になって部屋の鍵の暗証番号だけがメールで送られてきた。 戸建住宅の地下にあるアパートの部屋の広さや間取りは昨年と殆ど同じだったが、賃貸用に造られた物件のようで部屋の入口の中扉がなかった。 電化製品は掃除機が無かったり、包丁やザルなどの調理器具も足りてなかった。 アパートから車で5分ほどのスーパー『NOFRILLS』は大型店ではないが、食料品の質は良く品揃えも必要充分だった。
明日からの天気予報をチェックすると、どの山域も晴れるのは明後日までで、その後は一週間ほど好天は望めず、高い山には雪も降るようで、計画の見直しが必要になった。
【マウント・ホフマン】
6月25日、時差ボケの解消と車の運転に慣れるため、短時間で登れてカルガリーからも近いマウント・ホフマンを登った。 アパートから1時間半ほどのドライブで着いたトレイルヘッド(TH)には広い駐車場とトイレ棟があり、週末には多くの人で賑わいそうだった。
シープ・リバーに架かる立派な橋を渡り、林道のような道をしばらく歩いてから樹林帯のハイキングトレイルに入る。 トレイルは予想以上に踏み跡が明瞭で歩き易かったが、日本では見たことがない巨大な藪蚊が大量に発生し、充分注意したつもりでも服の上から肩や背中を何カ所も刺されてしまった。
THから1時間ほどで森林限界になると、小さなメドウ(草原)には昨年あまり見られなかったロッキーの花々(ワイルドフラワー)が多く見られた。 メドウでは花々の撮影大会となり、労せずして丘のようなマウント・ホフマンの山頂に着いた。 ケルンが積まれた山頂からの展望は良く、ロッキーの山としては標高が低い周囲の山々にも残雪が見られた。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 120km THへの時間 1:20
THの標高 1572m 山頂の標高 2024m
単純標高差 452m 累積標高差 529m
歩行距離 9.4km 所要時間 5:00
【ワスーチ・ピーク】
6月26日、アパートのすぐ近くを通る無料の高速道路(フリーウェイ)の201号線から1号線(トランス・カナダ・ハイウェイ)に入り、キャンモアの手前から40号線(カナナスキス・トレイル)をしばらく走ってTHに向かう。 右側通行の運転への適応スピードは昨年より少し早くなった。
道路脇のTHには簡易な駐車地があったが、取付きやルートの案内表示などの類いは一切なく、しばらくはGPSを頼りに広い涸沢の中を進む。 間もなく森の中に入ると日本の山の登山道のような明瞭な踏み跡が現れた。 登り易いトレイルは森林限界まで続き、所々で樹間から背後のカナナスキスの山々が望まれた。
森林限界から先は顕著な岩屑の広い尾根となり、正面にワスーチ・ピークの山頂が良く見えた。 尾根の勾配が急になると踏み跡も次第に薄くなったが、幾つかある踏み跡のうち登り易いところを繋いで登る。 スクランブル(SC)と呼ばれる手を使って岩を登る所はなかった。
狭い山頂にはケルンもレジストリーBOXもなくて寂しかったが、餌付けされたシマリスが迎えてくれた。 山頂からの展望は予想以上に素晴らしく、カナナスキスの山々のみならず、昨年登ったバンフのカスケード・マウンテンやマウント・ランドルなども遠望された。
周回するルートはないので往路を戻ったが、途中でバンクーバーとキャンモアに在住の日本人の男女のペアとすれ違い、直近の山の状況やお勧めの山などについて教えていただいた。 思いがけない出会いが嬉しくかったが、愛用のストックをどこかに置き忘れてしまったことが玉にキズだった。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 100km THへの時間 1:00
THの標高 1490m 山頂の標高 2300m
単純標高差 810m 累積標高差 854m
歩行距離 5.6km 所要時間 6:00
帰宅後はアパートからカルガリーの中心部に向かって10分ほどの所にあるスーパー『T&T』に行った。 品揃いは昨年利用したセイジヒルの店舗とほぼ同じで嬉しかった。 日本の食品や中華惣菜が手に入るこのスーパーの存在はカルガリーでの生活には欠かせないことをあらためて実感した。
6月27日、予報どおり山のみならずカルガリーも朝から雨となり、一日中外出せずに洗濯などをしながらアパートで過ごした。 洗濯機と乾燥機の性能が良いので、洗濯にストレスを全く感じない。 大型のGoogleテレビでYouTubeの動画が観れたので、日本の山や音楽関連の作品を見て楽しんだ。
【ウエッジ・ポンド】
6月28日、曇天だったが一昨日忘れたストックの回収を兼ねて再度ワスーチ・ピークを登りに行く。 ストックを忘れたと思われる場所まで1時間ほど掛けて登ったが見つからなかった。 少し天気が良くなったので展望の良い尾根の取付きまで登り、一昨日よりも僅かに冠雪した山々の写真を撮って失意の下山となった。
ワスーチ・ピークのTHから少し離れた所にあるウエッジ・ポンドという小さな池の散策に向かうと、道路の脇でグリズリーベアが悠然とタンポポを食んでいる姿が見られた。 車を路肩に停めて窓越しに写真を撮っていると、監視していた国立公園のレンジャーの車が寄ってきて待避するように指示された。 グリズリーベアはやや小ぶりで、首に発信器のようなものを付けていたので、国立公園で行動調査をしている個体のようだった。 ウエッジ・ポンドは予想よりも小さな池で、期待していた花々もなかったので1時間足らずで池を一周するトレイルを歩けた。
帰宅後は現時点での山の残雪状況から南部のカナナスキス方面の山を登る回数が多くなると思われたので、1年間有効のカナナスキス・カントリーの入園パス(94.5CAD・邦貨で約11,000円)をオンラインで購入した。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 110km THへの時間 1:10
THの標高 1530m
単純標高差 0m 累積標高差 20m
歩行距離 1.0km 所要時間 0:40
【ミッドナイト・ピーク】
6月29日、先日登ったワスーチ・ピークの手前のTHまではアパートから車で1時間と近く、道路脇の広い駐車場にはトイレ棟があった。 車道(40号線)を反対側に渡り、標識のあるTHから中間点となるバルディー・パス(峠)までは良く整備された勾配の緩いハイキングトレイルを歩く。 大きなケルンが積まれた峠に着くと、ミッドナイト・ピークの山頂が良く見えた。
峠にはトレイルエンド(TE)を示す標識はなかったが、隣に聳えるマウント・バルディー(2192m)とを繋ぐ広い尾根にも踏み跡があり、森林限界まで続いていた。 森林限界からは勾配が急になったが、岩屑の斜面にも不明瞭ながら踏み跡が続いていた。 意外にも踏み跡は山頂に近づくにつれて明瞭になり、それまで無かったケルンも幾つか見られた。 スクランブル(SC)の区間は皆無で労せずして山頂に着いた。
三方向からの顕著な尾根が合わさる狭い山頂にはケルンが立ち、餌付けされたシマリスが迎えてくれた。 ケルンの傍らにはピンク色のレジストリーBOXが置かれ、カナダの山に登ったことをあらためて実感した。 マイナーな山だと思われたが、箱の中のメモ帳には日本人のペアの足跡も見られた。 快晴ではないものの周囲の山々の展望は素晴らしく、近くに聳えるワスーチ・ピークも同定出来た。 下山は三連休の初日ということもあって、10名以上の登山者や峠までの多くのハイカーとすれ違った。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 95km THへの時間 1:00
THの標高 1400m 山頂の標高 2348m
単純標高差 948m 累積標高差 984m
歩行距離 10.6km 所要時間 7:00
6月30日、天気が悪いので山には行かず、登山計画の抜本的な見直しをする。 今回も登山がメインの計画だったが、3000mに近い山は残雪でしばらく登れそうにないため、7月上旬はピークハントではなくハイキングをメインにすることにした。
7月1日、山のみならずカルガリーも曇天で、ストックと妻のザックを買いに登山用品店の『MEC』とその隣にある『ATMOSPHERE』に行った。 今日は「カナダ・デイ」というカナダの建国記念日なのでダウンタウンでは色々な行事やイベントが行われていると思われたが、市内は車の交通量も少なく静かな休日だった。
【ジョンストン・キャニオン & インク・ポット】
7月2日、曇天だったが今シーズンまだ行ってないバンフ方面の山の残雪状況の確認を兼ねて観光地とも言えるジョンストン・キャニオンを経てインク・ポットへのハイキングに行った。 キャンモアを過ぎると、車窓から見た山々の残雪の多さは予想どおで、昨年登ったマウント・ボージョー(2931m)も山頂付近はまだ真っ白だった。
平日だったが8時に駐車場に着いた時は入口に一番近い駐車場はほぼ満車だった。 ジョンストン・キャニオンは氷河から流れてくる川(ジョンストン・クリーク)に沿って岩壁に遊歩道が設置されていて、途中にロウアー・フォールズとアッパー・フォールズという二つの滝があり、それぞれを間近で見られる観瀑台があった。
アッパー・フォールズから先は森の中の幅の広いハイキングトレイルを登り下りし、1時間ほどで明るく開けたメドウ(草原)に着いた。 メドウの端には湧き水を湛えた小さな池が幾つかあり、これが目的のインク・ポットだった。 あいにくの曇天で周囲の山々の展望は冴えなかったが、メドウには様々なワイルドフラワー(高山植物)が見られた。
帰路のジョンストン・キャニオンでは行き交う観光客やハイカーで渋滞するほど人出が多かった。 駐車場に着いた時に小雨が降り始め、カルガリー市内に入ると車の運転も危険なほどの土砂降りの雨となった。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 155km THへの時間 1:40
THの標高 1430m TEの標高 1645m
単純標高差 215m 累積標高差 579m
歩行距離 11.4km 所要時間 5:00
7月3日、山のみならずカルガリーも小雨模様の曇天だったので、昨日までの山の残雪の状況を念頭に向こう一週間の山の日程を調整する。 残雪のみならずグリズリーベアの出没により、幾つかのルートがクローズしていることも悩ましい。 今日のカルガリーの最高気温は17℃で風もあって寒く感じるほどだった。
【ボウ・サミット・ルックアウト】
7月4日、93号線沿いのボウ・レイク展望所に車で立寄ってからペイトー・レイクに向かう。 THの広い駐車場から遊歩道を僅かに登ると、ペイトー・レイクを眼下に俯瞰する立派な展望台に着いた。 展望台から眺めたレイクと周囲の山々の景観はとても素晴らしく、この定番のハイキング・コースの人気の高さが頷けた。
展望台から幅の広いハイキングトレイルをボウ・レイク方面に進むと間もなく森林限界となり、昨年登ったサーク・ピークなどの山々が見えたが、残雪によりまだこの周辺の山を登るのは難しそうだった。 コースの後半には残雪とデブリの爪痕が見られた。 僅かな広場になっているTE(トレイルエンド)には標識の類は一切見られなかったが、そこが眼下にボウ・レイクが初めて見える場所だった。
帰路はペイトー・レイク展望台から10分ほど小径を歩いた所にある展望岩に立寄る。 展望岩からはペイトー・レイクの全体がくまなく見渡せ、早朝とは違うターコイズ・ブルーの湖面がとても綺麗だった。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 230km THへの時間 2:20
THの標高 2090m TEの標高 2350m
単純標高差 260m 累積標高差 305m
歩行距離 7.4km 所要時間 3:00
【サレール・リッジ】
7月5日、アッパー・カナナスキス・レイクの湖岸のTHにはトイレ棟のある広い駐車場があり、付近には雌のムースが草を食んでいる姿が見られた。 THから経由地のローソン・レイクまではとても良く整備されたハイキングトレイルで、ウエスタン・アネモネなどの花々が多く見られた。 神秘的なローソン・レイクからはストイックに屹立するマウント・サレールとは対照的な緑濃い丘のようなサレール・リッジが望まれた。
湖岸を半周するトレイルは大半が残雪で埋まっていたが、明瞭なトレースに助けられアイゼンを着けずに歩けた。 意外にもトレイルエンド(TE)となる湖の末端から先にも明瞭な踏み跡が続いていた。 沢状の斜面を直登する急峻なトレイルには今回一番楽しみにしていたグレーシャー・リリーが咲き乱れ、思いがけない撮影大会となった。 再びルート上に残雪があらわれると間もなくサレール・リッジの鞍部に着いた。 眼下にはアッパー・カナナスキス・レイクが俯瞰され、湖岸に聳えるマウント・インディファティガブルやそれまで見えなかったカナナスキスの山々の展望が一気に広がった。
鞍部から眼前の険しい岩峰に向かって起伏の緩い痩せ尾根を進む。 ローソン・レイク側の斜面には先ほどよりも遙かに広大なグレーシャー・リリーの大群落が見られた。 意外にも岩峰の基部で踏み跡は途絶え、GPSの地図の軌跡もそこで終わっていた。 岩峰の頂点へのスクランブルは岩が脆く危険そうだったので潔く諦め、周囲の山々の展望と両サイドの二つのレイク、そして何よりも眼下に果てしなく広がるグレーシャー・リリーの大群落を充分堪能してから往路を戻った。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 145km THへの時間 1:40
THの標高 1715m 山頂の標高 2416m
単純標高差 701m 累積標高差 1048m
歩行距離 11.4km 所要時間 8:00
7月6日、カルガリー在住のミカコさんと一年ぶりに市内のレストランで再会し、近況報告と山の話で楽しい時間を過ごした。
【パスク・マウンテン】
7月7日、カナナスキスカントリーの最南端に位置する山で、THへは22号線から541号線に入り、最後は未舗装の940号線でアプローチした。
ハイキングの地図には山頂までのルートが記されていたがTHには標識の類は見当たらなかった。 ゲートのある林道を少し歩き、古い赤テープがある切り裂きから薄い踏み跡のトレイルに入る。 真新しいクマの糞が見られたのでステレオを大音量で鳴らし、大声を上げ続けながら歩いた。
ケルンが立つ沢を渡って尾根に取付くとようやく踏み跡が明瞭になり、幅の広い尾根の西側の斜面には広大なお花畑が見られた。 トレイルは次第に林道のような道となり、森林限界からは地図を参考にトレイルを外れて草原の斜面をショートカットして稜線に上がる。 図らずも草原では花々の撮影大会となり、結果的に時間の短縮にはならなかった。
たおやかな広い稜線に上がるとカナナスキスのロッキーの山々の展望が広がり、予想以上に花々も多かったので足取りが軽くなった。 幾つかの偽ピークを左から巻きながらの稜線漫歩で、山頂手前から稜線は痩せて岩の部分が多くなったが難しい所はなかった。
ケルンと古い測量用の鉄棒が立つ広い山頂からの展望は雄大で、ケルンの中にはレジストリーBOXが納められていたが、メモ帳には年間で10名ほどの記帳しかなかった。
登りで見た様々な種類の花々をゆっくり愛でながら往路を戻ったが、好天の日曜日にもかかわらず一日中パスク・マウンテンは貸し切りで、人が少ない山ほど花が多いというのは各国共通の現実だということをあらためて実感した。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 160km THへの時間 2:00
THの標高 1840m 山頂の標高 2543m
単純標高差 703m 累積標高差 869m
歩行距離 14.2km 所要時間 8:00
下山後は明日予定しているウォータートン・レイクス国立公園の山に向けて、THに近いピンチャークリークのモーテル『West Castle Motel』(146CAD・邦貨で約18,000円)に泊った。
【マウント・カシュー】
7月8日、ピンチャークリークのモーテルから1時間ほどで着いたキャメロン・レイクには広い駐車場と沢山のトイレ棟があった。 キャメロン・レイクの湖畔からは朝焼けのUSAの山(マウント・カスター)が望まれた。
立派な案内板が立つTHから良く整備されたハイキングトレイルをサミット・レイクに向かって登る。 キャメロン・レイクを眼下に望みながら傾斜の緩いスイッチバックを繰り返しいくと山火事の跡が見られ、森林限界を待たずに周囲の展望が良くなった。 労せずして着いたサミット・レイクの湖畔からはUSAの山々の眺めが素晴らしかったが、生まれたばかりの藪蚊が多くて落ち着かなかった。
サミット・レイクから先も山火事跡の展望の良いトレイルがカシューへのトレイルが分岐する峠まで続いた。 マウント・カシューの山腹を延々とトラバースしていくトレイルの傾斜は緩いが距離が長いのが玉にキズだ。
ウォータトン・レイクへ縦走するトレイルの最高点となるカシュー分岐(峠)に着くと、それまで見えなかったマウント・アルダーソン(2692m)とマウント・カシュー(2630m)が望まれた。 分岐に着いた時点で、アルダーソンかカシューのどちらを登るか決めようと思っていたが、花々の撮影に予想以上に時間が掛かりそうなため、より短時間で登れるカシューを登ることにした。
峠の傍らの展望地には寄らず、ウォータトンの山らしい赤茶けた広い尾根を登ってマウント・カシューへ向かう。 眼前にはマウント・アルダーソンが、眼下には上下二つのカシュー・レイクスが望まれ、足元には花々が点在する楽しい登りだ。 間もなく踏み跡は尾根を外れ、前衛峰を右側からショートカットするように細い岩のバンドを一直線に進む。 前衛峰を巻いた鞍部で再び広い尾根に乗ると、それまで見えなかったカナダ側の山々の展望が開けた。 鞍部から指呼の間の山頂までは勾配の緩い稜線漫歩となり、山頂では餌付けされたマーモット達が出迎えてくれた。 山頂からの展望は素晴らしく、赤茶けたカナダ側の山々と氷河のあるUSA側の山々の両方が望まれた。 山頂のケルンの傍らには二つのレジストリーBOXが置かれていたので、週末にはそれなりの登山者がいると思われた。
登りで見た様々な種類の花々を愛でながら往路を戻る。 一日中快晴の天気に恵まれ山火事の影響もなく、随所で花々の撮影大会を楽しめた。
山域 ウォータートン・レイクス国立公園
THへの距離 300km THへの時間 3:10
THの標高 1660m 山頂の標高 2630m
単純標高差 970m 累積標高差 1145m
歩行距離 17.4km 所要時間 9:00
【キング・クリーク・リッジ】
7月9日、40号線の冬期通行止め(12月1日〜6月14日)ゲートの手前のTHには駐車場やトイレ棟があった。 ハイキングの地図には破線のルートが記されているが、短時間で登れるためか予想以上に濃い踏み跡が山頂まで続いていた。 小さなケルンが立つ稜線の出合までは急坂の連続だったが、稜線はそれとは真逆に驚くほどたおやかで、コンパクトながら季節の花々が予想以上に多くて楽しめた。
山頂からは指呼の間に昨年登ったグリズリー・ピーク(2500m)が望まれ、40号線を挟んでカナナスキスの山々の展望が良かった。 山頂に置かれたレジストリーBOXの中のメモ帳には多くのコメントが記され、平日にもかかわらず帰路はそれなりの登山者とすれ違った。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 130km THへの時間 1:20
THの標高 1700m 山頂の標高 2420m
単純標高差 720m 累積標高差 800m
歩行距離 7.0km 所要時間 5:30
【ヒーリー・パス】
7月10日、冬はスキー場として賑わうサンシャイン・ビレッジ・スキー場のゴンドラ乗り場の駐車場の先がTHで、25年前に雨のためこの駐車場で出発を断念したことが記憶に新しい。
THから途中のキャンプ場までは針葉樹林帯の地味ながら良く整備されたハイキングトレイルを進む。 トレイルの脇には今日のハイキングのお目当てのグレイシャー・リリーが点在し、森林限界を越えたメドウ(草原)での期待が高まる。 キャンプ場から先もしばらく展望のない単調なトレイルを進むが、沢を渡ってシンプソン・パスへの分岐を過ぎると一気に展望が開け広大なヒーリー・メドウに飛び出した。
ヒーリー・メドウはその全体が何百万本とも思えるほどのおびただしいグレイシャー・リリーで埋め尽くされていて壮観だった。 残念ながらグレイシャー・リリーの見頃は既に終わっていたが、それに代わってウェスタン・アネモネやインディアン・ペイントブラシなどのワイルドフラワーが数多く見られた。 ヒーリー・パスの手前でようやく見頃のグレイシャー・リリーの群落が見られ、待望の撮影大会となった。
TEのヒーリー・パス(峠)からの展望は雄大で、それまで見えなかったブリティッシュ・コロンビア州との境に聳えるマウント・ボールなどの山々が望まれ、マウント・アシニボインやマウント・テンプルも遠望された。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 150km THへの時間 1:30
THの標高 1660m TEの標高 2370m
単純標高差 710m 累積標高差 816m
歩行距離 18.0km 所要時間 7:30
【サンシャイン・メドウズ】
7月11日、昨日のヒーリー・パスへのハイキングの出発点と同じサンシャイン・ビレッジ・スキー場のゴンドラに乗って標高2220mのデイ・ロッジまで上がる。 ゴンドラの乗車時間は約20分で、料金は往復71CAD(邦貨で約8,400円・65歳以上のシニアは66CAD)だった。
ゴンドラ乗り場に置かれていたパンフレットの順路に従い、ハイキングの前半はロック・アイル・レイク、グリズリー・レイク、ラリックス・レイクの三つの湖を巡るトレイルを歩く。 デイ・ロッジを出発してすぐに森林限界となるハイキングトレイルからは昨年登ったマウント・ボージョーなどの山々が望まれた。 多くの観光客やハイカーが訪れるためトレイルは過剰なほど良く整備されていたが、ワイルドフラワーが点在するメドウ(草原)ではそこら中で地リスが走り回っていた。
ロック・アイル・レイクから先のトレイルも起伏が少く、大群落こそないものの様々な種類のワイルドフラワーが点在していた。 グリズリー・レイクとラリックス・レイクの湖畔を周回する人気のトレイルは反時計回りの一方通行になっていた。 それぞれに個性的な三つの湖を巡り、観光地とも言えるスタンディッシュ展望台に向かう。 展望台にはリフトでも上がれるため、予想どおり多くの観光客で賑わっていた。 展望台からは直前に巡った三つの湖が俯瞰され、ロック・アイル・レイクの先にアシニボインの尖った頂も遠望された。
ハイキングの後半はリフトの終点でコースの最高点となるスタンディッシュ(2400m)の山頂に登り、下り基調で起伏の緩いトレイルを歩いてモナーク展望地へ向かう。 前半の変化に富んだルートは表街道で、後半の単調なルートは裏街道といった感じだったが、メドウにはワイルドフラワーが多く随所で撮影大会となった。 昨日のヒーリー・パスにも近いモナーク展望地からの展望は雄大で、ザ・モナークはもちろんマウント・ボールを盟主とするボール・レンジの山々が一望された。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 130km THへの時間 1:20
THの標高 2220m TEの標高 2220m
単純標高差 180m 累積標高差 350m
歩行距離 10.6km 所要時間 6:00
【アイスライン・トレイル & ハイライン・トレイル】
7月12日、25年前に初めてロッキーの山を訪れた時に新雪の上を歩いたアイスライン・トレイルと雨の中を歩いたヨーホー・パス・トレイルをハイライン・トレイルで繋いで歩いた。
アイスライン・トレイルでは前回は雪に埋もれていた上下二つのネームレス・レイクが見られ、ハイライン・トレイルでは今シーズン最後と思われるグレイシー・リリーが咲いていた。 ヨーホー・レイクでは雨に煙っていた前回とは全く違う素晴らしい展望が得られ、再訪した価値が充分あった。
ハイキングを終えてから、多くの観光客で賑わうタカカウ・フォールズの展望所でミストシャワーを全身に浴びながら観瀑した。
7月13日、カルガリーの天気は良いが山の天気は不安定なのでアパートで休養し、後半に向けての行動計画を立てる。 気温が高い日が続いたことで山々の残雪が減ったため、後半はピークハントをメインにすることにした。
7月14日、カルガリーの天気も山の天気も悪いのでアパートで休養し、昨日に続いて後半に向けての行動計画や来年用の計画を立てる。 短時間で登れる山やハイキングコースが少なくなってきたことが悩ましい。
【ノース・クロウフット・マウンテン】
7月15日、93号線沿いのボウ・レイクの湖岸のハイキングトレイルを反時計回りに歩いて取付きに向かう。 今回は積雪のため断念したザ・オニオンや、昨年登ったサーク・ピークとジミー・シンプソン・ジュニア、そして憧れのマウント・トンプソンやマウント・ジミー・シンプソンなどが見える素晴らしロケーションだ。
THから1時間ほどで取付きの分岐に着くと、目印らしきものは見当たらなかったが踏み跡は予想よりも明瞭で、破線程度の細い道が森の中に続いていた。 僅かな時間で森を抜けると小規模なモレーンに出た。 踏み跡はモレーンの左サイドに続いていたが、GPSを頼りにモレーンの上に見える次の森に向かう。 森の入口は分らなかったが、しばらく藪を漕ぐと破線程度の踏み跡と合流した。 森林限界となった急斜面を細かくジグザグを切って登ると幅の広い尾根に乗り、眼下のボウ・レイクの水源となるアイスバーグ・レイクや、さらにその水源となるボウ・グレイシャーが見渡せた。
草付きの尾根の傾斜は緩くて歩き易かったが、再び短い藪を通過すると踏み跡は尾根の左側の岩が堆積する広い斜面に向かっていた。 岩の斜面には断片的に踏み跡が見られたが、登り易い所を選んでケルンを積みながら登る。 頭上の山頂方向ではなく左側のコルを目指して登ると傾斜が緩くて登り易かった。 山頂直下の岩場にはあと数日早かったら登れなかったと思われる残雪があったが、雪を崩してケルンが立つ猫の額ほどの狭い山頂に着いた。
高度感のある山頂からの展望は素晴らしく、眼前にはクロウフット・マウンテンの本峰が、眼下には広角にしてもカメラに収まらないボウ・レイクが俯瞰された。 ケルンの中に納められていたレジストリーBOXの中のメモ帳に記されたコメントは少なく、今シーズンは私達が最初の記帳者となった。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 225km THへの時間 2:20
THの標高 1940m 山頂の標高 2694m
単純標高差 754m 累積標高差 842m
歩行距離 11.2km 所要時間 7:30
7月16日、カルガリーの天気は良いが山の天気はやや不安定なのでアパートで休養する。 ミカコさんからメールがあり、今週末はミカコさんとウィルコックス・ピークを登ることになった。
【タングル・リッジ】
7月17日、THは93号線沿いの著名な観光地のコロンビア・アイス・フィールドの少し先にあり、今回計画した山の中ではTHまでの距離と所要時間が一番長かった。 THにはタングル・フォールズという小さな滝があり、その駐車場からウィルコックス・パスへのハイキングトレイルに入る。 コロンビア氷河の山々を望む幅の広いトレイルを僅かに進み、左手の森の中に続く明瞭な踏み跡に入る。 タングル・クリークを倒木を利用して渡ると踏み跡は薄くなったが、要所要所にケルンが積まれていたので迷わずに進めた。 森林限界の手前から再び踏み跡は明瞭になり、背後には週末に登る予定のウィルコックス・ピーク(2886m)が指呼の間に望まれた。
森林限界から先は幅の広い尾根が山頂に向けて延々と続き、どこでも歩けそうな岩屑の斜面に薄い踏み跡が見られた。 快晴無風の絶好の登山日和だったが、山頂付近に残雪があるため藪蚊が多いのが玉にキズだ。 残雪が眩しい広い山頂の片隅には新しい気象観測機器が建ち、春霞ながらそれまで見えなかった北側のサンワプタ・ピーク(3315m)やサンワプタ・リバーの奥に連なるジャスパー国立公園の山々が望まれた。
平日なので山は一日中貸し切りと思われたが、帰路では3人の登山者とすれ違った。 岩場や藪は皆無で迷う所もなかったので、3000mを超えるロッキーの山の中では一番登り易い山ではないかと思えた。
山域 ジャスパー国立公園
THへの距離 320km THへの時間 3:20
THの標高 1860m 山頂の標高 3001m
単純標高差 1141m 累積標高差 1159m
歩行距離 10.0km 所要時間 7:30
7月18日、カルガリーも山も天気が悪いのでアパートで休養する。 明日から帰国日まで良い天気が続く予報になったので、朝昼晩の食糧計画と準備を入念に行なった。 アパートのオーナーのイスラエルさんがアパートの空調設備の点検に来たので挨拶を交わして片言で談笑した。
【ウインドタワー】
7月19日、キャンモアから742号線に入ると間もなく未舗装の道となり、峠を越えた先のスプレイ・レイクの湖畔まで続いた。 THには駐車場はなく広い路肩に車を停めた。
ハイキングの地図にはウエスト・ウインド・パスまで実線の登山道が記されているため踏み跡は明瞭だった。 隣に聳えるリム・ウォール(2650m)との鞍部のウエスト・ウインド・パスは明るく開けた平坦地で、切り立った垂壁の上にウインドタワーの山頂が望まれた。
森林限界となるウエスト・ウインド・パスからは眼前の山頂方向ではなく右方向に延々とトラバースするように進み、山頂が全く見えなくなった所で反転して山頂方向への広い尾根に取り付く。 地図上では登山道が実線から破線になるが、踏み跡は相変わらず明瞭で傾斜も緩くて登り易かった。
快晴無風の天気に恵まれたが、今シーズン初めての山火事の影響で山頂からの展望は冴えず、眼下のスプレイ・レイクも輝きを失っていたことが惜しまれた。 山名どおり普段は風が強いのか、山頂にはケルンではなく石を積んで囲った大きな風除けがあった。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 130km THへの時間 1:40
THの標高 1710m 山頂の標高 2695m
単純標高差 985m 累積標高差 1000m
歩行距離 9.8km 所要時間 8:00
【ウィルコックス・ピーク】
7月20日、ダウンタウンの外れでミカコさんと落ち合い、93号線沿いのコロンビア・アイス・フィールド手前のTHに向かう。 THの駐車場にはトイレ棟があった。
THからウィルコックス・パスへのハイキングトレイルを登ると間もなく森林限界となり、赤いベンチがあるアサバスカ氷河を望む展望地に着く。 昨年登ったバウンダリー・ピークやその背後に聳えるマウント・アサバスカ見えて懐かしいが、昨日に続き山火事の影響が感じられる空の色がもどかしい。
展望台からは足元の花々を愛でながら広いメドウ(草原)を進む。 メドウから見たウィルコックス・ピークの頂は遙かに遠かった。 標識がなければ通過してしまいそうな特徴のないウィルコックス・パス(峠)には新しい道標が立っていた。
パスからはケルンに導かれてウィルコックス・リッジ方面に僅かに進み、薄い踏み跡を辿ってウィルコックス・ピークに向かって下り気味に進む。 意外にも再び踏み跡は明瞭になり、顕著な尾根の右斜面を巻いていく一筋の道が見えた。 見た目どおりの歩き易い踏み跡を辿り、残雪が僅かに残っていた岩場の先で尾根に上がる。 尾根の傾斜は緩く、予想以上に楽な登りがしばらく続いた。
核心部となる山頂手前のスクランブル区間では、新しいオレンジ色のテープが巻かれたケルンが要所要所にあり、これに従って尾根を右から巻くように登っていくと部分的に踏み跡も見られ、予想よりも無難に偽ピークを経てその先の山頂に着いた。 ケルンが立つ高度感のある山頂からはコロンビア・アイス・フィールドの山々先日登ったタングル・リッジがなどが望まれたが、山火事の影響で空の色が濁っているのが惜しまれた。 意外にも山頂にはレジストリーBOXが無く、三人の足跡を残すことが出来なかった。
山頂からの下山はミカコさんの提案で、往路では通らなかったウィルコックス・リッジの展望所に立寄り、アサバスカ・グレイシャーの展望を間近に楽しんだ。 予報どおり気温が高い一日だったが、駐車場でミカコさんが用意してくれた冷たいスイカをいただいて生き返った。
山域 ジャスパー国立公園
THへの距離 310km THへの時間 3:10
THの標高 2040m 山頂の標高 2884m
単純標高差 844m 累積標高差 1017m
歩行距離 13.4km 所要時間 9:00
【ケファレン・レイク】
7月21日、レイク・ルイーズの先で1号線から93号線に入ると間もなく路肩で停車している車の列があり、道路脇で無心に花々を食んでいるブラック・ベアの姿が間近に見られた。 93号線沿いのボウ・レイクやウォーターファール・レイクの展望地に立ち寄ってからTHの駐車場に向かう。
THから少し下り、ミスタヤ・リバーに掛かる橋を渡ってケファレン・レイクとサーク・レイクの二つの湖へ通じるハイキングトレイルに入る。 警報級の熱波が北米全体を襲っているが、緩やかな勾配の樹林帯のトレイルは涼しく、日影を好むゴゼンタチバナの大群落が見られた。 30分ほどでサーク・レイクとの分岐があり、大きな道標に従って右のケファレン・レイクに向かう。
分岐からも勾配が殆どないハイキングトレイルが続き、予想以上に多くの花々が見られた。 トレイルの脇には地図には記されていない広い湿原があり、以前はここにも湖があったことが想像された。 分岐から1時間ほどで着いたTEのケファレン・レイクの湖尻からは眼前にマウント・ケファレンが屹立し、ハウス・ピークなどの山々の展望が良かった。 ハイキングトレイルは湖尻から100mほどの所で途絶え、湖畔を周回する踏み跡は見られなかった。
帰路はサーク・レイク分岐からもう一方のサーク・レイクを尋ねるのが理想的だが、スケジュールがタイトになっているため再訪を誓ってTHに戻った。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 245km THへの時間 2:30
THの標高 1670m TEの標高 1730m
単純標高差 60m 累積標高差 258m
歩行距離 8.2km 所要時間 3:30
【サウス・ローソン・ピーク】
7月22日、40号線から未舗装の742号線に入り、ロウアー・カナナスキス・レイクの北端を起点とする林道の分岐付近に車を停める。 ゲートのある沢沿いのフラットな林道には新しいクマの糞が何度も見られたので、ステレオのボリュームをMAXにして歩いた。 林道の終点にはハイキングの地図に記された登山道の入口(TH)があった。
THから山頂に伸びる顕著な尾根に取り付くと、日本の山の登山道のような明瞭な踏み跡が山頂まで途切れることなく続いていた。 数日前から北米全体を襲っている熱波による山火事の影響で終始展望は冴えなかったが、森林限界を越えてからの尾根には予想以上に多くの花々が咲いていて楽しめた。 ロッキーの山としては緑濃い牧歌的な山頂にはリスではなくネズミ達が走り回っていた。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 135km THへの時間 1:20
THの標高 1680m 山頂の標高 2386m
単純標高差 706m 累積標高差 734m
歩行距離 7.8km 所要時間 5:30
【リパリアン・マウンテン】
7月23日、フィッシュ・クリーク駐車場から25年前に辿った懐かしいスコーキー・バレーに通じる林道(テンプル・ファイア・ロード)を4キロほど歩く。 林道の終点でスコーキー・バレーへのトレイルを左に分け、スキー場の管理道路をゲレンデトップまで登る。 ゲレンデトップからは懐かしいリダウト・マウンテンやターミガン・ピークなどの山々が見え始めたが、残念ながら今日も山火事の影響で霞んでいた。
ゲレンデトップからは踏み跡が薄くなり、GPSを頼りに草付きの斜面を登って右手の尾根に取り付く。 踏み跡がある広い尾根からはレイク・ルイーズ方面にマウント・ビクトリアが霞んで見えた。 眼前に立ち塞がる岩場を右側から巻いて登るとカールの底のような広場があり、標識の代わりに細長い鉄棒が立っていた。
広場から先はガレ場の急斜面になっていたが、踏み跡が見つからなかったので右手の岩場との際を登ったが、途中から登り易い岩場の方に進むと、最後の最後で行き詰まってしまい難儀した。 スリリングな岩場を強引にスクランブルで登り切ると、そこから先はなだらかで幅の広い頂上稜線が山頂まで続いていた。
ケルンが立つ山頂にはナルゲンボトルのレジストリーBOXが置かれ、コメントを記すメモ帳が入っていた。 孤高の山頂からはスコーキー・バレーの山々やレイク・ルイーズ方面の山々が望まれたが、ここ数日続いている山火事の影響で霞んでいたことが惜しまれた。
隣接するパープル・マウンドを経て周回するルートが理想的だが、明日の長い行程を考え今回はより短時間で下れる往路を戻った。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 190km THへの時間 2:00
THの標高 1690m 山頂の標高 2728m
単純標高差 1038m 累積標高差 1050m
歩行距離 14.4km 所要時間 8:00
【マウント・アラン】
7月24日、広い駐車場とトイレ棟があるTHを未明に出発する。 北米全土を襲った熱波がようやく去り、放射冷却で気温は7度と久々に一桁になった。 マウント・アランは山頂までハイキングトレイルがある山なので暗くても歩き易いが、クマは早朝に活動が活発になるため、ステレオのボリュームをMAXにして歩いた。
森林限界を過ぎるとお花畑になったが、予想以上に花が多くて嬉しくなる。 ご来光の後の空の色も澄んでいて、久々に山火事の影響がないようで足取りは軽い。 沢山の種類の花々を愛でながらジグザグに切られた歩き易いトレイルを登っていく。 広い尾根は次第に顕著になり、周囲の山々の展望は登るにつれて良くなった。
オリンピック・サミットの長い頂上稜線からは風が強くなったが、気温も上がってきたのでむしろ有難かった。 どこが山頂か分らないような地味なオリンピック・サミット(2470m)の山頂からは端正なマウント・アランの全容が見渡せた。
オリンピック・サミットから先もハイキングトレイルは明瞭で歩き易く、一旦姿を消した花々も再び散見されるようになった。 『ロック・ガーデン』と呼ばれる岩のオブジェの間を縫うように進み、マウント・アランへの最後の長い登りとなる。 一か月前にワスーチ・ピークから見た残雪は全く見られなかった。
山頂にはケルンの代わりに三角点のような筒状の標石が置かれていたが、残念ながらレジストリーBOXは無かった。 久々に山火事の影響がない山々の展望を楽しめると思ったが、餌付けされたマーモットがすぐ近くまで寄ってくるので落ち着かなかった。
帰路は登り返しの少ないオリンピック・サミットを再度越え、森林限界手前のお花畑で今シーズン最後の撮影大会を充分楽しんだ。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 105km THへの時間 1:10
THの標高 1470m 山頂の標高 2819m
単純標高差 1349m 累積標高差 1437m
歩行距離 15.8km 所要時間 10:00
帰宅後はミカコさんとダウンタウンのベトナム料理店で今シーズンの山行の打ち上げをした。 カルガリーでは今までで一番酷い山火事の影響が見られた。
7月25日、カルガリーは今日も山火事の影響で空の色が濁っていた。 昨年はちょうどこの時期に日本から来たので、もしかしたら今年の盛夏はもっと山火事が多く発生するのかもしれない。
アパートから空港までは僅か20分ほどで、レンタカーの返却場所も記憶しているため気は楽だ。 平日だったこともありバカンスの影響は全くなく、航空会社のカウンターや出国ロビーは空いていた。 成田へのフライト時間は偏西風の影響で往路よりも1時間半長く10時間半掛かるが、車とフェリーで札幌まで行くより早くて楽だった。
昨年に続き3回目となった今回のカナディアンロッキーへの山行は、昨年より1か月早い6月下旬からスタートしたことで山火事の影響を受けることが少なく、気温が平年並みだった7月上旬までは山々の展望が素晴らしく、季節の花々も多く見られた。 一方で7月中旬以降は北米大陸を襲った熱波の影響で山火事が頻発し、花々は依然として楽しめたものの山々の展望は冴えなかった。
昨年と同じようなスタイルで日帰りの登山やハイキングをしたので経験値は増したが、昨年以上に山小屋はもちろんテント場の予約も地元の人でも難しい状況であることが分り、ヘリで入山するアシニボインや抽選によりバスで入山するレイク・オハラなどのコアなエリアには個人レベルで行くことは困難であるため、今後も日帰りでの登山やハイキングを続けていくことにした。