【カナディアンロッキー再訪】
1999年の夏に初めて行った海外旅行の地が、カナダのロッキー山脈(カナディアンロッキー)だった。 ロッキーの変化に富んだ氷河の山々や美しい湖沼を見てからは海外の山の魅力にとりつかれ、その後はヨーロッパアルプスを中心に世界の山々へ足繁く通うようになったが、果たして当時ロッキーで見た斬新な風景は、今でも同じような感動を与えてくれるのか、新しい風景との出会いよりもむしろそれを検証したいという思いが募っていた。 退職後はそれを実行すべく、以前から登頂の機会を窺っていたロッキーの名峰アシニボイン(3618m)のガイドの手配を現地のエージェントのヤムナスカ社に依頼したが、その直後にコロナが世界中に蔓延してしまい、計画を延期せざるを得なかった。
それから3年経ってようやく制約なしで海外に行けるようになったが、他の観光地と同じようにコロナ明けの観光客が殺到したことで、以前から予約が取りにくかったロッキーの登山基地のバンフやキャンモアのホテルは春先からすでに払底していた。 これは想定内のことで、登山口(トレイルヘッド)へのアプローチには時間を要するが、インフラの整ったゲートウェイのカルガリーにアパートを借りることにした。 想定外だったのは極端な円安(1CADが105円)で、コロナ明けの需要の増加も手伝ってアパートの家賃は1日約19,000円、レンタカーの料金は1日約12,000円、エアチケットは繁忙期にウエスト・ジェット航空の直行便を利用したことで1人268,000円だった。
アシニボインのガイドの手配は、ヤムナスカ社がコロナに起因した事業規模の縮小とコロナ明けの需要の急増で間に合わず、各山域の山小屋の予約も全く取れない状況だったので、前回悪天候で断念した日帰りのハイキングや登れなかった山を登り、まだ足を踏み入れていない北部のジャスパー方面や西部のゴールデンを起点とするハイキングを幾つか選んだが、出発直前に登山アプリのYAMAPに投稿されていた現地在住のミカコさんの登山記録を参考に登る山の数を増やしていくうちに、ハイキングよりも日帰りの登山がメインの計画となった。
2023年7月24日、成田からウエストジェット航空の直行便でカルガリーまでのフライトは9時間だったが、夏休みの混雑による機内清掃の遅れで出発が1時間遅れた。 機内は新しくとても清潔だったが、コロナ禍の後遺症か夕食と朝食は共に簡素だった。 預託荷物は1個で23sまでの制限があったが、今回の山旅ではこの範囲内で充分収まった。
前回の記憶は全くないが、カルガリー空港は最近リニューアルされたようで真新しかった。 出国前はネットでのeTA(電子渡航認証システム)の申請が煩わしかったが、入国審査は日本語表示の自動端末機で行えたのでとても楽だった。 喜んだのも束の間、レンタカーの受付待ちの行列が長く、車に乗り込むまでに2時間以上掛かった。 予約したカローラは意外にもハイブリッド車だった。
4年前にアメリカでカローラを運転したが、やはりセダンタイプの車は運転しにくい。 左ハンドルでの右側通行は慣れるまでに時間が掛かりそうだった。 予約したアパートがあるセイジ・ヒルというカルガリー北端部の新興住宅地は、建売住宅のように同じようなデザイン・規格の家が所狭しと建ち並んでいたので特定するのに苦労した。
予約サイトでの情報では分らなかったが、意外にもアパートの部屋は戸建ての住宅の地下室だった。 地上階に住む家主のウォールさんはとても親切な方で、備え付けの家電製品の使い方などを丁寧に教えてくれた。 図らずも住宅は新しかったので、地下室はとても綺麗で清潔だった。 部屋は50uほどの1LDKで、収納スペースが潤沢にあった。 生活に必要な家電製品(冷蔵庫・洗濯機・乾燥機・掃除機・空気清浄機・テレビ・アイロン・ドライヤー)や調理器具(電子レンジ・オーブン・フライヤー・食洗機・湯沸器・コーヒーメーカー・鍋・フライパン・食器)は全て完備され、フリーのWi-Fiも使えた。 バスタブも大きく、短期滞在というより長年住んでもストレスを感じないような造りで、恥ずかしながら全てにおいて自宅よりもハイスペックだった。 そして何よりも空調システムが高級ホテル並に静かで快適だったことが一番嬉しかった。 後で分ったが、カナダ(カルガリー)では地下室のある家が殆どで、それを借家にしている人が多いとのことだった。 セイジ・ヒルの標高は1130mで、1400mのバンフとそれほど変らなかった。
【ジョンソン・レイク】
7月25日、時差ボケの解消と車の運転に慣れるため、前回訪れたバンフ近郊のジョンソン・レイクへのハイキングに行った。 アパートから1qほどの所にあるショッピングモール内のマクドナルドで昼食用のハンバーガーを買う。 注文はタッチパネルの機械で行い、支払いはクレジットカードのみだった。
アパートからは5分ほどで201号線という無料の高速道路(フリーウェイ)に乗れ、そこから10分足らずでキャンモアやバンフ方面に通じる1号線(トランス・カナダ・ハイウエイ)に乗り換えられたので、予想よりも早くトレイルヘッド(TH)に着けそうだった。 1号線の制限速度は110qだったが、追い越し車線の車は殆ど120q以上で走行していた。 ワイパーとウインカーのレバーの配置が日本と逆なので車線変更の時は気を遣う。 途中に何カ所かあったガソリンスタンドや休憩場所を横目で確認しながら1時間ほどでカルガリーから100qほどのキャンモアを通過した。
キャンモアを過ぎると間もなくバンフ国立公園の料金徴収ゲートがあり、本線から左に分岐した料金所で年間パス(大人72CADとシニア62CAD)を買う。 バンフのI.Cで1号線を降りてジョンソン・レイクに向かう。 ジョンソン・レイクの駐車場は以前よりだいぶ広くなり、トイレも新しかった。 湖尻には観光客の姿が多く見られ、静かだった前回とは全く趣を異にしていた。 湖畔のハイキングトレイルを当時の想い出に浸りながら反時計回りに一周する。 トレイルの起伏は殆どなく、コンパクトながらロケーションが素晴しい。 前回は雲で遮られていたカスケード・マウンテンやマウント・ランドルなどの山々が湖畔からすっきり望まれ、のっけからリベンジが叶った。
ジョンソン・レイクのハイキングを終えてから近くのレイク・ミネワンカに立ち寄ってカルガリーに帰る。 途中のガソリンスタンドで給油の練習をしたが、給油機は満タンが前提ではなく、クレジットカードでの支払いのみなので、上限の金額を選択しないと給油が出来ない仕組みになっていた。 ガソリンの価格はリッター150CADほどで、ガソリンが高騰している今の日本より安かった。
カルガリーは陽射しが強くてかなり暑かったが、アパートの部屋は地下なので、エアコンを使わなくても室温が21℃と涼しくて快適だった。 水道の水は日本よりも硬いらしいが、自宅の水よりも美味しく感じられ、何よりも日々大量に使う水を買わなくて済むことが有り難かった。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 130km THへの時間 1:20
THの標高 1430m
単純標高差 20m 累積標高差 30m
歩行距離 3.0km 所要時間 2:00
【マウント・ヤムナスカ】
7月26日、カルガリーの朝の気温は14℃と涼しかったが、これでも平年より4℃も高いようだ。 昨日と同じパターンでマクドナルドでハンバーガーを買い、キャンモアの手前のトレイルヘッド(TH)に向かう。
未舗装の広い駐車場にはトイレがあり、平日にもかかわらず10台ほどの車が停まっていた。 THには新しい案内板があり、ネットの情報どおり山頂へのトレイルが整備され、トレイルエンド(TE)から山頂へのトレイルもオフィシャル(公認)化されたように思えた。 明るいハイキングトレイルは良く整備されていて、この山の人気の理由が頷けた。 案の定TEにも案内板があり、TEで引き返す人は少ないように思えた。
森林限界となるTEから先も踏み跡は続き、スクランブル(SC)と呼ばれる手を使う岩登りの区間では、岩に青いペンキマークが頻繁に印され、核心部の岩棚のトラバース部分には新しい鎖が設置されていた。 SCの区間を過ぎても要所要所に目印のポールが立ち、予想よりも登り易い登山道が山頂まで続いていた。 猫の額ほどの狭いマウント・ヤムナスカの山頂にはケルンが積まれ、カナダで登った記念すべき最初の山となった。 高度感のある山頂からの展望は雄大だったが、山の位置がロッキーの端にあるため、氷河のある高い山が見えないのが玉にキズだった。
下山は無難に往路を戻る予定だったが、周回ルートにも目印のポールが立てられていたので、ザレた斜面の明瞭な踏み跡を辿って下る。 トレイルは往路と同じように良く整備されスクランブルも無かったので、展望が良い周回ルートを辿ったことが全てにおいて正解だった。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 85km THへの時間 0:50
THの標高 1370m 山頂の標高 2240m
単純標高差 870m 累積標高差 900m
歩行距離 10.6km 所要時間 5:30
山の帰りは近所のショッピングモール内のスーパー『T&T』で食料品の買い出しをした。 このスーパーは中国製の食品や食材がメインだったが、日本製のラーメンや食品も豊富にあったので嬉しかった。 売られている商品のクオリティは総じて高く、バイキング形式の中華惣菜は夕食で食べる頻度が多くなった。 あんぱんやカリフォルニア産のコシヒカリも美味しかった。
【エルボー・レイク & ターミガン・サーク】
7月27日、カナナスキス・カントリーのエルボー・レイクとターミガン・サークの二つのハイキングトレイルを歩いた。 いずれのトレイルヘッド(TH)にも広い駐車場と新しいトイレがあった。 朝のTHの気温は6℃で寒いくらいだった。 エルボー・レイクは小さな湖で、湖尻の浅瀬にはマスの魚影が濃かった。 湖を一周する起伏のないトレイルを時計回りに歩いた。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 135km THへの時間 1:30
THの標高 1965m TEの標高 2090m
単純標高差 125m 累積標高差 150m
歩行距離 4.2km 所要時間 2:00
TH 〜 TE 〜 ターミガン・サーク展望所 (往復)
ターミガン・サークはフラワーハイキングの名所らしいが、温暖化により季節の花々は既に終盤を迎えていた。 ターミガン(ライチョウ)は見られなかったが、地リス(コロンビア・グラウンド・スクエリル)やナキウサギ(ピカ)が見られた。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 140km THへの時間 1:30
THの標高 2205m TEの標高 2510m
単純標高差 305m 累積標高差 330m
歩行距離 4.8km 所要時間 3:00
7月28日、寒気が強まりカルガリーの最低気温は8℃、最高気温は13℃だった。 アパートの部屋は地下室(ベースメント)なので、室温は21℃と外気温に影響されず一日中ほぼ一定だった。 天気は昨日以上に優れないので、スーパーでの買い物と洗濯をして過ごす。 大型の洗濯機と乾燥機は日本に持って帰りたくなるほど高性能だった。 天井から吹き出すタイプの室内のエアコンは音もなく快適で、滞在先をキャンモアやバンフなどの観光地のホテルではなくカルガリーのアパートにしたことが正解だったと思えた。
明日からしばらく良い天気が続きそうなので、天気予報(マウンテン・フォーキャスト)を四六時中チェックして登る山の順番などを綿密に計画する。 カナディアンロッキーでは山域によって天気がかなりに違うことが分った。
【テント・リッジ】
7月29日、朝のカルガリーは霧に包まれ、トレイルヘッド(TH)の気温は3℃だった。 テント・リッジはマイナーな山だと認識していたが、土曜日ということもあってTHには登山者の姿が散見された。 THには注意書きを記した標柱が一本立っているだけだったが、トレイルの踏み跡は予想以上に明瞭だった。 意外にもトレイルの脇にはまだ花が残っていたので退屈しなかった。 明るく開けた広いメドウに着くと、テント・リッジの山頂と人工物が建つニセピーク、そしてテント・リッジの長い稜線が一望された。
ニセピークに向けて登り始めると間もなく森林限界となり、スプレイ・レイクや見知らぬロッキーの山々が見えた。 森林限界からは顕著な岩尾根となったが、スクランブル(手を使って登る)する所は僅かで、殆どは明瞭な踏み跡を辿っていく。 ニセピークの山頂には気象観測機器が置かれていた。 ニセピークは展望が良く、指呼の間にテント・リッジが見えたが、その背後に聳えるマウント・スマッツなどの山々の存在感が勝り、テント・リッジはその展望台という感じが否めなかった。
ニセピークからはザレた斜面をコルに向けて下ってから登り返すが、見た目ほど苦しい登りではなかった。 猫の額ほどの狭いテント・リッジの山頂にはケルンなどは積まれていなかったが、山頂からの展望はニセピークよりも一段と素晴らしく、この山の人気の高さが頷けた。
山頂からは北の方向に起伏の少ない痩せた稜線を漫歩する。 稜線からは図らずも憧れのアシニボイン(3618m)の雄姿を初めて拝むことが出来た。 スプレイ・レイクが眼下に広く望まれるようになるとトレイルは下り一方となり、最後は周回ルートのTHに向けて尾根から右に折れて樹林帯に下る。 意外にも樹林帯にはライチョウの姿が見られた。 周回ルートのTHに降り立つと、林道には長い路駐の車の列が出来ていた。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 155km THへの時間 2:10
THの標高 1890m 山頂の標高 2535m
単純標高差 645m 累積標高差 794m
歩行距離 10.4km 所要時間 6:00
【パジェット・ピーク】
7月30日、1号線沿いのワプタ・レイクの湖畔のトレイルヘッド(TH)から鹿除けの柵のゲートを開けてパジェット・ルックアウトへのハイキングトレイルに入る。 駐車場には車が1台停まっていただけで、日曜日だが結果的に先行者はいなかった。 シェアブルック・レイクへのトレイルを左に分けると勾配が増し、樹間から周囲の山々が見えるようになった。 登山道のようなトレイルは良く整備されていて歩き易い。 トレイルエンド(TE)のパジェット・ルックアウトの展望地には簡素な小屋が建っていた。 小屋は山火事防止のための見張り小屋として使われていたとのことだった。 展望地からはカセドラル・マウンテンやマウント・スティーブンなどレイク・オハラ周辺の山々が眼前に迫り、眼下にはワプタ・レイクが望まれた。
TEからの踏み跡は予想以上に明瞭で、すぐに森林限界となった。 眼前に見えるニセピークに向かって幅の広い岩場を登っていくが、スクランブル(手を使って登る)する所は皆無で、大小のケルンに導かれながら次第に薄くなる踏み跡を辿っていく。 本来のルート以外の所にもケルンが積まれていたので、一番良いルートを辿るためにはその選択に気を使う必要があった。 ニセピークからは眼下にシェアブルック・レイクが見え、指呼の間のパジェット・ピークの山頂までは稜線漫歩だった。
小広い山頂には大きなケルンが立ち、その懐にピンク色のレジストリーBOXが置かれていた。 箱の中には先人が足跡を記したノートが入っていたので、登頂記念のコメントを記した。 山頂からの展望は素晴らしく、周囲に点在する氷河の山々もいくつか遠望された。 日曜日だったが意外にも山頂は貸し切りだった。
山域 ヨーホー国立公園
THへの距離 195km THへの時間 2:00
THの標高 1615m 山頂の標高 2565m
単純標高差 950m 累積標高差 980m
歩行距離 9.0km 所要時間 6:30
【ブーム・レイク】
7月31日、トレイルヘッド(TH)にはトイレがある広い駐車場があった。 ハイキングトレイルは林道のように幅が広く勾配も緩かったが、単調で展望が殆どなかったのが玉にキズだった。 熊の気配は感じられず、糞も落ちていなかった。 細長いブーム・レイクには水鳥の姿は見られなかったが、湖の対岸からコヨーテらしき動物の鳴き声が聞こえた。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 165km THへの時間 1:40
THの標高 1720m TEの標高 1900m
単純標高差 180m 累積標高差 220m
歩行距離 10.2km 所要時間 3:00
【カスケード・マウンテン】
8月1日、トレイルヘッド(TH)の手前に建つノーケイ・スキー場のロッジは建替えられ、以前よりも大きく立派になっていたが、THの標識は以前と同じように地味で目立たなかった。
展望のない針葉樹林帯の中を下り気味に歩く単調なトレイルは記憶に新しかったが、登山者が増えたことで熊の気配は全く感じられず、木々を登るアカリスの姿が頻繁に見られた。 ルート上で標高が一番低いクリークに架かる橋は新しく、ここからは登り一辺倒のトレイルとなる。 エルク・レイクとの分岐を過ぎると勾配が徐々に増したが、トレイルは相変わらず良く整備されていて歩き易い。 トレイルエンド(TE)のカスケード・アンフィシアターとの分岐には通行止めを示唆するような倒木が置かれていたが、TEへのトレイルよりもカスケード・マウンテンへの踏み跡の方が明瞭であるようにさえ思えた。
分岐から雑木の中の明瞭な踏み跡をしばらく辿るとようやく展望が開け、マウント・コーリーから北に連なるソーバック・レンジの山々が一望された。 森林限界を過ぎるとすぐに大小の岩が堆積する広い尾根となり、ケルンとオレンジ色のペンキマークを頼りに岩の上をバランス良く登っていく。 途中から尾根の右斜面を巻くように踏み跡を辿って小さな岩峰(第1ピーク)を巻くと、ようやくカスケード・マウンテンの山頂とその手前の大きな岩峰(第2ピーク)が顕著な尾根の先に望まれた。
第1ピークを過ぎると踏み跡は再び濃くなり、展望の良い尾根からは今回計画しているマウント・ボージョーやマウント・ランドルなどの山々が望まれた。 重厚な第2ピークは尾根を登らず、右からトラバース気味に大きく巻いてその支尾根を乗越す。 支尾根から第2ピークの基部のバンドをトラバースして主尾根に復帰すると、カスケード・マウンテンの山頂が眼前に大きく望まれた。
意外にも第2ピークを過ぎても踏跡は依然として明瞭でスクランブルする所は全く無く、24年前に悪天候で敗退したカスケード・マウンテンへの登頂は予想以上に容易だった。 高度感のある山頂からの展望は雄大で、前回の最終到達地点のカスケード・アンフィシアターも眼下に望まれた。
山頂からは展望を楽しみながら意気揚々と森林限界まで下ったが、目標を失った身にはクリークに架かる橋からTHへの長い登り返しが堪えた。 帰宅後にミカコさんから、次の日曜日の山のお誘いのメールがあった。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 135km THへの時間 1:30
THの標高 1660m 山頂の標高 2998m
単純標高差 1298m 累積標高差 1500m
歩行距離 19.0km 所要時間 10:30
【マウント・セント・ピラン】
8月2日、レイク・ルイーズの駐車場に車を停められるか心配だったが、意外にも早朝から交通整理の誘導員が多く見られ、何カ所かある広い駐車場の空いているスペースに誘導され無事停めることが出来た。 駐車料金は料金徴収機に車のナンバーを入力し、クレジットカードのみの支払いで21CADだった。
予想どおり世界的な観光地のレイク・ルイーズの湖畔には観光客が鈴なりでご来光の時を待っていたが、正面の一番奥に見えるマウント・ビクトリアの氷河は温暖化でだいぶ小さくなったように思えた。 湖畔からミラー・レイクへのハイキングトレイルには、その先のレイク・アグネスを経てビッグ・ビーハイブに向かうハイカーが多く見られた。 池のような小さなミラー・レイクからは眼前にビッグ・ビーハイブのユニークな岩峰が仰ぎ見られ、大雪で難儀した前回の記憶が蘇ってきた。
ミラー・レイクを過ぎるとトレイルからの展望が良くなり、リトル・ビーハイブの手前からマウント・セント・ピランへの踏み跡に入る。 意外にも分岐にはセント・ピランと記された新しい標識があり、山頂までのトレイルがオフィシャル・ルートであることが分かった。
分岐からの踏み跡は明瞭で、間もなく森林限界となった。 先ほどまでの喧噪が嘘のように人影がなくなり、それに代わってライチョウやナキウサギの姿が見られた。 レイク・ルーズや山々の展望も良くなり、緩やかなジグザグの登りを繰り返しながら山頂に伸びる顕著な尾根に乗る。 尾根からはスコーキー・バリーの山々などが遠望された。 岩が堆積する尾根も踏み跡は明瞭で、労せずしてマウント・セント・ピランの山頂に着いた。
広い山頂には背の高いケルンが二つ積まれ、傍らには風除けの大きな石囲いがあり、登山者に餌付けされたリスが走り回っていた。 山頂からの展望は素晴らしく、眼前にはマウント・ニブロックが鎮座し、眼下にはレイク・ルイーズが望まれた。
山頂からはレイク・アグネスを通る周回ルートをとり、往路と反対側の広い尾根をゴート・パスに向けて下る。 こちらはオフィシャル・ルートではないようで踏み跡は薄くなったが、代わって要所要所に積まれたケルンが導いてくれた。 ゴート・パスには大きなケルンがあり、左方向のカールに向けてザレた草付きの急斜面を下る。 カールに近づくと踏み跡が明瞭になり、カールの左岸を辿っていくと間もなく前方にレイク・アグネスが見えた。
レイク・アグネスの湖畔を周遊するトレイルを歩き、多くのハイカーで賑わう湖尻のティーハウスを横目で見ながらミラー・レイクへ下る。 ミラー・レイクからは往路と同じトレイルで喧噪のレイク・ルイーズに戻った。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 190km THへの時間 2:00
THの標高 1730m 山頂の標高 2650m
単純標高差 920m 累積標高差 950m
歩行距離 13.0km 所要時間 7:00
【フェアビュー・マウンテン】
8月3日、昨日と同じ6時にレイク・ルイーズの駐車場に着いたが、今日は昨日よりもさらに人出が多く、上段にある別の駐車場に誘導された。 駐車場の端からレイク・ルイーズの湖畔を通らずにサドルバックに向かうハイキングトレイルに入る。 フェアビュー・マウンテンは山頂まで登山道がある貴重な山だが、短時間で登れるためか前後に人影はない。 緩やかな樹林帯の登りは短く、すぐにトレイルからの展望が良くなった。 サドルバックの手前のモレーンにはマーモットの姿が見られた。 サドル・マウンテンとの鞍部のサドルバック(峠)には新しい標識があり、麓から見た山容とは違う穏やかなフェアビュー・マウンテンの山頂が望まれた。
サドルバックを過ぎるとすぐに森林限界となり、岩の多い斜面を登るようになったが、ジグザグに付けられたトレイルは依然として明瞭で、ナキウサギの鳴き声を聞きながら緩やかに登っていく。 長年踏まれたトレイルは最後まで登り易く、労せずしてフェアビュー・マウンテンの山頂に着いた。
大きな岩が積み重なった山頂は猫の額ほどの狭さで、歴史を感じる立派なケルンが積まれていた。 高度感のある山頂からの展望は素晴らしかったが、山火事の影響で遠くの山々が霞んで見えたのが玉にキズだった。 山頂からは往路を戻ったが、予想どおり次々と登山者が登ってくる人気の山だった。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 190km THへの時間 2:00
THの標高 1730m 山頂の標高 2744m
単純標高差 1014m 累積標高差 1030m
歩行距離 10.0km 所要時間 6:00
【サーク・ピーク】
8月4日、レイク・ルイーズの先で1号線から分岐してジャスパー方面に向かう93号線(アイスフィールズ・パークウェイ)に入ってトレイルヘッド(TH)へ向かう。 93号線は1車線なので制限速度は80キロだった。 THには広い駐車場とトイレがあった。
THから経由地のヘレン・レイクまでの6qのハイキングトレイルはとても良く整備された傾斜の緩い道で、前半は針葉樹林帯からクロウフット・マウンテンを、森林限界となる後半はドロミテ・ピークを眺めながら歩く。 早朝は雲が多かったが、ヘレン・レイクに着くと青空が急速に広がり正面にサーク・ピークが望まれた。
ヘレン・レイクの湖尻から湖畔沿いの明瞭なトレイルを進む。 湖を通り過ぎるとトレイルは左右に分岐していたが、左の急斜面の岩場を登るトレイルを選ぶ。 二つのトレイルは間もなく広い平坦地で合流し、眼前に大きくサーク・ピークの山頂が望まれた。 山頂に向かう踏み跡は引き続き明瞭で、平坦地の端のネームレス・レイク付近の岩場から顕著な尾根に取り付く。 岩場は見た目より容易でスクランブルする(手を使って登る)所はなく、岩場を越えるとその先には幅の広い砂礫の尾根に印された一筋の明瞭な踏み跡が見えた。
砂礫の尾根は傾斜が緩く登り易かったが、山頂に近づくにつれて急になり、足元の岩屑も大きくなって登りにくくなった。 山頂直下は再び岩場となったが踏み跡は途絶えず、労せずして二つある岩峰の高い方のピークに着いた。 猫の額ほどの狭いサーク・ピークの山頂からの展望は新鮮で、山頂の北側には小規模ながら氷河が見られた。
山頂手前の低い岩峰に登ってから往路を戻る。 天気が尻上がりに良くなったので、登りでは冴えなかった風景が楽しめた。 下山後は93号線沿いのボウ・レイクの展望所に立ち寄った。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 220km THへの時間 2:10
THの標高 1950m 山頂の標高 2993m
単純標高差 1043m 累積標高差 1130m
歩行距離 16.0km 所要時間 8:30
8月5日、カルガリーは晴れていたが、いずれの山域の山々も曇りや雨の予報だったため、近所のスーパー『T&T』で食料品の買い出しなどをして過ごした。
【ホースシュー・キャニオン & ホースシーフ・キャニオン】
8月6日、ミカコさんとナオミさんがアパートまで迎えにきてくれ、カルガリー郊外のバッドランド(川の浸食によって形造られたと言われる特異な地形)地方の景勝地のホースシュー・キャニオンとホースシーフ・キャニオンの2カ所でユニークなハイキングを楽しんだ。
両キャニオン共に観光客用の駐車場があるTHから広大な谷に下り、あとは自由に面白そうなルートや行きたいポイントを繋いで歩いた。 地層が剥き出しとなった縞模様の山々は全て岩ではなく乾燥した土で、キノコのような自然のオブジェやサボテンが随所に見られた。
ハイキングの後はフードゥーという奇妙な尖塔型の岩柱が林立する観光地に立寄ってからアパートに戻り、ミカコさんとナオミさんからロッキーの山々の登山事情やローカルな情報を色々と教えていただき、私達にとってはとても有意義な1日となった。 カナダではコロナ禍でアウトドア志向が急速に高まり、登山やハイキングをする人が爆発的に増加したとのことだった。
8月7日、カルガリーは晴れていたが、いずれの山域の山々も曇りや雨の予報だったため、近所のスーパー『CO・OP』で食料品の買い出しなどをして過ごした。
8月8日、ロッキーの山々のみならずカルガリーでも雨が降り、これから登る予定の山の情報の再確認と新たに計画した南部のウォータートン・レイクス国立公園の山々の情報収集などをして過ごす。 山の天気の傾向は大きく変わることはないが、山によっては直前に曇りが晴れに変わったりすることがあるので、最低でも朝昼晩の一日三回は各山域の天気予報をチェックする必要があると思えた。 外の天気や気温に関係なく地下室は快適で、一日中部屋の中にいてもストレスを感じることはなかった。
8月9日、山の天気は今日も回復せず、明日まで悪い予報になってしまったので、最新の山のガイドブックやハイキングの地図と土産物を買いにキャンモアに行った。 カルガリーのアパートからキャンモアまでは100qほどあるが1時間ほどで行けた。 無料駐車場に車を停めて歩行者天国となっていたダウンタウンを散策する。 小雨が降っていたので、スリー・シスターズなどの山々は残念ながら雲の中だ。
書店・雑貨店・土産物店などで買い物をしてから、町外れにあるヤムナスカ社のオフィスを訪ね、短時間だったがスタッフの篠塚さんや石塚さんと歓談することが出来た。 篠塚さんの話では、カナダでも温暖化の影響で氷河が年々薄くなり、また特に今年は5月と6月が異常に暑かったので、山の花は例年よりも1か月も早く盛りを終えてしまったとのことだった。
8月10日、昨日入手した最新の山のガイドブックをスマホの翻訳機で読み、ハイキングの地図で山の位置を確かめながら、今年のみならず来年以降の山の計画を立てる。 意外にも登山対象となっている山の数は予想以上に多く、easy / moderate / difficultの三段階で難易度が記されていた。 私達のレベルでも登れそうな山も多く、ロッキーでの登山を始めたばかりなのに、早くも来シーズンへの期待が高まった。
【マウント・クランデル】
8月11日、カルガリー以北のロッキーの山々はまだ天気が不順なため、南部のU.S.Aとの国境に位置するウォータートン・レイクス国立公園にあるマウント・クランデルを登った。 アパートから2号線を180キロほど走り、フォート・マクロードで3号線に、ピンチャー・クリークで6号線に乗り換え、最後は公園の入口から5号線を走って3時間ほどでウォータートン・レイクに着いた。 レイク手前の展望所からカナダ側のウォータートンの山々が一望出来たが、個性的で荒々しいロッキー北部の山々とは違う穏やかな山容が印象的だった。
湖畔から少し上がった取付きには案内板や駐車場はなく、車両進入禁止の標識がある林道の入口があるだけだった。 山火事跡の緩やかな林道はすぐに草を被り、間もなく涸れた沢と出合って途絶えた。 薄い踏跡を頼りに乾いた岩を縫ってしばらく沢を登ると右に分岐する枝沢に導かれた。 枝沢を僅かに登ると踏み跡が少し明瞭になり、岩場が所々に混じる荒れた斜面を登る。 眼下のウォータートン・レイクの眺めが徐々に良くなり、U.S.A側のグレーシャー国立公園の山々が見えるようになると、クランデルの山頂を眼前に望む沢の源頭に詰め上がった。
沢の源頭にケルンを積み、広い火事跡の明るい樹林帯を登る。 快適な登りは長続きせず、踏み跡は徐々に薄くなり、山頂に続く尾根に乗るため草付きの急斜面をトラバース気味に延々と登る。 ようやく顕著な尾根と出合うとケルンが二つ見られ、マウント・ダンガーバンなどウォータートン北部の山々が望まれた。
尾根の出合からはそれまでと全く違う稜線漫歩となり、山火事跡の木々との際を所々で明瞭になる踏み跡を拾って登る。 マウント・クランデルの山頂には大きなケルンが積まれ、傍らには新しい気象観測機器が設置されていた。 意外にも山頂は西側がスッパリと切れ落ち、ウォータートン・レイクス国立公園の最高峰のマウント・ブラキストン(2910m)などの山々の展望が素晴らしかった。 ケルンの中にはレジストリーBOXが二つ納められていたが、小さなメモ帳に先人が記した足跡の数は多く、トレイルの踏み跡の薄さと一致していないように思えた。
ウォータートン・レイクの眺めが良い山頂の袖まで足を伸ばしてから往路を戻る。 平日だったことで山は貸し切りで、最後の沢ではビッグホーン・シープとはち合わせをした。
下山後は湖畔のタウンサイトに立ち寄ったが、予想以上に洗練されたリゾート地で、山の上からは想像も出来ないほど多くの観光客で賑わっていた。
山域 ウォータートン・レイクス国立公園
THへの距離 285km THへの時間 3:00
THの標高 1320m 山頂の標高 2378m
単純標高差 1058m 累積標高差 1070m
歩行距離 8.0km 所要時間 7:30
8月12日、明日からようやく好天が続く予報となり、昼食用のサンドウィッチや夕食用の御飯を作り置きする。 明日からの朝食は時間の節約のためインスタントラーメンと肉饅、夕食の主菜はレトルトカレーとした。 スタンドでの給油にも慣れ、ハイブリッド車のカローラの平均燃費が25q/Lだったことが分かり、円安と物価高のカナダでこれが唯一の嬉しい誤算だった。
【マウント・ボージョー】
8月13日、明日以降もしばらく続く登山のスケジュールを考慮し、未明にトレイルヘッド(TH)を出発。 熊以外の大型動物との遭遇も暗い時間帯では危険なので、熊鈴の他にステレオを鳴らしながら歩く。 THから最初の見所となるボージョー・レイクまでは7.5キロの長い道のりだが、幅が広く登り易いハイキングトレイルだったので助かった。 ボージョー・レイクの手前からはマウント・ボージョーの側壁が圧倒的な高さで望まれるようになった。 ボーウジョー・レイクは切り立った岩峰に囲まれた奥ゆかしい小さな湖だった。
ボージョー・レイクを過ぎると間もなく森林限界となったが、トレイルは相変わらず良く整備されていて歩き易い。 明るく開放的な広い谷からハービー・パス(峠)までの間にはネームレスを含めて三つの小さなレイクがあった。 意外にもトレイルエンド(TE)となるハービー・パスには標識の類いは一切なく、マウント・ボージョーへの明瞭な踏み跡が続いていた。
TEのハービー・パスを過ぎるとようやくマウント・ボージョーの山頂が見え始め、傾斜が緩い広い尾根を延々と辿っていく。 足元に大小の岩が堆積するようになると勾配がやや増したが、明瞭な踏み跡が山頂まで続いていたので終始登り易かった。
マウント・ボージョーの広い山頂の一番高い所には小さなケルンが積まれ、傍らには新しい気象観測機器が設置されていた。 独立峰らしく山頂からの展望は雄大で、360度の全方向に亘って数えきれないほど無数の山々が望まれた。
山頂からの下山は清々しいレイク毎に足を止めながらゆっくり往路を戻る。 THまでの距離は長いが、傾斜が緩く足に優しい区間が殆どなのが嬉しい。 山火事の影響がない快晴の天気が一日中続いたことも、帰路の足取りを軽くしてくれた。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 140km THへの時間 1:30
THの標高 1435m 山頂の標高 2931m
単純標高差 1496m 累積標高差 1620m
歩行距離 23.0km 所要時間 10:30
【エメラルド・ピーク】
8月14日、24年前に訪れたエメラルド・レイクの湖尻の駐車場に車を停める。 レイクの湖畔からマウント・バージェスやミッシェル・ピークなどの山々が望まれ懐かしかった。 駐車場の端のハミルトン・レイクへのトレイルヘッド(TH)から歩き始める。 レイクまでのトレイルは良く整備されていて歩き易かったが、残念ながらトレイルから眼下のエメラルド・レイクは殆ど見えなかった。 ハミルトン・レイクの湖尻からは眼前にエメラルド・ピークやマウント・カーナーボンが大きく望まれ、いつまでも佇んでいたい雰囲気のある美しい湖だった。
TEのハミルトン・レイクの湖尻から獣道のような踏み跡を辿って急斜面を登る。 すぐに踏み跡は途絶えてしまったが、間もなく湖畔からの明瞭な踏み跡に合流すると、その先にケルンが積まれたエメラルド・ピークへの取付きがあった。 取付きからケルンを目印にモレーンを斜上すると砂礫の急斜面となったが、踏み跡は予想以上に明瞭で、ケルンが積まれた広い尾根の末端に導かれた。 岩屑の尾根にも薄い踏み跡やケルンが見られたが、傾斜が緩いのでどこからでも登れた。 間もなく右の眼下にはエメラルド・レイクが、続いて左の眼下にはハミルトン・レイクが見えるようになった。
山頂手前の切り立った岩壁の基部を左から巻くと尾根は痩せ、所々でスクランブル(手を使って登る)となった。 大きな岩が複雑に積み重なる岩稜にはユニークな岩の迷路があり、函状の通路に降りてから人がやっと通れるくらいの岩のトンネルを抜ける。 トンネルの出口から僅かな距離で猫の額ほどの狭いエメラルド・ピークの山頂に着いた。
山頂には大きなケルンが積まれ、その懐にピンク色のレジストリーBOXが置かれていた。 箱の中には先人が足跡を記した小さなノートが入っていたので記念のコメントを記した。 高度感のある山頂からの展望は素晴らしく、エメラルド・レイクを囲むヨーホーの山々が一望された。
帰路は山頂から岩場を少し下り、エメラルド・レイクに向かって一直線に岩屑のザレた沢を下る。 勾配はやや急だったが踏み跡は濃く、樹木が一切なかったので終始レイクと周囲の山々が望まれ退屈しなかった。 エメラルド・レイクの湖畔は夏休みの観光客で溢れ、貸し切りだった静かな山とは全く趣を異にしていた。
山域 ヨーホー国立公園
THへの距離 220km THへの時間 2:20
THの標高 1300m 山頂の標高 2555m
単純標高差 1255m 累積標高差 1280m
歩行距離 10.3km 所要時間 8:00
【バウンダリー・ピーク】
8月15日、93号線の最高地点のサンワプタ峠(2035m)を初めて越え、ロッキーの観光地で有名なコロンビア・アイスフィールド(氷河)の観光客用の駐車場に車を停める。 駐車場からは名峰マウント・アサバスカ(3491m)の左奥に目標のバウンダリー・ピークが望まれた。 駐車場はすでに森林限界を超え、ウラシマツツジの紅葉が始まった草付きの斜面を登り始める。 氷河観光のスノー・コーチ(雪上車)の発着場への専用道路をしばらく歩くと、発着場の手前に踏み跡が見られたのでそこから山に取付く。 踏み跡は予想以上に明瞭で、勾配も緩くて登り易かった。 眼前の前衛峰を目指してジグザグに登っていくと麓からは想像出来ない広い草原のスロープが現れた。 前衛峰には登らず、左から巻くように草原のスロープを緩やかに登っていくとモレーンの末端に出合い、荒涼としたバウンダリー・ピークの全容が望まれた。 前衛峰とのコルを目指してモレーンを登る。 踏み跡は薄くなったが要所要所にケルンが積まれていた。 足元に氷河の伏流の音が聞こえ、眼前のアサバスカが近づいてくると前衛峰とのコルに着いた。
前衛峰とのコルからは広い斜面の中央に刻まれた明瞭な踏み跡を登る。 最初は快適に登れた岩屑の道は途中から砂が混じる悪路になってしまったので、右脇の岩屑の中に見え隠れする薄い踏み跡を拾ってジグザグに登る。 帰路の安全を担保するため、所々にケルンを積んでいく。 山頂の手前で元の踏み跡に合流すると間もなく頂上稜線の端に乗り、僅かな稜線漫歩でバウンダリー・ピークの山頂に着いた。 ジャスパー国立公園とバンフ国立公園との境界線上にある山頂からの展望は素晴らしく、この山がアサバスカを望む唯一無二の展望台だと教えてくれた。
山頂からは往路と同じ道を下る。 予想よりも前衛峰とのコルへの急なガレ場の下りは楽だった。 山は貸し切りだったが、下界ではアサバスカ氷河へスノー・コーチ(雪上車)で次々と運ばれていく観光客の姿が多く見られた。
山域 ジャスパー国立公園
THへの距離 310km THへの時間 3:20
THの標高 1970m 山頂の標高 2870m
単純標高差 900m 累積標高差 920m
歩行距離 7.6km 所要時間 6:00
【ギャップ・ピーク】
8月16日、トイレのある広いグロットー・キャニオン・トレイルの駐車場に車を停める。 駐車場から500mほど歩いた所にギャップ・ピークの取付きがあり、赤色でGPと記された小さな道標が置かれていた。 意外にも取付きからの踏み跡は明瞭で、森の中を少し歩くと荒れた急坂があったが、そこを過ぎると森林限界まで緩やかで快適な登りとなった。
森林限界からはザレた尾根をしばらく登り、突き当たった岩峰の基部を右から巻く。 ロッキーの山にしては珍しく岩に赤いペンキマークがあった。 岩峰の基部を通過すると短いが登りづらい急坂があり、その先で更に大きな岩峰に突き当たった。 ペンキマークに従ってオーバーハングした岩峰の基部を左から水平に長く巻いて通過すると、岩屑が堆積する広い沢状の斜面の登りとなった。
岩屑の沢状の斜面の中央には一筋の明瞭な踏み跡があったが、傾斜が急なため途中から登るのが困難となり、踏み跡の少し左脇の岩場を登る。 浮き石が多い岩場も決して楽ではなく、帰路もここを下ると思うと気が滅入る。 下から見えた小さな岩塔群まで登ると再び踏み跡が現れ、最後の大きな岩塔を右から巻くと、山頂に通じる顕著な尾根に乗った。
高度感のある長大な尾根は痩せているが踏み跡があり、予想以上に快適で気持ち良く歩けた。 部分的にナイフリッジとなっている所も足元の岩が硬く安定していたので危険は全く感じなかった。 山頂手前のニセピークを右から巻くと、見た目よりも短時間でギャップ・ピークの山頂に着いた。
山頂には大きなケルンが積まれ、その懐に見慣れたピンク色のレジストリーBOXが置かれていた。 箱の中には先人が足跡を記したメモ帳が入っていたので、登頂記念のコメントを記した。 雲一つ無い快晴の天気に恵まれたが、山火事の影響で空が霞んでしまい、展望が冴えなかったのが玉にキズだった。
核心と思えた帰路の岩場の下りは思ったよりも困難ではなく、意外と短時間で下れたので助かった。 予想どおり平日にこのマイナーな山を登る人はおらず、山は一日中貸し切りだった。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 90km THへの時間 1:00
THの標高 1300m 山頂の標高 2450m
単純標高差 1150m 累積標高差 1230m
歩行距離 8.6km 所要時間 8:00
【グリズリー・ピーク】
8月17日、40号線(カナナスキス・トレイル・ロード)沿いの登山口には駐車場がなく、広い路肩に車を停める。 登山口には標識の類いは何も無かったが、沢の右岸の斜面に明瞭な踏み跡があった。 登り始めから樹林帯の中を歩くことはなく、荒々しいグリズリー・ピークの巨大な岩壁を正面に仰ぎ見ながら眼下の沢に平行して進む。 スクランブルのない岩場を過ぎると間もなく、岩壁を右から大きく巻くように長いトラバースが続いた。
長いトラバースを終えて尾根を乗越すと勾配が急になり、ガレ場やザレ場の登りも出てきたが、明瞭な踏み跡は途絶えることなく続き、労せずして山頂直下の草原の台地に着いた。 峠のような広い台地は、初夏や秋のシーズンにはお花畑や紅葉が楽しめそうに思えた。 草原の台地から指呼の間の山頂へは麓から想像出来ない傾斜の緩い広い尾根が続いていた。 痩せた頂上稜線の一番高い所がグリズリー・ピークの山頂のようで、小さなケルンが積まれていた。 昨日ほどではないものの、山火事の影響で空は霞んでいたが、高度感のある山頂からの展望は素晴らしかった。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 120km THへの時間 1:20
THの標高 1660m 山頂の標高 2500m
単純標高差 840m 累積標高差 870m
歩行距離 6.0km 所要時間 5:30
8月18日、カルガリーは晴れていたが、いずれの山域の山々も曇りや雨の予報だったため、残り6日となった山の計画の再確認と準備をする。 カルガリーでも山火事の影響が見られ、空の色が濁って太陽が霞んで見えた。 昼過ぎから雨となり、午後3時の気温は10℃まで下がった。 高い山は雪が降っていると思われ、登山に影響が出ないことを祈った。
【バーストール・パス】
8月19日、秋の空気に入れ替わったのか、気温は町も山も前日よりも10℃近く下がり、未明のカルガリーの気温は4℃、トレイルヘッド(TH)のマッド・レイクの早朝の気温は0℃だった。 マッド・レイクはその名のとおり、他の氷河湖とは違った地味な色合いだった。
マウンテンバイクの通行も許可されている林道のトレイルをバーストール・レイクに向かって黙々と歩く。 マウント・バーストールへの取付きの様子に気を取られ、そのすぐ先にあったバーストール・レイクへの小径をうかつにも見逃してしまった。 林道の終点は小沢が流れる湿原になっていて、以前はここもバーストール・レイクの一部だったことが容易に想像出来た。 低木が茂る湿原には目印のポールが要所要所に立っていたので、それを繋いで進んだ。 図らずも湿原からは周囲の山々の展望が意外と良かった。
湿原を通過すると展望のない樹林帯のハイキングトレイルをしばらく登る。 間もなく小広いメドウ(草原)に飛び出すと再び周囲の山々の展望が良くなった。 メドウは花や紅葉のシーズンにはさらに景観が素晴らしいと思われたが、比較的新しいクマの糞が見られたので緊張する。 メドウからはトレイルの木々が疎らになり、バーストール・パスまで緩やかで気持ちの良い登りとなった。
バーストール・パス(峠)にはピーター・ローヒード州立公園とバンフ国立公園の境界線の標識があった。 パスからは残念ながら山火事の影響で遠くの山々の展望が冴えず、少し離れた高い氷河の山よりも眼前に見えるスノー・ピーク(2750m)の方が立派に見えた。 峠の少し先の展望地で寛いでいると、後続のパーティーが颯爽とスノー・ピークに向かって登っていったが、準備不足のため彼らの姿を羨望の眼差しで見送るしか術がなく、秋の紅葉シーズンでのリベンジを誓った。
山域 カナナスキス・カントリー
THへの距離 150km THへの時間 2:00
THの標高 1900m TEの標高 2380m
単純標高差 480m 累積標高差 500m
歩行距離 15.0km 所要時間 7:30
【マウント・ランドル】
8月20日、バンフからダイレクトに登れるマウント・ランドルは古くから親しまれている山で、山頂へアプローチするトレイルも近年整備されたようだ。 町外れのボウ・フォールズ駐車場に車を停め、トレイルヘッド(TH)まで10分ほど車道を歩く。 THには立派な案内板と標識があり、林道をしばらく歩いた先の分岐からハイキングトレイルに入る。
トレイルは予想以上に良く整備されていて、勾配は緩やかだが面白いように標高が稼げる。 大きなスイッチバックを何度も繰り返すようになると、ショートカットする道(旧道)が随所に見られた。 スイッチバックを終えると山腹を長くトラバースしながら涸れた沢を3回横切る。 最後の広い沢を通過するとトレイルは急勾配となり、森林限界までジグザグを切りながら急坂を登る。 森林限界からようやく山頂方面が望めるようになったが、バンフの町や隣のサルファー・マウンテンは山火事の影響で霞んで見えた。 日曜日の喧噪を危惧していたが、意外にも先行者の姿は見えなかった。
実質的なTEとなる森林限界には標識の類はなく、踏み跡の濃さはそれまでと全く変らなかった。 草木がなくなり岩場の登りに入ると間もなくドラゴンズ・バックと呼ばれる痩せ尾根となったが、足元の岩が硬く安定していたので、岩が濡れていなければかえって登り易かった。 ドラゴンズ・バックを過ぎると大小の岩屑が堆積したガラ場となる。 ケルンが積まれた踏み跡はあるが、所々で岩が崩れて踏み跡が消えていたので、次のケルンを見据えながら登り易い所を選んで登る。 スクランブルする所は皆無で、予想よりも短い時間で山頂手前のニセピークに着いた。 それまで見上げていたランドル北峰がいつの間にか眼下となり、指呼の間の山頂までは僅かな稜線漫歩だった。
マウント・ランドルの山頂は麓から見た山容どおり足元がスッパリ切れ落ちて高度感が凄かったが、意外にも人気のある山にしては珍しくケルンなどの類いは一切無かった。 今までで一番酷い山火事の影響で山頂からの展望は全く冴えず、バンフを挟んで対峙するカスケード・マウンテンさえ霞んで見えなかったことが一番印象に残った。 後続の登山者は殆どが軽装で、ザックや靴は登山用ではなく、バンフを観光している旅行者が登っている感じが見て取れた。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 130km THへの時間 1:20
THの標高 1372m 山頂の標高 2949m
単純標高差 1577m 累積標高差 1650m
歩行距離 15.0km 所要時間 9:30
【ジミー・シンプソン・ジュニア】
8月21日、観光地のボウ・レイクの湖畔の駐車場から出発する。 駐車場からは先日登ったサーク・ピークが望まれた。 早朝のボウ・レイクには風がなく、周囲の山々を映す湖面が清々しい。 ボウ・グレーシャー・フォールズのトレイルヘッド(TH)から湖畔をしばらく歩き、オレンジ色のリボンがある取付きから山に入る。 登山道のような踏み跡は明瞭だったが、途中からリボンがある道とリボンがない道に分かれた。 とりあえずリボンがある道を登ったが、結果的にどちらを登っても森林限界の手前で合流していた。 森林限界からはジミー・シンプソン・ジュニアの山頂が頭上に見えた。
森林限界からは山頂方向ではなく、踏み跡に従って左手の岩壁に向かってトラバース気味に進む。 岩壁直下の急なルンゼの登りは見た目よりも容易で、登り終えるとそこはケルンが積まれた広場になっていた。 広場はまるで展望台のように周囲の山々や眼下のボウ・レイクの展望が良かった。
稜線出合の広場からは山頂に向けて傾斜の緩い広い尾根を登る。 踏み跡は薄いがどこでも歩けるので直登する。 足元の草付きが岩屑に変わると踏み跡は再び明瞭になり、左手の尾根の背に乗ると“お父さん”のマウント・ジミー・シンプソンとその長い側壁が眼前に望まれた。 尾根は次第に痩せていくがとても登り易く、山頂まで明瞭な踏み跡が続いていた。
ジミー・シンプソン・ジュニアの山頂には大きく立派なケルンが積まれ、その懐には黒色のレジストリーカプセルが置かれていた。 箱の中には先人が足跡を記したメモ帳が入っていたので、登頂記念のコメントを記した。 高度感のある山頂からの展望は新鮮で、眼前にはマウント・ジミー・シンプソンが圧倒的な迫力で鎮座していたが、山火事の影響で遠くの山々や眼下のボウ・レイクの展望が冴えなかったのが玉にキズだった。
山は一日中貸し切りだったが、下山後のボウ・レイクの湖畔には多くのハイカーの姿が見られた。
山域 バンフ国立公園
THへの距離 220km THへの時間 2:20
THの標高 1948m 山頂の標高 2775m
単純標高差 827m 累積標高差 850m
歩行距離 6.8km 所要時間 6:00
山の帰りに土産物などを買いにバンフに立ち寄り、無料駐車場に車を停めて歩行者天国となっていたダウンタウンを散策する。 町並みは以前よりも明らかに垢抜けていて、登山やハイキングのベースというよりも観光地という色合いが濃く、建築中のホテルや店舗などが多く見られた。
8月22日、山も町も雨模様のため近所のディスカウントショップなどを見て回り、いつもと違うスーパーで食材の買い出しをした。
夜は今回の旅で大変お世話になったミカコさんを夕食にお誘いし、ミカコさんがお勧めのイタリアンのレストランで再会した。 ミカコさんには今回登った山の全てについて直前に細かなアドバイスをいただき、失敗や怪我も無く登れたことについて感謝の気持ちを伝え、山の話やカルガリーでの暮らしについて話は尽きなかった。 ミカコさんとはカナダのみならず日本での再会を誓ったことは言うまでもない。
8月23日、カルガリーは晴れていたが、いずれの山域の山々も曇りや風が強い予報だったため、カルガリーのダウンタウンでミカコさんに教えていただいた登山用品店や雑貨店などを見て回った。
【マウント・リネハム】
8月24日、午前中はまだ風が強いという予報だったので、出発時間を少し遅らせてトレイルヘッド(TH)に向かう。 前回は閉まっていたウォータートン・レイクス国立公園の料金徴収ゲートは7時から開くようで、窓口で1日利用券を21CADで購入する。 バンフ国立公園のように1人いくらではなく、車両1台でいくらという料金形態だった。 ゲートを過ぎてウォータートン・レイクの湖畔で山々の写真を撮りながらTHに向かっていると、不意に湖畔の遊歩道を悠然と歩くブラックベアに遭遇した。 ブラックベアは車に気付いたが逃げる気配は全くなく、車の進行方向と同じ方向に遊歩道を歩き続けたので、車内から数分間写真やビデオを撮ることが出来た。
THには広い駐車場があり、周辺のハイキングトレイルの案内板が置かれていた。 再びクマと出遭うことを恐れ、久々にステレオを鳴らしながら入山する。 山火事跡の明るいハイキングトレイルはとても良く整備され、この山域特有の赤いアージライト(粘土岩質)の地面と少し紅葉した草とが織りなす景色がとても綺麗だ。 帰路の周回ルートの下降点を過ぎると間もなくロウアー・ロウ・レイクとの分岐と標識があった。
分岐から少し歩くと明るく開けたメドウに出た。 メドウからは逆方向にマウント・リネハムの山頂が望まれた。 メドウの真ん中を通るトレイル上には少し古いがクマの糞が見られた。 メドウの先でアッパー・ロウ・レイクとの分岐があり、そこから先は森林限界となって展望が良くなった。 ようやくクマの恐怖から解放され、アージライトの赤い砂礫の斜面をリネハム・リッジに向けてトラバース気味に登る。 リネハム・リッジでトレイルは左右に分岐していたが、どちらも同じくらい明瞭な踏み跡が見られた。 分岐を右に行くとすぐに展望が開け、大小4つのリネハム・レイクスと山域の最高峰のマウント・ブラキストン(2910m)が眼前に望まれた。
リネハム・リッジのビューポイントからは緩やかな勾配の岩尾根を辿っていくが、スクランブルは皆無でとても登り易かった。 踏み跡は途絶えることなく続き、山頂手前の周回ルートの分岐にはケルンが積まれていた。
マウント・リネハムの山頂には大きなケルンが積まれ、中にレジストリーBOXが二つ置かれていた。 箱の中には小さなノートが入っていたので記念のコメントを記した。 山火事の影響はまだ続いているが山頂からの展望は素晴らしく、先日登ったマウント・クランデルやその名のとおり赤い色をしたルビー・リッジなどの山々が望まれた。
山頂手前からロウアー・ロウ・レイクの方向に下る周回ルートは急勾配だったが、踏み跡が細かくジグザグが切られていたので予想よりも楽に下れた。 ハイキングトレイルが近づくと藪に入って踏み跡は薄くなったが、往路で確認した下降点にピッタリ降り立った。
山域 ウォータートン・レイクス国立公園
THへの距離 295km THへの時間 3:10
THの標高 1610m 山頂の標高 2728m
単純標高差 1118m 累積標高差 1150m
歩行距離 14.3km 所要時間 7:30
8月25日、帰国のため早朝から荷物のパッキングに追われる。 土産物などで膨れ上がったダッフルバックは優に23sの制限重量を超えてしまった。 家主のウォールさんに感謝の気持ちを伝え、次回カルガリーに滞在する時はまた利用させてもらいたい旨も伝えた。
空港でのレンタカーの返却手続きは、貸し出し時と違い僅か数分で終ったが、出国審査の手荷物検査は予想以上に厳格だった。 帰国便も混雑のため30分ほど出発が遅れ、成田までのフライト時間は往路よりも1時間半長い10時間半だった。
今回のカナディアンロッキーの山旅では、24年前に初めて行った海外の山での感動が、その後世界の山々を訪ね歩いてどのように変ったかを検証することが一番の目的だった。 幸か不幸か、結果的には今回の山旅では前回のような強い感動は得られなかった。 これは前回が生まれて初めての海外旅行だったことに加え、ちょうど花の盛りだったこと、氷河が今よりも大きかったこと、新雪で山が綺麗だったこと、そして何よりもカナダ以外の国の山を見たことがなかったことが理由として挙げられる。 その反面、昨今のカナディアンロッキーでは、氷河のある高い山でなくても、山頂からの展望やルート上の景観が素晴らしい山を楽しんで登れることが分ったことが大きな収穫だった。 次回は是非、みずみずしい花々が咲き競う初夏やラーチの紅葉が綺麗な秋のシーズン、そして残雪期にもロッキーの山々を再訪したいと願った。