キナバル

   昨年末にセブンサミッターでもある岳友の柴田さんからマレーシアの最高峰のキナバル(4095m)へのお誘いがあり、ありがたくご一緒させていただくことになった。 日程など具体的な計画はまだこれからということだったが、柴田さんが今回の山行のエージェントとして選んだ『ボルネオトレイル』(日本人の女性スタッフがいるため、日本語のメール対応が可能)との折衝を全てやってくれたので助かった。

   マレーシアで最初の世界遺産に登録されたというキナバルは、山中にあるアタックベースの山小屋のベッド数(120床)により厳格な入山規制を行い、現地の山岳ガイドを雇用することが義務付けられているため、山小屋の宿泊の予約を確定させることがスタートラインだ。 キナバルが聳えるボルネオ島には雨期と乾期があり、3月からが乾期となるため、登山期間は3月上旬とすることにした。 キナバルの登山は通常1泊2日の行程だが、山小屋が事前の予約制となっているため、運悪く登頂日の天気が悪かった場合には登頂が出来なくなってしまうので、柴田さんと協議した結果、非常に割高になってしまうが、山小屋に連泊して2回の登頂のチャンスが得られるようエージェントにオーダーした。 ちなみに登頂のチャンスが1回の場合、山小屋の宿泊代(食事付)と山岳ガイド料、そしてコタ・キナバルから登山口までの車の送迎料の総額は一人当たり邦貨で約48,000円で、登頂のチャンスが2回の場合は約92,000円だった。 尚、後者は日本のツアー会社のプログラムでも散見されるが、割高になってしまうためあまり一般的ではないようだ。

   今回の山行は最短で現地3泊4日でも可能だったが、上海経由で機中泊となる中国東方航空の格安チケット(邦貨で約54,000円)を買ったこともあり、最終的には6泊7日という余裕のある行程となった。 ホテルはゲートウェイとなるコタ・キナバルの中心部にある『MANDARIN』を柴田さんがブッキング・コムで予約してくれた。 料金は二人でも泊まれるキングサイズのベッドのある部屋が一泊当たり邦貨で約5,000円だった。 

   2月28日、成田空港を11時に発つ上海経由の北京行きの便に乗り、上海空港で福岡空港から来た柴田さんと落ち合う。 成田から上海へは3時間半のフライトだった。 上海空港からは横6列シートの小型機に乗り、コタ・キナバル空港には1時間遅れで日付が変わった深夜の1時半に着いた。 日本との時差は上海とコタ・キナバルは共に1時間だった。 空港からホテルまではタクシーを利用したが、タクシー乗り場にある窓口で乗車チケットを45マレーシアリンギット(邦貨で約1,200円・昼間は35リンギット)で買うシステムになっていた。 ホテルまでは深夜で道路が空いていたこともあり10分ほどで着いた。 ホテルの部屋は予想以上に広くて快適だった。


上海空港


コタ・キナバル空港


タクシー乗り場にある窓口で乗車チケットを買う


ホテル『MANDARIN』


ホテルの室内


   3月1日、ゆっくりと昼前に起床し、コンビニで買っておいたパンを食べてから町の中心部にあるホテルの周囲を散策する。 エアコンの利いたホテルを出ると、外は日本の盛夏のような蒸し暑さで、南国に来たことを実感する。 町中の車の通行量は多いが車のスピードは遅く、穏やかな国民性なのかクラクションの音は皆無で、信号機のない所で道路を渡ろうとすると車が止まってくれる。 治安が良いのか町中には制服の警官の姿は見られなかった。 メインストリート沿いは近年再開発されたのか住宅や小さな商店は見られず、大型のショッピングセンター、ガソリンスタンド、公園などが点在していた。 エアコンが利いたショッピングセンターのフードコートにはマクドナルドやKFCがあった。 

   昼過ぎに柴田さんと昼食を食べに行く。 ホテルの周囲の飲食街は中国を初め東南アジア諸国からの旅行者の姿が多く、旅行者向けの面白そうな店が沢山あったが、入山前にお腹を壊すのは嫌なので、幾つかある日本食のレストランの一つの『錦』に入った。 店内にはスタッフを初め日本人のお客さんはいなかったが、注文したランチメニューの料理は安価な割にそこそこ美味しかった。 

   昼食後は近隣の大型のショッピングセンターや海辺の市場などの散策をして過ごす。 ショッピングセンターでの両替は10,000円が367リンギットだったので、1リンギットが約27円ということが分かった。 市場で売られていた“果物の王様”と呼ばれるマレーシア特産のドリアンは、ホテルには持ち込み禁止となっていた。 明日に備えての早めの夕食は、先ほどとは違う日本食のレストランの『長崎』に行き、演歌が流れる居酒屋のような店内でディナーメニューの和定食を食べた。 天気予報では向こう3日間は晴れの天気が続くようで、雨の心配は全く無さそうだった。


ホテル『MANDARIN』


市街地の案内板


ホテルの周囲を散策する


ブーゲンビリア


セブンイレブン


大型のショッピングセンター


ショッピングセンターの内部


ホテルのロビー


日本食のレストランの『錦』


『錦』の店内


ランチメニューの唐揚げカレー定食


大型のショッピングセンター


ショッピングセンターの中にあるたこ焼店


コタ・キナバルの海辺


海辺の市場


“果物の王様”と呼ばれるマレーシア特産のドリアン


日本食のレストランの『長崎』


『長崎』の店内


ディナーメニューの和定食


   3月2日、7時前にホテルをチェックアウトし、エージェントの送迎車をロビーで待つ。 着替えなどの荷物が入ったボストンバッグはホテルが無料で預かってくれた。 意外にもエージェントの車は時間よりも少し早くホテルに来た。 途中でもう一組の登山客を拾い、入山手続をするキナバル国立公園本部(P.H.Q)へ向かう。 予報どおり朝から雲一つない快晴の良い天気だ。 コタ・キナバルの郊外には所々に新興住宅地が見られ、マレーシアのボルネオ島部の生活水準は予想よりも低くないことが分かった。 カーブが多い急坂が続く山間部に入っても道路の舗装状態は非常に良く、運転手がスピードを出して飛ばしたため、コタ・キナバルから2時間足らずでP.H.Q(1564m)に着いた。 P.H.Qからは荒々しいキナバルの山塊が眼前に大きく望まれた。 大勢の登山者や観光客で賑わうP.H.Qの管理事務所で簡単な入山手続きを行い、チェックポイントで見せるIDカードを受け取る。 間もなく私達の山岳ガイドから声を掛けられた。 名前はライナスとのことだった。


エージェントの送迎車でキナバル国立公園本部(P.H.Q)へ向かう


コタ・キナバルの郊外には所々に新興住宅地が見られた


カーブが多い急坂が続く山間部に入っても道路の舗装状態は非常に良かった


P.H.Qの手前から見たキナバル


大勢の登山者や観光客で賑わうP.H.Q


P.H.Qの管理事務所で簡単な入山手続きを行う


チェックポイントで見せるIDカード


管理事務所にある山頂までのルート図


P.H.Qから見た荒々しいキナバルの山塊


山岳ガイドのライナス


   事務所のスタッフから昼食用のランチパックを受け取り、園内の専用車に乗って実質的な登山口となる登山ゲートに向かう。 10分ほどで車止のある登山口(1866m)に着いて歩き始めると、そのすぐ先に登山ゲートのチェックポイントがあり、IDカードを見せて登山道に入る。 ライナスから、今日泊まる山小屋(ラバン・ラタ・レストハウス)まではここから通常6時間を要するとの説明があった。 ライナスから登山経験を聞かれた柴田さんがエベレストだと答えると、初めはジョークだと思っていたようだった。 計画の段階では熱帯雨林のキナバル特有の気象条件による午後からの雨を危惧していたが、ライナスの話ではここ20日間ほど雨は全く降っていないとのことだった。 

   山小屋までの登山道は予想以上に良く整備されていて歩き易かったが、段差のある階段が多いのが玉にキズだ。 樹間が詰まっているため展望は無いが、陽射しが遮られていることと標高が高いことで蒸し暑さはなく、ゆっくり登ればそこそこ快適だった。 登山道に見られる笹やシダ類の植物は日本のものとあまり変わらず、珍しい花も咲いていなかったのでカメラの出番は殆どなかった。 登山ゲートから山小屋までの距離は6キロ(山頂までは8.5キロ)とのことで、500m毎に距離と標高が記された案内板が設置されていた。 また、ガイドブックどおり途中にはベンチやトイレのある東屋(休憩所)が7か所あり、付近には餌付けされた黒いリス達の姿が見られた。 コタ・キナバルへの観光客と同じように、中国を初め東南アジア諸国からの登山者が圧倒的に多く、欧米人は数えるほどだ。 日本人の姿も全く見られなかったが、4つ目の東屋でようやく下山してきた西遊旅行のツアーの8名の団体に出会った。 東屋ごとに短い休憩を取りながら、健脚の柴田さんには申し訳ないが終始マイペースで登る。 標高3000m辺りからは植生が変わって木々の背が低くなり、頭上にキナバルの山頂部の岩峰が望まれるようになった。 ライナスが登山道から少し外れた所に食虫植物のウツボカヅラがあることを教えてくれた。 強い陽射しを浴びるようになるとさすがに暑くなってきたが、登山ゲートから5時間ほどで今日泊まるラバン・ラタ・レストハウス(3272m)に着いた。


車止のある登山口(1866m)


登山ゲートのチェックポイント


登山道は樹間が詰まっているため展望は無いが、陽射しが遮られていることで蒸し暑さはなかった


500m毎に距離と標高が記された案内板が設置されていた


登山道には段差のある階段が多かった


ベンチやトイレのある東屋(休憩所)


餌付けされた黒いリス


2つ目の東屋の先にある山頂方面の岩壁が見えるポイント


山小屋までの中間点


5つ目の東屋


植生が変わって木々の背が低くなる


標高3000m辺りからは頭上にキナバルの山頂部の岩峰が望まれるようになった


食虫植物のウツボカヅラ


ラバン・ラタ・レストハウス前のヘリポート(3272m)


   ラバン・ラタ・レストハウスは予想以上に新しくモダンな造りで、1階は広い展望レストランになっていた。 ライナスから明日の登頂スケジュールとラバン・ラタ・レストハウスの食事の時間について、次のような説明があった。 明日は1時半に起床して2時から軽食を食べ、2時半に集合して2時45分に山小屋を出発する。 山頂までは通常3時間を要し、山頂での写真撮影などの休憩は30分とする。 山頂から山小屋までの下りは通常2時間を要する。 ラバン・ラタ・レストハウスの朝食は7時半から10時まで、昼食は11時半から14時まで、そして夕食は16時半から19時までとなっている。 通常は山小屋へ下山してから遅い朝食を食べ、昼前に登山ゲートへの下山を始めるが、私達は山小屋に連泊するため、明日の17時に明後日のスケジュールについて決めることになった。

   予想に反してラバン・ラタ・レストハウスに着いてからすぐに軽い頭痛が始まってしまったが、柴田さんは頭痛は全くないとのことで、残念ながら高所に弱い体質は変わっていなかった。 ライナスから部屋の鍵を受け取り2階の寝室に行くと、木製の二段ベッドが二つある個室だった。 ベッドメイキングのされた部屋にはスリッパもあり、予想以上に清潔な感じがした。 共用の男女別のトイレは水洗で隣にシャワー室もあったが、今は水不足のため使えないようだった。 同室者は香港からの若い男性だった。

   夕食の時間まで柴田さんと展望レストランで寛ぐ。 レストランの売店にはお菓子や清涼飲料が売られていて、缶コーラが1本11リンギット(邦貨で約300円)、ミネラルウォーターが1本7リンギット(邦貨で約200円)だった。 今日は夕方になっても雲が湧かず、一日中陽が射していた。 夕食のバイキングは予想以上に料理の種類が多く、味も自分的には充分満足出来るものだった。 18時過ぎにはベッドに入ったが、予想以上に頭痛が長引き、2〜3時間は眠れると思ったが、結局一睡も出来なかった。 夕食の食べ過ぎも原因だったと思われる。


ラバン・ラタ・レストハウスの1階の展望レストラン


ラバン・ラタ・レストハウスの1階の受付と売店


ラバン・ラタ・レストハウスの2階の廊下


ラバン・ラタ・レストハウスの2階の寝室


ラバン・ラタ・レストハウスの2階の水洗トイレ


夕食のバイキング


夕食のバイキング(デザート)


   3月3日、1時前に起床してトイレを済ます。 寝不足だが体調は悪くない。 2時から始まる軽食を食べ、売店でテルモスに入れるお湯を買い(1.5リンギット)、予定どおり2時半にレストランに現れたライナスと2時40分にラバン・ラタ・レストハウスを出発。 他の人達はもう少し遅く3時頃に出発するようだった。 歩き始めは風もなく予想よりも暖かかった。

   登山道は最初から急な階段上の登りで、深呼吸をしながらゆっくり登っていくと、予想どおり頭痛がなくなってきた。 階段の脇には転落防止の太いロープが張られていたので、それを掴みながら登ると楽だった。 山小屋から45分ほどで8畳ほどの広さの『展望デッキ』に着いて一息入れる。 上方には他の山小屋に泊まっていた人達のヘッドランプの灯が沢山見られ、さながら盛夏の富士登山のようだ。 天気は良さそうで麓の町の夜景が見えた。 展望デッキからは切り立った岩場に取り付けられた新しい階段の道となり、傾斜が緩んだ所からルートの目印を兼ねた太いロープが張られたスラブ状の岩盤を登る。 やや強い風が吹いてきたのでジャケットを着る。 4時に中間点のサヤサヤのチェックポイント(3668m)に着き、IDカードをスタッフに見せる。 チェックポイントにはトイレもあり、しばらくここで休憩する。

   チェックポイントから先も太いロープが張られたスラブ状の岩盤の登りが続いたが、ロープを掴んで登るのはほんの僅かな区間で、傾斜は上に行くほど緩やかになった。 山頂に到着する時間も読めてきたので、ペースを意識的に遅くして登る。 標高3929m(登山ゲートからの距離8キロ)と記された看板を過ぎると風が一層強くなってきたので、さらにダウンジャケットを着込む。 山頂手前からはご来光への時間調整をしているのか高度障害なのか分からないが、ルート上で休んでいる人達が多く見られた。 間もなく燃えるような朝焼けが見られ、ご来光が期待出来た。 山頂直下は簡単な岩場となり多少渋滞していたが、予定どおり山小屋からほぼ3時間で待望のキナバルの山頂(ロウズ・ピーク/4095m)に着いた。 まだ暗いので山頂からの展望が得られないのが玉にキズだ。


2時から始まる軽食


2時40分にラバン・ラタ・レストハウスを出発する


登山道は最初から急な階段上の登りとなるく


8畳ほどの広さの『展望デッキ』


展望デッキからは切り立った岩場に取り付けられた新しい階段の道を登る


傾斜が緩んだ所からルートの目印を兼ねた太いロープが張られたスラブ状の岩盤を登る


中間点のサヤサヤのチェックポイント(3668m)


チェックポイントから先も太いロープが張られたスラブ状の岩盤の登りが続いた


風が一層強くなってきたのでダウンジャケットを着込む


山頂直下の岩場


燃えるような朝焼け


キナバルの山頂(ロウズ・ピーク)


   山頂は猫の額ほどのスペースしかなく、記念写真を撮るための順番待ちとなっていたが、ガイド達が山頂での撮影時間を1人1分程度で済ませるようコントロールしていたので混乱はなかった。 山頂での記念写真を撮り終えると、少し下った所でご来光を待つようにライナスから指示があった。 風の収まった山頂直下で30分ほどワクワクしながら待ち続けると、幾つかあるキナバルの岩峰のピークの一つであるキング・ジョージ・ピーク(4060m)付近から素晴らしいご来光が見られた。 ご来光直後の山頂は空いていたので、再度山頂に立って反対方向の景色を眺めて写真を撮った。


山頂から見たセント・ジョンズ・ピーク(4090m)


ご来光を待つ登山者で賑わうキナバルの山頂


山頂でのご来光


山頂から見たビクトリア・ピーク(4090m)


   6時半に山小屋に向けて下り始める。 登りでは見えなかった特徴のあるサウス・ピーク(3921m)や、4年前の地震で岩塔の片方が崩壊してしまったドンキー・イヤーズ・ピーク(4054m)などが見え、登ったルートの状況も良く分った。 写真を何枚も撮りながら下ったが、予想よりも早く1時間半ほどでラバン・ラタ・レストハウスに着いた。 今日登った日本人は私達二人だけのようだった。 明日のスケジュールについては昨日の打ち合わせどおり17時に決定することをライナスに伝え、レストランで祝杯を上げて遅い朝食を食べた。 予想どおり山頂を往復したことで順応が進み、煩わしい頭痛は全く無くなった。


山頂からサヤサヤのチェックポイントへ


最高峰のロウズ・ピーク(4095m)


山頂からサヤサヤのチェックポイントへ(右が南峰)


セントジョンズ・ピーク(4090m)


サウス・ピーク(3921m)


山頂からサヤサヤのチェックポイントへ


ドンキー・イヤーズ・ピーク(4054m)


サヤサヤのチェックポイント


サヤサヤのチェックポイントからラバン・ラタ・レストハウスへ


展望デッキから見た登山道


南峰直下のパナール・ラバンの大岩壁


ラバン・ラタ・レストハウス


レストランで祝杯を上げる


   ラバン・ラタ・レストハウスに連泊するのは私達だけのようで、昼前になるとレストランに人影はなくなり、スタッフによるベッドメイキングが始まった。 昼食はバイキングではなく、ワンドリンク付きのランチメニューだったが、選択出来るメニューはどれも軽食という感じだった。 午後に入ると三々五々登山者が到着したが、その中に4人の日本人の大学生のグループの姿が見られた。 柴田さんと明日のスケジュールについて協議した結果、天気と体調が良ければ、せっかくなので再度山頂に登ろうということになり、早々に昼寝を決め込んだ。

   17時にライナスがレストランに現れたので、明日も再度山頂に登ることを告げると、ライナスは特に驚くような素振りは見せず、登頂のスケジュールは今日と全く同じで、山小屋から登山ゲートへの下山は9時にしますということを淡々と説明した。 今日の同室者はカナダからの若い男女のカップルだった。 夕食のバイキングの内容は、昨日と半分ほどメニューが変わっていたので嬉しかった。 夜は頭痛がなくなったので短時間ながら熟睡出来た。


ワンドリンク付きのランチメニュー


レストランから見た雲海


夕食のバイキング


   3月4日、昨日と全く同じように1時前に起床してトイレを済ます。 今日も予報どおりの良い天気だ。 疲労感はややあるが柴田さん共々体調は良いので、レストランで軽食を食べてから予定どおり2時半にレストランに現れたライナスと共に山頂に向かう。 昨日と同じように暖かいが、予想に反して風が少し吹いていた。 展望デッキまでの階段は団体のパーティーで少し渋滞していたが、展望デッキから先は昨日のように沢山のヘッドランプの灯が見られなかった。 順応が疲労をやや上回っているようで、登るペースは昨日よりも僅かに速い。 ルートの記憶は鮮明で、暗くても手に取るように分かる。 昨日とは逆に風は次第に収まってきた。 ペースが遅いグループをいくつか追い越し、中間点のサヤサヤのチェックポイントには4時前に着いた。

   チェックポイントを過ぎてからしばらくすると、いつの間にか私達が先頭を歩くようになり、昨日よりもだいぶ早く山頂に着くことが想定された。 満天の星空には天の川も見られ、振り返るとヘッドランプの灯が山小屋から切れ目なく続いている。 麓の町の夜景も昨日以上に良く見え、今日も登頂はもちろんのこと、素晴らしいご来光が期待出来た。 このままのペースで登り続けると、山頂でご来光を待つ時間が長くなってしまうが、山頂に一番乗りするのも一興なので、時間調整することなく登り続けた。 5時20分、山小屋から2時間40分で誰もいない静かなキナバルの山頂に着いた。 昨日に続いての2度目の登頂なので感動はやや薄いが、山頂での喧噪がないのが嬉しい。 柴田さんと山頂の狭い岩の上に立ち、ライナスに記念写真を撮ってもらい、直後に登ってきた人に三人の記念写真を撮ってもらう。 間もなく荘厳な朝焼けが始まったが、ご来光まではダウンジャケットを着込んで1時間近く待たなければならなかった。 次々と山頂に到着する人達の中に4人の日本人の大学生グループの姿も見られた。


軽食のバイキング


2時40分にラバン・ラタ・レストハウスを出発する


展望デッキまでの階段は団体のパーティーで少し渋滞していた


展望デッキから先は昨日のように沢山のヘッドランプの灯が見られなかった


麓の町の夜景と後続者のヘッドランプの灯


中間点のサヤサヤのチェックポイント(3668m)


チェックポイントから山頂へ


標高3929m(登山ゲートからの距離8キロ)と記された看板


私達が先頭を歩くようになる


山頂直下の岩場


キナバルの山頂(ロウズ・ピーク)


キナバルの山頂(ロウズ・ピーク)


荘厳な朝焼け


   昨日とほぼ同じ時間に同じ位置からのご来光を拝み、もう何も思い残すことなく山小屋に向けて足早に下る。 下りのペースも昨日より早く、山頂から僅か1時間15分でラバン・ラタ・レストハウスに着いた。 レストランで遅い朝食を食べ、荷物を整理してライナスとの取り決めどおり9時にラバン・ラタ・レストハウスを発つ。 好天続きで売店のコーラやミネラルウォーターがなくなり、美味しくないお湯を買うハメになってしまった。 目標を失った身には単調で変化に乏しい下りは堪える。 退屈しのぎに柴田さんがすれ違う登山者の人数を数えながら下ると100人を少し超え、うち日本人は女性を中心に7〜8人だった。 登山ゲートに近づくにつれて雲が湧き始め、キナバルの山頂方面は全く見えなくなったが、むしろ涼しくてありがたかった。 正午前にチェックポイントのある登山ゲートに着き、その先の車止めでライナスに相応のチップを手渡した。


山頂でのご来光


山頂からサヤサヤのチェックポイントへ


山頂からサヤサヤのチェックポイントへ


サヤサヤのチェックポイントからラバン・ラタ・レストハウスへ


7時40分にラバン・ラタ・レストハウスに着く


ラバン・ラタ・レストハウスのレストラン


朝食のバイキング


9時にラバン・ラタ・レストハウスを発つ


ラバン・ラタ・レストハウスから登山ゲートへ


ラバン・ラタ・レストハウスから登山ゲートへ


正午前にチェックポイントのある登山ゲートに着く


登山ゲートの先の車止め


   園内の専用車に乗ってP.H.Qの管理事務所に行くと、事務所のスタッフから登頂証明書を2枚授与された。 昼食は管理事務所の近くの指定されたレストランで食べたが、昨日と同じようにバイキングではなく、ワンドリンク付きのランチメニューだった。 エージェントの送迎車は15時に来ることになっていたのでゆっくり寛いでいると、事務所のスタッフから臨時の送迎車が来たと伝えられ、図らずも1時間ほど早くコタ・キナバルのホテルに帰り着くことが出来た。 シャワーを浴びて一休みしてから、先日行った日本食のレストランの『錦』でディナーメニューの和定食を食べた。


P.H.Qの管理事務所


2枚の登頂証明書


管理事務所の近くのレストラン


レストランの店内


日本食のレストランの『錦』


ディナーメニューの和定食


   3月5日、朝食はホテルの周囲の飲食街で一番人気の『Kedai・Kopi・Yee・Fung』(ケダイ・コピ・イーフォン)という大衆食堂で食べる。 この店は『地球の歩き方』で紹介されている郷土料理の店で、安くて美味しいのみならず、店内も見た目以上に清潔だった。

   今日は深夜の便に乗って帰国するので、それまで近場の観光をすることにした。 幾つかの候補の中から、午前中は動物園に行くことになり、タクシーでコタ・キナバル郊外の動物園『LOK KAWI WILDLIFE PARK』に向かう。 ホテルから動物園までは30分ほどで、タクシー料金は80リンギット(邦貨で約2,200円)だった。


飲食街で一番人気の『Kedai・Kopi・Yee・Fung』


『Kedai・Kopi・Yee・Fung』の店内


朝食の土鍋で焼いたチキンライス


商店街の両替商


タクシーでコタ・キナバル郊外の動物園に向かう


コタ・キナバル郊外の動物園『LOK KAWI WILDLIFE PARK』


   2時間後に迎えにきてくれることをドライバーにお願いし、数十年ぶりに動物園を見学する。 入園料は20リンギット(邦貨で約500円)だった。 当初はただの暇つぶしと考えていたが、園内で飼われている珍しい鳥や動物たちは、なぜか人間をあまり意識せず自然体で行動していたので、それが予想以上に面白く、ついつい時間をオーバーして動物達の虜になってしまった。 園内には植物園も併設されているためか、日本人の団体の観光客の姿が多く、入園者の半分以上が日本人だった。


動物園の園内


白いオウム


赤いオウム


虹色のオウム(GREEN WING MACAW)


サイチョウ


テングザル


ハリネズミ


水牛


エミュー


園内に併設された植物園


水芭蕉のような花


赤い花と白い花


   約束した時間に少し遅れて入場口に戻ると、意外にもタクシーのドライバーが故障した車を修理していたので、売店で高価なドリアンのアイスクリームを食べながら車の修理が終わるのを待った。 ホテルへの帰路にサバ州立の大きなモスクに寄ってもらい、昼過ぎにホテルに戻った。 遅い昼食を朝食で入った大衆食堂の隣の店で食べ、午後は土産物の買い出しなどで、新しい大型のショッピングセンターを見て回った。


故障した車を修理するタクシーのドライバー


高価なドリアンのアイスクリーム


サバ州立の大きなモスク


ケダイ・コピ・イーフォンの隣の大衆食堂で昼食を食べる


大衆食堂のメニュー


新しい大型のショッピングセンター


ショッピングセンターの内部


ショッピングセンターの斬新なトイレ


   最後の夕食は『地球の歩き方』に“行列のできる肉骨茶屋”として紹介されている『新記砂褒肉骨茶』(シンキー・バクテー)で香辛料の効いた豚のあばら肉の煮込み料理などを食べ、23時にホテルをチェックアウトしてタクシーでコタ・キナバル空港に向かう。 ホテルが手配してくれたタクシーは、スマホのアプリで登録されたUber(ウーバー)で、料金は僅か10リンギット(邦貨で約300円)だった。 乗継地の上海で福岡へ帰る柴田さんと別れ、成田への帰途についた。


“行列のできる肉骨茶屋”として紹介されている『新記砂褒肉骨茶』


香辛料の効いた豚のあばら肉の煮込み料理


スマホのアプリで登録されたUber(ウーバー)で空港へ向かう


山 日 記    ・    T O P