ピスコ(5752m)

  7月9日、夜中の1時半前に起床。 B.Cとの標高差は200mほどしかないが、夜中は軽い頭痛が続いて全く眠れなかった。 また、鼻づまりも酷く、狭いテントで妻や島田さんにも迷惑を掛けてしまった。 一方、嬉しいことに空には満天の星で風もなく、予想以上に暖かい。 石のテーブルに用意されたスープとクッキーを食べ、2時半過ぎにH.Cを出発した。 軽い頭痛や動悸は、深呼吸を繰り返し体を動かすことで解消した。

  氷河の取り付きまで僅かに登山道を登り、氷河の取り付きからアイゼンを着けてアンザイレンして登る。 パーティー編成は、チーフガイドのマックスに島田さんと妻と私とエルセリオ(途中でロナウと交代)、ガイドのアグリに中山さんと鈴木さんと林ガイドとロナウ、そして殿(しんがり)が平岡さんとロベルトである。 エルセリオとロベルトは下山時にスキー滑降する鈴木さんと林ガイドのスキー板を担いで登る。 上方にはすでに先行パーティーのヘッドランプの灯りが揺れている。 氷河上はさすがに気温は低いが、風もなく登るにはちょうど良い。

  少し傾斜のある取り付き付近を過ぎると、その後は幅の広い雪稜を緩急を繰り返しながらひたすら登る。 さすがに人気のある山なので、多くの登山者によって踏み固められた明瞭なトレースがあり、順応不足の体にはとても助かる。 三日月が頭上でこうこうと輝き、ワンドイのシルエットが暗闇から浮かび上がってくる。 ペースは非常にゆっくりで、途中で何組かの若者を中心としたパーティーに道を譲る。 山の西側斜面を登るため山頂直下まで陽が当らなかったが、6時過ぎには周囲が明るくなり、昨日までに見えていた山々に加え、初めて拝む憧れのアルテソンラフ(6025m)、カラツ東峰(6020m)、カラツ西峰(6025m)、アルパマヨ(5947m)、キタラフ(6036m)などの山々のピークが淡く染まり始める。

  後続のアグリ達のパーティーとの差が開いてきたので、途中の休憩時にスキーを背負ったエルセリオに代わってロナウが私達のパーティーに入ったが、ロナウは何とGパンをはいていた。 島田さんのペースが非常にゆっくりでヤキモキする反面、歩きながら写真が沢山撮れて良かった。 ソフトクリームを重ねたような山頂方面に通じる雪稜の景観がユニークだ。 大きなクレバスのある山頂直下で、それまで雪稜に隠されていたチャクララフ(6112m)が見え始め、眼下にはブルーの水を湛えた神秘的なラグーナ69(湖)も見えた。


H.Cから氷河の取り付きまで僅かに登山道を登る


人気の山なので多くの登山者によって踏み固められた明瞭なトレースがある


ワンドイのシルエットが暗闇から浮かび上がってくる


黎明のカラツ東峰(中央右)とカラツ西峰(中央左)


アルテソンラフとアルパマヨ(左端)


朝焼けに染まり始めるワンドイ東峰(右)とワンドイ北峰(左)


休憩地点とそこから登り始めるアグリと平岡さん達のパーティー


山の西側斜面を登るため山頂直下まで陽が当らない


アマゾン側の雲海とコントライェルバス


ワンドイ東峰(右)・ ワンドイ北峰(中)・ ワンドイ西峰(左)


山頂手前の緩斜面


  山頂直下の急斜面を初めてスタカットで登り、8時半前に快晴無風の山頂に辿り着いた。 眼前にはピスコ東峰(5700m)と双耳峰のチャクララフが大きく迫り、プカフィルカ西峰(6039m)やコントライェルバス(6036m)なども遠望され、期待どおりのブランカ山群随一の大展望に興奮が覚めやらない。 私達のみならずロナウも初登頂となり、マックスから祝福されていた。 すでに他のパーティーは全て下山してしまったので、図らずも山頂は私達のパーティーだけで貸し切りとなった。 マックスと周囲の山々の山座同定を行い、写真を撮ったりビデオを回したりしながらアグリ達のパーティーを待つ。 初めて高所登山を経験する鈴木さんは相当疲れた様子だったが、中山さんや林ガイドと一緒に30分ほど後に山頂に着いた。 天気と展望が良かったのみならず、メンバー全員がこの素晴らしい頂に登頂出来て本当に良かった。


山頂直下の急斜面をスタカットで登る


ピスコの山頂


山頂から見たカラツ東峰(中央右)・ カラツ西峰(中央左)・ キタラフ(右)


山頂から見たワスカラン北峰(右)・ ワスカラン南峰(中)・ チョピカルキ(左)


山頂から見たアルテソンラフ(右)・ アルパマヨ(中)・ キタラフ(左)


山頂から見たピスコ東峰(右手前)・ アルテソンラフ(左)・ プカフィルカ西峰(中央奥)


山頂から見たチャクララフ


山頂から見たラグーナ69(湖)


ピスコの山頂での島田さん


ピスコの山頂での中山さん


ピスコの山頂での鈴木さん


全員が登頂したピスコの山頂


  結局、記念写真を撮り合ったりしながら1時間ほど山頂に滞在して下山する。 下りは私が先頭になる。 鈴木さんと林ガイドは山頂直下から氷河の取り付きまでスキーで滑ったが、雪質もちょうど良くて気持ち良さそうだった。 むろん私もスキーで滑りたかったが、本命のアルパマヨのために自重した(高所でのスキーは酸素を消費する)。 山頂から氷河の取り付きまで2時間足らずで下り、H.Cで装備を解いて荷物を整理してB.Cまで下る。 午前中の良い天気が嘘のように、午後に入ると天気が崩れ始め、いつの間にか上空は鉛色の空となった。 最後に浮石の多いザレた急斜面をモレーンの背まで100mほど登り返すことには閉口したが、雨に降られることなく3時前に快適なB.Cに着いた。 夕食もさることながら、おやつに出た炒りたてのポップコーンがとても美味しく、久々にお腹のことを気にせずに食べた。


スキーで滑降する林ガイドと鈴木さん


雪稜の中間部から山頂方面を振り返る


雪稜の下部から山頂方面を振り返る


氷河の取り付き


登山道を下ってH.Cに戻る


午後に入ると天気が崩れ始め、いつの間にか上空は鉛色の空となった


炒りたてのポップコーン


写  真    ・    南アメリカ    ・    想い出の山    ・    T O P